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市場の変化映す? 業績予想「下方修正」でも株価は上昇

   日本電産の株価が上昇基調にあり、3連休明け2019年11月5日の東京株式市場で年初来高値を更新した。

   10月23日の取引終了後、2020年3月期の業績予想を下方修正したものの、長期的な成長に向けた投資が増えるためという会社側の説明を市場が受け入れた格好だ。株式市場が足元の業績より将来の成長性に目を向ける場になりつつあるとの専門家の指摘も出ている。

  • 株価が意外な動きを(イメージ)
    株価が意外な動きを(イメージ)
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一時は「失望売り」招くが...

   まずは日本電産の下方修正の内容を確認しておこう。純利益の従来予想は前期比22.2%増の1350億円と過去最高を更新するとしていたが、一転して減益となる9.5%減の1000億円になる見込みとした。売上高は据え置き、営業利益は34.6%増の従来予想を改め、15.4%増の1500億円に250億円減額した。

   日本電産は家電製品や自動車、各種機械のモーターを生産する世界的な電子部品メーカー。その日本電産が、業績予想修正の理由として、今後需要が飛躍的に伸びるEV(電気自動車)の駆動を担う「トランクションモーター」関連の開発費用や生産立ち上げに向けた追加の費用がかかることを挙げた。規模感として「営業利益への影響額が約300億円」と指摘した。

   翌24日の株式市場では「一転減益」の発表を受けて投資家の失望売りから午前中に反落し、一時前日終値比0.9%(140円)安の1万5210円をつける場面があった。ただ、東京都内で同日午前に永守重信会長が開いた決算説明会での発言などを受けて徐々に見直し買いが入り、一時1.2%(185円)高の1万5535円まで上昇、終値は0.8%(130円)高の1万5480円だった。

   各紙報道によると永守会長は24日の記者会見で、トランクションモーターの受注見込みが2023年度までに455万台と過去3カ月の間に5倍に伸びたことを明らかにし、新たに中国・大連やポーランド、メキシコに生産拠点を設ける方針を示した。それでも「生産能力はまだ足りない」と述べ、さらに投資を拡大する可能性も示した。

「経営トップの戦略が株価を左右する時代に...」

   足元では米中貿易戦争やそれも影響する中国経済の伸びの鈍化によって主要市場である中国向けの需要は停滞している。それは2019年9月中間連結決算や2020年3月期連結決算にも反映。24日に業績予想修正と同時に発表した中間決算は、営業利益が前年同期比35.3%減の622億円、純利益が64.9%減の275億円だった。冷蔵庫部品メーカー買収に際し、欧州当局から条件とされた事業売却によって約200億円の損失が出たことも響いている。

   しかし、株式市場は永守会長の戦略を支持したと言える。世界で今後、自動車の電動化が加速度的に進むことは間違いないなか、その心臓部を支えるモーターを量産するための投資を高く評価した。野村証券は10月23日付のリポートで、「EV用トラクションモーターが日本電産の成長を牽引する新規事業になるとの見方に変わりなく、電子部品業界のコア銘柄として「Buy」(3段階の最上位)を継続する」とした。株価は上昇を続けて11月5日には一時、1万6440円をつけて年初来高値を更新した。市場では「アナリストなどによる決算内容の予想精度は高まっており、決算内容より経営トップの戦略が株価を左右する時代に近づいている」とする声も出ている。