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「カップヌードル」米中の好調で... 日清食品HDに投資家が注目

   日清食品ホールディングス(HD)の株価が好調だ。2019年9月26日に一時、前日終値比2.3%(180円)高の8120円まで上昇し、2018年6月以来となる1年3カ月ぶりの高値をつけた。その後はいったん数字を落としたものの、10月7日時点で8000円近くをキープしている。

   材料になったのは目標株価を引き上げる野村証券のリポート。8月7日の2019年4~6月期(第1四半期)連結決算(国際会計基準)の発表以降、海外事業を中心に業績改善していることを評価するリポートが相次いでおり、株価を押し上げている。

  • 海外でも人気伸ばすカップヌードル(イメージ)
    海外でも人気伸ばすカップヌードル(イメージ)
  • 海外でも人気伸ばすカップヌードル(イメージ)

「プレミアム戦略」が軌道に乗る

   野村証券は9月26日に配信したリポート「回収期入りで高成長局面」で、目標株価を9200円から9700円に引き上げた。理由の一つとして4~6月期連結決算でカップヌードルなどを販売する米国や中国といった海外事業が営業増益を達成し、「投資回収期入りを印象付けた」ことを挙げている。

   海外において後発である日清食品HD。規模で勝る現地メーカーと同価格帯で競合しても勝算は高くない中、カップヌードルを軸にしつつ袋麺でもプレミアム(高価格)戦略をとっていることが軌道に乗ってきたと指摘している。国内においても即席麺の値上げが7~9月期(第2四半期)からフルで寄与する点を評価した。

   8月22日配信のリポートで投資判断を3段階で最上位の「1」に格上げし目標株価も引き上げたSMBC日興証券は、10月3日配信のリポートで目標株価を8350円から9200円に再度引き上げた。短期間に引き上げを重ねたのは「中国事業の視察を踏まえて中国の成長性を当初の想定より高めに見直した」ことなどによる。「(中国では)孤食化によって即席麺を食べる機会は増える」などとし、「成長できる食品銘柄の選択肢が減少する中、海外利益成長がこれから本格化する日清食品HD株への選好度が高まってくると思われる」とも指摘した。

   さらに、大型投資が一巡した中、日清食品HDが2020年に目指す「時価総額1兆円企業」に向け、株主還元の余力が強まることもポジティブに見ているという。

袋麺主流の中国でも「カップ麺」好調

   それでは4~6月期連結決算の内容を確認しておこう。売上高は前年同期比2.4%増の1058億円だったが、営業利益は32.8%減の86億円、純利益は29.9%減の58億円。各利益が減っているのは前年同期に52億円の不動産売却益を計上した反動(営業利益にもその影響が出る)のためで、一時的な影響を除いた実質的な営業利益は前年同期より5%程度増えた。その増益をけん引したのは海外。米国やブラジル、メキシコなどの「米州地域」は売上高が15.5%増の151億円、営業損益は黒字転換し13億円だった。日清食品HDは「米国で高価格帯商品の販売推進により売り上げが好調に推移した」と説明している。中国の売上高は4.4%増の96億円、営業利益は102.4%増の8億円。もともと袋麺が主流の中国で好調なカップ麺類が売り上げを増やした。国内でも創業者一家がモチーフとなったNHKの連続テレビ小説「まんぷく」が販売を後押しした(今ではその効果は薄れているとみられるが)。6月の値上げで販売数量が減少した点は気になるところだが、長期的には利益確保に貢献するとみられている。

   決算は株式市場の取引時間中に発表され、実質的に増収増益で海外が好調という点が好感されて急伸、終値は前日比5.3%(360円)高の7090円だった。少子高齢化による国内の需要減に直面する食品企業は海外が活路となり、株式市場はその成長の芽を見逃さない。それだけに日清食品HD株は今後も堅調に推移する可能性がある。