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絶滅危惧種の住むビオトープに「バス放流」か 1か月で3回目撃、生態系に心配の声

   夕方17時ごろ池に向かうと、魚の「バス」の死体2匹がぷかぷか浮かんでいた。引き上げてみると、口元にはルアーに付くイカリ型の跡があった......。2019年8月に突入してから3回目の出来事だという。

   絶滅危惧種が住む「下池ビオトープ」(岐阜県・養老町)から、生態系の保全活動をする人々が声をあげている。

  • ビオトープでみつかったバス(画像は撮影者提供)
    ビオトープでみつかったバス(画像は撮影者提供)
  • ビオトープでみつかったバス(画像は撮影者提供)
  • 同じくビオトープでみつかったバス(画像は投稿者撮影)

バス釣りスポット近くの「ビオトープ」に死体

   写真は2019年8月24日に投稿者が、岐阜県養老町にある「下池ビオトープ」で撮影したものだ。近くにはバス釣りスポットとして有名な「五三川」が流れる。すでに死んでいたという今回のバスは、北アメリカ原産の淡水魚で、もともと日本にいない外来種だ。05年に「特定外来生物法」が施行されて以来、許可なく運搬や販売、飼育することに加え、放流も罰則対象(個人の場合、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金)となっている。

   ツイッター上で、2人の男性がバス釣りをする人に対して放流をやめてほしいと訴えた。なぜなら「下池ビオトープ」には、環境省が「絶滅危惧種IA類」(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)と定める「ウシモツゴ」(淡水魚)が住んでいるからだ。

「食べられてしまう可能性がある」

   こうJ-CASTニュースの取材に応じるのは、ツイッター上で声をあげた「東海タナゴ研究会」の主催者・北島淳也さん。研究会は生態系の保全活動を行っており、現在20人程度(大学生や若手研究者、社会人などで構成)で活動しているという。

   14年7月に、もともとこの地域に住んでいた「ウシモツゴ」を復元放流し、15年春には繁殖が確認できたという。現在も適切な管理によって順調に個体数を増やしているそうだ。

監視カメラは盗まれ、当時の状況はわからず

   だが19年8月に突入してから、3度も「バス」の死体を発見したという。研究会に所属する大学生の谷口倫太郎さんは、「バスは釣りあげるだけでだいぶ弱る。移動のストレスで死んだのではないか」と見る。

「僕の見解では放流をした人はバス釣りをした人だと思っている。バスの下唇にフック(針)痕がついていた。目的はわからないが、何をしていいかわからないのが現状。愉快犯であればやめてほしい」(谷口さん)

   北島さんによると、ビオトープの水位は調整されていて、洪水でもない限り、他から流れ込んでくることはないという。しかし「放流」と断定はできないのが現状である。ビオトープに設置したカメラは、過去に2度盗まれてしまって、当時の様子は記録されていないからだ。対応策として、バスの駆除・カメラの再購入・看板の設置を検討しているという。

   「下池ビオトープ」近くにはバサー(バス釣りをする人)から人気の「五三川」がある。川を管理している養老漁業協同組合はバス放流に関して「(認識はしておらず)まったくわからない」という。

環境省「現場で取り締まる等の対応は困難」

   「五三川」はバス釣りに人気の川である。動画投稿サイト「ユーチューブ」にもおすすめスポットとして紹介されることが多い。それゆえ年々利用者が増えているのが現実のようだ。漁協は、

「近隣住民からバス釣り客の駐輪場の(利用に関する)苦情がきている。マナーは治らず、毎日のように放置されたゴミなどの掃除もしている」

とする一方、放流に関しては、「(認識はしておらず)まったくわからない」という。

   今回の例が、仮に「放流」であった場合、法的にどのような対策をとれるのか。環境省に問い合わせたところ、外来生物対策室の担当者は、

「いわゆる『密放流』といった違法行為については、いつどこで実施されるかが不明であり、残念ながら現場で取り締まる等の対応は困難です」

   と答える。環境省の対策としては、「特定外来生物法」の認知度や監視の目を高めるためチラシ・パンフレットの作成をしている。また釣り人向けにもリーフレットを作成し、「入れない」「捨てない」「拡げない」の外来種被害予防3原則を掲げている(パンフレット・リーフレットは環境省サイトより自由にダウンロードできる)。また情報提供があれば警察等に相談することもあるという。

(J-CASTニュース編集部 井上祐亮)