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「胎内記憶」への助成金が物議 母親の「たましいの成長」など訴え、現職国会議員もPR

   岡山県岡山市が関与するプロジェクトで、いわゆる「スピリチュアル」的な言説を含むとされる、「胎内記憶」の関連事業に助成金を交付していたことが分かった。

   同事業の講演会を国会議員が宣伝するとSNS上で注目を集め、波紋を広げている。

  • 逢沢一郎議員のツイッターより。投稿はいったん削除され、テキストのみで再度ツイートされている
    逢沢一郎議員のツイッターより。投稿はいったん削除され、テキストのみで再度ツイートされている
  • 逢沢一郎議員のツイッターより。投稿はいったん削除され、テキストのみで再度ツイートされている

子どもは「お母さんのたましいが成長すること」を望む?

   胎内記憶とは、産婦人科医の池川明氏が提唱する概念だ。

   池川氏の著書『胎内記憶でわかった 子どももママも幸せになる子育て:「もって生まれた才能」の伸ばし方』(誠文堂新光社)によれば、2~5歳の子どもの約3割が生まれる前の記憶を持っているとする。

   記憶を持つ子どもに聞き取りなどをすると、出生前は「たましい」という状態で、一定の期間、神や天使のような存在と過ごす。そこで様々な情報を得て、自分に最適な母親を選ぶという。

   子どもは「お母さんのたましいが成長すること」などを望み、何かしらの使命があるケースが少なくない。例えば、障がいを持って生まれた子どもは「自らが障がいを背負うことで、まわりの人たちに、命の意味、社会とはどうあるべきか、本当のやさしさとは何かといったことを伝えに来ているのです」

   また、「虐待を体験するというプログラムをもっている子どももいる(中略)虐待をするお母さんの多くが、自分自身が親に受け止めてもらえなかったという思いをもっています。そういう闇に光を灯すには、どんな状況でも受け入れてくれるような子どもが必要です。その子の姿を見て、お母さんの心は変化していくのです」と池川氏は主張する。

   著書の中では、これらの考えは「現時点で」科学的な説明はできないとしている。

自民・逢沢議員「私も参加します」

   「『胎内記憶×人間関係の人生』〜親を幸せにするために生まれてきた子供たちからのメッセージ」と題した池川氏らの講演会が9月下旬、岡山市で開かれる。主催は岡山市の民間団体だ。

   このイベントが、岡山市が事務局を務める持続可能な開発のための教育(ESD)の推進を目的とした「岡山ESDプロジェクト」の支援対象となっているのである。プロジェクトでは、ESD関連の事業に助成金を交付している。

   イベントの主催団体には4万2000円が支払われており、事業欄には「生まれてきた意味を胎内記憶で知り、自分らしく幸せに生き、互いを尊重し調和する健全な心が育まれる人間関係で世界平和の実現を」とある。

   地元選出の自民党の逢沢一郎衆院議員も2019年9月16日、講演会をツイッターで紹介し、「ぜひお出かけ下さい。私も参加します」と呼びかけた。これをきっかけに、SNSでは市の助成事業としての妥当性に疑問を呈する声が出ることとなった。

岡山市、主催団体の受け止めは?

   岡山市ESD推進課は9月17日、J-CASTニュースの取材に、助成金の財源は市が負担しているものの、事業選定は外部の有識者による審査会で決めているという。

   胎内記憶をめぐるSNS上の批判については、「申請書をもとに審査をするので、これに書いていないような内容は審査ではわからない」とし、「今後こういった形で調べないといけないなという案件が出てきたら、来年度以降の事業では検討していく」と話した。

   講演会の主催団体へ17~19日にかけて複数回電話するも誰も出ず、メールで取材を申し込むも期日までに回答はなかった。

   なお、岡山市は17年11月に、「おなかの中の赤ちゃんの記憶~がんばって生まれてきたよ~」と題した池川氏の講演会を共催している。

(J-CASTニュース編集部 谷本陵)