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マツダから「車種名」消えた 社名アピールで差別化できるか

   小林旭さんのヒット曲「自動車ショー歌」(1964年)は、「クラウン」「ブルーバード」といった自動車の車種やメーカーの名称をだじゃれのようにつなげた歌詞が特徴的で、自動車が憧れの存在だった当時の雰囲気をうかがわせる異色の歌謡曲だ。当時は自動車の車種名とは、単なる商品の名称という枠に収まらず、社会に広く親しまれる存在であった。

   それから半世紀を経て、社会における自動車の位置付けも変わってしまった昨今、使ってきた車種名を捨てて、単純なアルファベットと数字の組み合わせなどに置き換える動きが進んでいる。

  • デミオから生まれ変わった(MAZDA2「XD PROACTIVE S Package」オプション装着車)
    デミオから生まれ変わった(MAZDA2「XD PROACTIVE S Package」オプション装着車)
  • デミオから生まれ変わった(MAZDA2「XD PROACTIVE S Package」オプション装着車)

デミオ→MAZDA2、アクセラ→MAZDA3

   こうした変更を現在、日本で進めているのはマツダ(MAZDA)だ。日本国内で販売する主力小型車「デミオ」を「MAZDA2」に改め、車体も大幅に改良して2019年9月12日に発売する。同年5月には小型乗用車「アクセラ」を「MAZDA3」に、同年8月には主力車「アテンザ」を「MAZDA6」に改め、それぞれ新しいモデルを発売した。いずれも新しい車種名は既に海外向けでは使われているものだ。

   既にSUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)の車種名は、「CX-3」「CX-5」「CX-8」のように「CX-数字」の組み合わせにして国内外で統一している。ただし、ライトウエートのオープンカーとして世界的に人気が高い「ロードスター」は例外となり、車種名を継続する方針だ。

   2010年から「魂動(こどう)」というデザイン哲学を掲げ、ダイナミックなデザインの自動車を世に送り出してきたマツダ。10年近くが経過してラインアップのモデルチェンジを一通り済ませ、特徴あるデザインは「マツダらしさ」として定着してきた。このタイミングで車種名を「マツダ数字」に変更して、車種名も「らしさ」を前面に打ち出し、他社とは違うブランドイメージをアピールする狙いがありそうだ。

海外メーカーでは一般的

   こうした車種名は海外メーカーの輸入車ではむしろ一般的だ。メルセデス・ベンツは「Cクラス」「Eクラス」、BMWでは「3シリーズ」「X1」といった具合だ。愛称のような車種名で販売数の上位に入るのは、フォルクスワーゲンの「ゴルフ」や「ポロ」ぐらいだ。トヨタ自動車も「レクサス」ブランドでは、「レクサスLS」のように、「レクサス+アルファベット2~3文字」の組み合わせを海外から日本に持ち込んだ。

   マツダのこうした改革は始まったばかりで、業績への反映はまだ先だ。2019年4~6月期の全世界販売台数は前年同期を比べて12%減少している。このうち最大市場の北米では利益率を改善させようと新車の販売奨励金を抑制した結果、販売台数は14%減少した。景気減速の中国では21%減少。日本では5月に発売したMAZDA3が計画を上回る受注を集めたが、既存車種の販売が想定を下回り、全体の販売台数は20%減少した。2020年3月期の通年では新車効果もあって前年度超えを見込み、下半期に期待する。

   国内の販売台数ではトヨタ、日産などに続くポジションのマツダ。これまでもロータリーエンジンを量産車に搭載するなど、上位メーカーとは違った独自性を発揮して、熱烈なファンの心をつかんできた。新たな「マツダらしさ」の行方に注目したい。