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ラジオ大好きなネットニュース編集者が、自分で毎週生出演して気づいたこと

   ネットメディアで働く人々には、朝が弱いイメージがある。編集者である筆者も、ちょっと前まで、可能な限り夜ふかしして、朝は9時ごろまでゴロゴロ。規則正しさとは無縁の生活を送っていた。

   そんな私が、近頃早起きしている。毎週水曜日は6時までに起床し、編集部から徒歩10分ほどのTOKYO FMへ向かう。入館証を受け取り、7時にはスタジオの前。パーソナリティーやスタッフは、すでにバリバリと働いている――。

   実は縁あって、筆者はここ2か月ほど、ラジオ番組に毎週生出演している。よくラジオとネットは親和性が高いといわれるが、たしかにそんな印象を受ける。気づいたことを書いてみよう。

  • ラジオとネットの親和性は…
    ラジオとネットの親和性は…
  • ラジオとネットの親和性は…

「ネットならではの反応」を紹介

   平日朝のワイド番組「ONE MORNING(ワンモーニング)」。TOKYO FMをはじめ、全国38のFM局をネットして放送されている(6~9時、一部東京ローカル)。「それぞれの朝に、新しい価値観を。」をキャッチコピーに、声優の鈴村健一さん(番組での愛称は「鈴さん」)と、フリーアナウンサーのハードキャッスル エリザベスさん(同じく「ザベスさん」)が、全国のリスナーの「朝」をつなぐ番組だ。

   7時10分からの「リポビタンD トレンドネット」は、ネットニュースの内側にいる人物が、いま知っておきたいトレンドを伝えるコーナーだ。筆者は水曜日に出演しているが、他の曜日にもネットメディアの編集者らが並んでいる。コメンテーターが「ネットの話題」を紹介して、鈴さんとザベスさんをまじえて、あれやこれやとトークする。同じコーナーながら、曜日によって政治から社会問題、ジャンクフードまで、扱うジャンルは幅広い。

   J-CASTニュースは創刊以来、いわゆる「炎上ネタ」に強い。近頃は、テレビのワイドショーも好んで取り上げるようになったが、そのジャンルでは一日の長がある。ネットでウケる、あるいは批判されるネタには、どんな傾向があるのか。文脈を踏まえて、マスメディアとは切り口の違う「ネットならではの反応」を紹介できるよう心掛けている。

   コーナー開始直前のひととき、鈴さん、ザベスさん、そして放送作家と雑談する。毎回だいたい3~4個の記事を紹介するが、その時のパーソナリティーの反応を見ながら、どのネタを厚めにするか考える。先日は、「『羊羹は30年持つ』は本当か 老舗メーカーの見解を聞いた」の記事に、鈴さんが興味津々。ちょっと長めに説明してみた。

話して気づく、ネットとラジオの違い

   出演するたびに、新たな課題も見つかる。放送直後から翌週まで、幾度となく聞きなおす。「真面目な話題だからといって、声のトーンを落としすぎた」「相槌が多くてクドいな」といった反省は尽きないが、いつも悩むのが、「目で読みやすい文章」と「耳で聞きやすい文章」の違いだ。

   2019年5月22日の放送では、幻冬舎・見城徹社長の「実売数晒し」を紹介した。「実売数」は文字で見れば、なんとなく意味が通じるが、耳で「ジツバイスウ」と聞いても、いまいちピンとこない。この時は、とっさに「つまり、何部売れたのかという実際の数字」と補足した。

   「ネットの有名人」の扱いにも悩む。また、広く知られた人物でも、一般的なイメージとネットで見せる顔とが一致するとは限らない。先の「実売数晒し」は、百田尚樹氏の『日本国記』をめぐっての議論が起点となった。百田氏は、映画化された『永遠の0』や『海賊と呼ばれた男』といった著作で知られるが、ツイッターでは歯に衣着せぬ発言で有名だ。ただ、その立ち位置を改めて説明するには「尺」が足りない。放送では、書名と著者名に触れるのみにとどめた。

   コーナーでは、ここ1週間の話題を中心に紹介するのだが、放送までに記事から大きく状況が変わることも多々ある。出演前に各社の続報を確認して、なるべく最新の内容を伝えられるよう、手元のメモに追記している。

双方向コミュニケーションの「仕掛け」

   ONE MORNINGには、番組とリスナーの双方向コミュニケーションをはかる仕掛けが、随所に置かれている。6時台には、最新ニュースに対するリスナーの「ワンコメ」(=ワンコメント)を紹介。7時台の「ベスト3総研」では、ツイッターの投票機能を使って、リスナーの生活習慣を探る。放送後には「トレンドネット」で扱ったテーマに対して、鈴さんの感想「スズコメ」がつぶやかれる。

   7時ちょうどの「ターミナルチャレンジ」も、リスナー参加型のイベントだ。7時台オープニングテーマ「ザ・ターミナル」が流れるまでに、やっておきたいことを済ませる。ツイッターには、お弁当作りから出勤まで、日々「成功」と「失敗」の報告が相次ぐ。

   曜日によってもカラーがある。筆者の出る水曜日には、番組ディレクターによる「ちょんコメ」がつぶやかれ、リスナーからのリプライが並ぶ。また金曜日には、鈴さんが週替わりで様々な容器を開ける「すずパカ動画」が投稿され、こちらも人気になっている。

   番組のハッシュタグ「#ワンモ」をつけたツイートは、ここ最近、平日朝のトレンド欄の常連となっている。番組名がトレンド入りする現象は、ONE MORNING以前に、同じ時間帯で約10年間放送されていた「クロノス」時代から見られた。番組やパーソナリティーが変わっても、リスナーがツイートしたくなる、良い関係性が築けているようだ。

ラジオとともに育った日々

   私はラジオが大好きだ。小学校の休み時間といえば、校庭を駆け回るのが常道だが、筆者は教室の窓際にあるラジカセで、AMのワイド番組を聞いていた。大人の香りのするトークに、担任が苦笑いする場面も多々あったが、「ませガキ」の自分には最高の娯楽だった。どんなCMが流れていたかですら、いまでも鮮明に覚えている。

   高校に入って、FMも聞き始めた。3年生になると授業が減る。ライターサイズの携帯型ラジオにイヤホンを差し、授業が始まるまで廊下で聞いていた。昼夜逆転した宅浪時代は、深夜放送にハマった。全国ネットの音楽番組に、自作のコミックソングを毎週送り付け、何度かスタジオ出演したこともある。ほぼ家族としか顔を合わせない日々のなかで、ラジオは支えになっていた。

   あれから十数年。スマホが登場し、radikoも始まり、ラジオ聴取のハードルは大きく下がった。日常にリズムをつけるため、通勤通学のおともに、と聞き始めるあなたに、インターネットの面白さを少しでも伝えられたら――。そんな思いで、毎週の放送にのぞんでいる。

(J-CASTニュース編集部 城戸譲)