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「無人」コンビニの商売学 「浮く人件費」と「酒売れない」の足し引きは...

   コンビニエンスストア大手のロ-ソンが、深夜の時間帯に店員を売り場に配置しない「省人化」の実験を営業している店舗で始めた。「無人化」ではないのは、店員1人が店のバックヤードに控えて、店内を見張る監視カメラの確認や商品の発注作業などを担っているからだ。さまざまな制限もあるため、深夜に売れる「あの商品」も置かない。それでも従業員の確保に悩むコンビニ加盟店にとっては打開策となりえるとして、業界からは実験の結果が注目されている。

   2019年8月23日に報道関係者に公開された横浜市内の加盟店では、午前0時~5時の5時間が実験タイム。その間、出入り口の自動ドアは施錠されており、利用客はドアの横に備え付けられた機器にQRコ-ドを読み取らせるか、同じく備え付けられたカメラに客自身の顔写真を撮影すると自動ドアが開く仕組みだ。QRコ-ドは、ローソンのアプリが入ったスマートフォンの画面に表示されるほか、この店舗で必要事項を書いて店員からもらう「お得意様カード」に印刷してある。

  • ローソンが「省人化」の実験(写真はイメージ)
    ローソンが「省人化」の実験(写真はイメージ)
  • ローソンが「省人化」の実験(写真はイメージ)

ローソンが実験営業

   店内に入り、欲しい商品をセルフレジに持っていき、バーコードを読み込ませてキャッシュレスか現金で会計を済ます。セルフレジ以外にも、ローソンのアプリが入ったスマートフォンでバーコードを読み込ませる決済方法もできる。店舗を出る際には自動ドアは通常通りに開いてくれる。店内のATMやトイレも利用できるという。

   ただ、この実験の時間帯には、年齢確認が必要となるアルコール飲料やたばこの販売は控える。このため売り上げの減少は見込まれるが、雇う店員の人数を減らして人件費を浮かすことができる。この店舗では、通常営業をしていた際の深夜時間帯には店員を2人配置しており、利用客は1晩の平均で約30人いたという。

   大阪府東大阪市にあるセブン-イレブンの加盟店が2月、セブン本部の同意を得ずに深夜の営業を一方的に休止した騒動が発端となり、コンビニの深夜営業が社会問題に浮上した。コンビニ業界ではそれ以前から人手不足や上昇する人件費が深刻な課題になっており、セブン-イレブンは2018年12月、NECと連携してNEC関係の従業員を対象にした店舗のレジを無人にする実験を実施。ファミリーマートも同様の実験を19年4月に始めていた。不特定多数が利用できる無人店舗としては、JR東日本系のコンビニ「ニューデイズ」が7月、JR中央線武蔵境駅(東京都武蔵野市)でオ-プンしている。

設備改修などの費用も課題

   ただ、いくら人手不足が深刻でも、こうした店舗の普及は簡単ではない。課題の一つは、アルコール飲料とたばこを販売しない影響の大きさだ。夜間の売り上げの半分近くがこれらの商品で占められており、浮かせた人件費との収支のバランスがどうなるかは「まさに実験」(ロ-ソン関係者)。

   また、省人化に対応するための設備改修などの費用も課題だ。1店舗当たり1000万円台となる費用の全額をコンビニ本部が負担するため、この実験の結果次第では本部が二の足を踏むことも想定される。実験は2020年2月末まで行われるが、果たしてどのような結果が出るのか。