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インスタ人気の「油処理剤」に環境破壊の懸念 本来は業務用、製造元も困惑「業者が勝手に出して...」

   ネットで買える食用油の処理剤がインスタグラムの動画で紹介されるなど人気を集めていることに対し、環境破壊につながるとツイッター上で懸念の声が上がっている。

   処理剤の中には業務用のものもあり、製造元では、家庭用への転用に困惑していると説明している。

  • 使い方を指南するインスタ投稿の一部
    使い方を指南するインスタ投稿の一部
  • 使い方を指南するインスタ投稿の一部

「これは楽ちん!!」「揚げ物も無敵」と紹介されたが...

   ネット上で出回っているいくつかの種類の油処理剤のうち、インスタ映えすると最近人気なのが「ニューさらさら」という商品だ。

   洗剤に使われる界面活性剤が成分の90%を占め、天ぷら廃油などに混ぜて石けん水状にすれば、そのまま流し台から排水口に流せるとうたってある。インスタには、その使い方を指南する動画などが200件近くも投稿され、「これは楽ちん!!」「揚げ物も無敵」などと書き込まれている。

   ところが、油処理剤については、2004年に国民生活センターが商品テストを行った結果、しばらくして水と油に分解してしまい、油を垂れ流す以上の環境破壊につながると注意を呼びかけていた。公正取引委員会から依頼のあった5つの商品については、「環境に優しい」などと景品表示法違反(優良誤認など)に当たる可能性がある表現もあったとしていた。

   今回のインスタ人気について、ツイッター上では、2019年9月11日ごろに、国民生活センターが注意を呼びかけたときと同様な状況が生まれていると指摘が出た。この投稿は、大きな反響を呼び、12日夕現在で4万件ほどもリツイートされている。

   ただ、「ニューさらさら」については、パッケージに「業務用」と明記されている。業務用厨房には、油を分離して下水に流さないようにする装置のグリース・トラップを設置することが義務付けられている。

一般消費者も買える状態に

   ところが、ネット上では一般の消費者も買える状況になっており、アマゾンでは、9月12日夕現在で10業者が「ニューさらさら」を扱っていた。そして、1リットル入りを2100円から販売していた。

   この商品を製造するアマテラ(愛知県)は12日、J-CASTニュースの取材に対し、社長が次のように説明した。

「代理店から先の業者が勝手に出しており、電話を入れて『一般の人が買ったらあかん。ネットから外せ』と言っています。しかし、なかなかこうした業者がなくならずに、とても困っているんですよ。3、40年も出している商品がダメになってしまうので、ネットで炎上して買わなくなった方がむしろいいと思っています」

   一方、ネットで買える油処理剤には、業務用ではなく一般家庭用に売っている商品もあった。

   「アブラトール ジョイ」がその1つで、製造元の寺田油脂化学工業所(岐阜県)は12日、社長が取材にこう説明した。

「数種類の界面活性剤を使っており、乳化させる作用がこれまでのものとは違います。水と油に分離することはなく、流しても下水処理施設を通せばいいわけです。油が着いたものを洗う普通の洗剤と一緒ですよ」

   ネットで出ているこの商品について、パッケージをみると、成分は「脂肪酸アルキルロールアミド」とあった。国民生活センターがかつてテストした5商品には、似た「脂肪酸アルカノールアミド」の表示があったが、この成分表示はなかった。

   (2019年9月17日追記)読者からのご指摘を受け、一部の記述を修正いたしました。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)