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強烈左フックと老獪さは要警戒も... 井上尚弥の次戦「フィリピンの閃光」ドネアの実力は?

   ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)バンタム級決勝戦が2019年11月7日、さいたまスーパーアリーナで開催される。WBA、IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(26)=大橋=と、WBA世界バンタム級スーパー王者ノニト・ドネア(36)=フィリピン=が拳を交える。「モンスター」VS「フィリピンの閃光」の一戦は世界的に注目を集め、井上の「世代交代」に大きな期待がかかる。

   日本のボクシングファンが待ちに待った一戦が目前に迫った。プロデビュー以来、無傷のまま世界3階級を制し、今や世界のパウンド・フォー・パウンド(PFP)の常連となった井上。その「モンスター」が今回、迎え撃つのが「フィリピンの閃光」ドネアだ。ドネアは世界5階級を制覇し、マニー・パッキャオ(40)と並んでフィリピンのレジェンドと称される国民的英雄だ。

  • 井上尚弥(2016年撮影)
    井上尚弥(2016年撮影)
  • 井上尚弥(2016年撮影)

ここ4年間で4勝2敗と振るわず

   ドネアはIBF世界フライ級を皮切りに、フェザー級までの5階級を制覇。近年はスーパーバンタム級、フェザー級での戦いが続いていたが、WBSSに出場するために階級をバンタム級に落とし、昨年11月に行われたWBSSの1回戦(対ライアン・バーネット=英国=)で7年ぶりにバンタム級のリングに上がった。

   バンタム級で無類の強さを誇り、長谷川穂積氏からタイトルを奪ったフェルナンド・モンティエル(メキシコ)と2011年2月に対戦し、衝撃の2回TKOで破り、WBC、WBO世界バンタム級王座を獲得。初防衛戦では、のちに井上と対戦するオマール・ナルバエス(アルゼンチン)を完封。ダウンこそ奪えなかったが、無敗の2階級王者に初黒星をつけた。

   ナルバエス戦以降、階級をスーパーバンタム級、フェザー級と上げていくわけだが、2013年4月、ギレルモ・リゴンドウ(キューバ)に判定で敗れプロ2敗目を喫すると、これを機に徐々に輝きを失っていった。翌14年10月にはニコラス・ウォータース(ジャマイカ)にプロ初のKO負けを喫し、15年は3戦全勝したものの16年から現在まで4勝2敗と精彩を欠いている。

   ドネアの懸念材料となるのが、年齢からくる体力の衰えとスピード、反射神経、そして耐久性だろう。パンチ一発の威力は依然として健在だが、フェザー級から2階級落として臨んだバンタム級での2戦はいずれもKO(TKO)決着で、スタミナ面の不安は拭えない。今年4月に行われたWBSS準決勝、ステフォン・ヤング(米国)との一戦では、現在のドネアの「課題」と「強さ」が改めて表面化した。

KO負けは5年ないが...井上のパンチ力なら

   サウスポースタイルでフットワークを駆使して左右に動き回るヤングに対して、ドネアは序盤、ステップワークについていけず、なかなか狙いを定めることが出来なった。2回終了間際にはヤングの左右パンチを受けバランスを崩す場面も。かつてのドネアならば、相手の素早いフットワークを持ち前のスピードと強打で封じてきたが、得意の左フックにつなげるまでに苦戦し、一発狙いの粗さが目立った。

   その一方で伝家の宝刀、左フックの威力は相変わらずで、6回に左フック一発でヤングを仕留めた。プレッシャーのかけ方に全盛期の迫力は見られなかったものの、ベテランらしい老獪さがみてとれた。フィニッシュとなった左フックを当てるために右ボディーで相手の注意を引き、ガードが下がったところに左を打ち込んだ。強引にボディーを攻め、最後に左フックをもっていくのはドネアの得意とする攻撃パターンでもある。

   ここ最近の試合を見てみると、被弾する確率が高くなっている。もともとガードでパンチを防ぐというよりも、抜群の反射神経でパンチを見切るタイプ。ただ、最近ではスピードのある軽いパンチをよけきれない場面がみられるようになった。耐久性に関しては、5年前のKO負け以来、一度もKO負けがないものの、規格外の井上のパンチ力をもってすればKO決着は十分にあるだろう。

   井上は10月28日に行った公開練習の際、ドネアの「キャリア」に警戒心を抱いた。数々の修羅場をくぐってきたドネアの経験、そしていまだ衰えを見せない左フックの威力と当てカンを警戒しているのだろう。井上がスピード、パンチ力、防御技術においてドネアを上回っているのは明らかで、早い回で勝負が決する可能性もある。一方で、衰えたとはいえ一撃で試合をひっくり返すドネアのパンチ力は決して侮れない。世界が注目するバンタム級決戦は11月7日、ゴングが鳴らされる。