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原監督の「人的補償」撤廃案、賛同は広がるか? 元パ球団職員は「取る側の論理」

   巨人・原辰徳監督(61)の「人的補償」発言が波紋を広げている。

   原監督は2019年11月4日、フリーエージェント(FA)に伴う人的補償に関して言及した。球界のFA市場活性化を目的として「人的補償はなくす必要がある」と発言。球界の盟主、巨人の指揮官による「提案」に球界をはじめとし、野球ファンから疑問の声が上がっている。

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「単純に資金力の違い...」

   原監督が「セ・リーグDH制導入」に続いて、球界改革案を明かした。原監督が新たに「提案」したのはFAでの人的補償の撤廃だ。原監督の持論では、FA移籍に伴う人的補償の足かせをなくすことで、他球団がFAに参戦しやすくなり、球界全体の活性化につながるというもの。ただ、この発言に首をかしげる関係者もいる。

   パ・リーグの元球団職員は、原監督の「提案」に対して「原監督の意見は持てる者の論理。取る側の論理です」と指摘し、次のように続けた。

   「FAに関して他球団がなぜ巨人のように獲得に積極的でないのか。それは単純に資金力の違いです。人的補償うんぬんは二の次で、FAで選手を獲得するには、A、Bクラスの選手ならば複数年で10億、もしくはそれ以上経費が必要となるケースがあります。そうなるとマネーゲームとなり、資金力のないチームに勝ち目はなく手を挙げる球団が限られてしまいます」

「他球団の賛同を得られるかどうか疑問です」

   また、前出の元球団職員は人的補償以外での改善点を指摘した。

「人的補償を撤廃する前に、まずはA、Bランクの選手を獲得できる人数を制限し、FAの結果を受けて翌年のドラフトに何かしら反映させるなどの処置が必要だと思います。もしくは金銭補償の改善です。ただ単に人的補償を撤廃するだけでは活性化につながると思えませんし、他球団の賛同を得られるかどうか疑問です」

   1993年にFA制度が導入されて以来、巨人は12球団最多となる26人の選手をFAで獲得してきた。その一方で、FAに伴う人的補償で13人の選手が他球団に移籍している。昨年は、丸佳浩外野手(30)の人的補償として長野久義外野手(34)が広島に、内海哲也投手(37)が、炭谷銀仁朗捕手(32)の人的補償として西武に移籍している。

取られる球団への「見返り」ないと...

   生え抜きのベテラン2選手が28人のプロテクトリストから外れ、人的補償で移籍したニュースは球界に大きな衝撃を与え、G党のみならずプロ野球ファンから非難の声が上がった。おそらく原監督の発言は、昨年の「人的補償騒動」を踏まえたものとみられ、原監督は、本来FAは「明るいこと」で、これを「暗いニュース」に変えてはいけないと、主張している。

   指揮官は人的補償の撤廃を「提案」する一方で、今年もFA戦線に積極的に参戦する意向を明かしている。今年は、楽天・美馬学投手(33)とロッテ鈴木大地内野手(30)の獲得へ名乗りを上げており、交渉が解禁となった3日に早速、美馬と交渉したようだ。鈴木に関しても近日中に交渉の場を設ける見込みだ。

   美馬と鈴木はともに補償を伴うランクの選手とみられ、獲得に成功した場合、巨人は金銭もしくは2人の人的補償が必要となってくる。原監督が唱える人的補償撤廃ならば、プロテクトリストを作成する必要がなくなり、球団の「負担」は確かに軽減する。だが、取られる球団にそれ相応の見返りがなければ、戦力の均等化どころか一極化が進みかねない。原監督の「提案」に賛同する球団は現れるのか。注目される。