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ウィンドウズ7のサポート終了で起きること ジャストシステムに更新需要の波

   文書作成ソフト「一太郎」などのソフトウエア大手、ジャストシステムの株価が好調で、足元の業績を好感する形で19年ぶりの高値を記録した。

   米マイクロソフトのパソコン基本ソフト「ウィンドウズ7」のサポート終了による更新需要が業績をけん引している。筆頭株主で画像処理センサー、計測機器大手のキーエンスによる経営改革も効果が表れており、優良企業に変身したとみる投資家が増えている。

  • ジャストシステムの株価の行方は(写真はイメージ)
    ジャストシステムの株価の行方は(写真はイメージ)
  • ジャストシステムの株価の行方は(写真はイメージ)

営業利益など最高益を更新

   株価が急伸したのは2019年8月8日。7日発表の4~6月期連結決算が、素直に好材料ととらえられたもので、値幅制限の上限(ストップ高)の前日終値比19.6%(700円)高の4265円まで上昇、これが終値となった。当日安値(4060円)が前日高値(3635円)を425円も上回り、チャート図に大きく「窓をあける」節目の展開となった。翌9日も続伸して一時前日終値比4.0%(170円)高の4435円まで上昇、19年ぶりの高値をつけた。その後、市場全体の流れに押されてやや下げたが、22日に終値3975円となるまで、4000円を上回る水準が約2週間続いた。

   市場にポジティブサプライズを与えた4~6月期連結決算の内容をみると、売上高は前年同期比40.9%増の94億円、営業利益は93.6%増の41億円、経常利益は91.3%増の41億円、純利益は73.9%増の27億円だった。営業利益などの各利益はいずれも最高益を更新した。ウィンドウズ7のサポート終了による更新需要で「一太郎」「ATOK(エイトック)」などのソフト販売が伸びたことが大きい。「IT業界は事業環境が短期に変動する」として業績予想を公表していないが、「売上高で2桁以上の成長」「最高益の更新」を目指すと表明している。

   日本語文書作成の一太郎はマイクロソフトの「ワード」にあたるソフト。「まだ残っているのか」と思われるかもしれないが、各種の教育機関や自治体を含めた官公庁では「使い勝手がいい」などとして使われ続けるケースが少なくない。また、日本語入力システム「ATOK」は使いやすさに根強い支持があり、「ワードを使いながら日本語入力はATOK」というパターンは結構ある。

タブレット端末使う通信教育も収益の柱に

   ちなみにウィンドウズ7は2009年10月にリリースされ、その当時、開発者のマイクロソフトは製品サポートを10年間提供するとしていた。その10年が経過するため20年1月14日にサポートを終了する。終了後はパソコン保護に必要な技術的サポートが受けられず、従来のようなソフトウエアの更新もできなくなるとして、マイクロソフトは20年1月までに「ウィンドウズ10」に移行することを強く推奨している。これに伴うパソコンの買い換え需要、そのパソコンにインストールするソフトウエアの販売が見込まれているわけだ。19年度の国内パソコン出荷台数は、3年ぶりに700万台を超えた18年度(739万台)よりさらに1割以上は増えると見られている(電子情報技術産業協会調べ)。

   もっとも、ジャストシステムの株価は一太郎やATOKの好調さだけで上昇しているわけではない。経営危機によりキーエンスに約44%の出資を仰いだ2009年以降、創業者の浮川和宣社長が退任し、キーエンスが送り込んだ社長のもとで不採算事業からの撤退、成長事業への投資といった改革を進めてきた。その成果の一つが2012年に参入したタブレット端末などを使う「スマイルゼミ」と呼ぶ小中学生向けの通信教育で、今や収益の柱に育っている。キーエンス流改革が実を結び始めた時期とパソコンの更新需要が重なったこと、さらには業績改善を受けた増配への期待が投資家の買いを誘っている。