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大幅リニューアル「現代用語の基礎知識」を徹底分析 ページ数4分の1、重さ3分の1、では中身は?

   「ユーキャン新語・流行語大賞」の選出元として知られる「現代用語の基礎知識」の最新版(2020年版)が、2019年11月7日に発売された。

   同誌をめぐっては、J-CASTニュース編集部が4月23日に、「『現代用語の基礎知識』72年目の転機へ 大幅リニューアルに向け準備、『休刊』は否定」とのタイトルで報道。同誌編集部から、「より時代に即したかたちで読者の皆様にお届けできるよう考えております」との回答を得たことをお伝えした。また、10月に入ると各メディアから、同誌がリニューアルされるとの同社からのリリースが配信されていた。

   そして、11月7日。J-CASTニュース編集部は書店に並んだ同誌を入手し、その内容の変化に迫った。

  • 2019年11月7日に発売された「現代用語の基礎知識2020」(右)と、前年に発売された2019年版(左)
    2019年11月7日に発売された「現代用語の基礎知識2020」(右)と、前年に発売された2019年版(左)
  • 2019年11月7日に発売された「現代用語の基礎知識2020」(右)と、前年に発売された2019年版(左)

前年までに比べ、大幅にスリムに

   書店に並んでいたのは、「ことばをみかたに 現代用語の基礎知識2020 新創刊」と書かれたB5判の黄色いジャケットが目を引く1冊。手に取ってみると、これまでの同シリーズに比べてページ数がぐっと減り、その分、手に取りやすくなったことが分かる。

   総ページ数はこれまでの1200ページ超から大きく減少して296ページ。価格は2019年版の3200円(税別)の半分未満となる1500円(同)となっており、10月に出たリリースに掲載されている「従来の1000頁を超える重厚さから296頁とスリム化。価格も大幅改定で手軽に手に取っていただける体裁に」との文言通りとなっている。ちなみに重量は編集部で計測してみたところ、2019年版の1700グラム強に対し、約500グラムと大幅にダイエットしていた。

   また、同誌後半の執筆者の欄を見ると、その数は76人であり、昨年以前の約半分となっている。

   表紙を開けてみると、これまでの同シリーズと同様、「巻頭特集」(2020年版は「どうなる令和新時代」)に始まり、その年の時事問題を扱う「現代用語ジャーナル」、その年のニュースに出てきたキーワードを解説する「ニュースのおさらい」、各国の国旗を紹介する「世界の国旗」といった定番のコーナーに加え、例年にない「巻頭インタビュー」があるのが分かる。

   インタビューに登場しているのはブレーク中の講談師・神田松之丞さんで、タイトルは「講談が、とにかく元気だ。」。「おかげさまで、全国の皆さんに講談に触れていただく機会が増えました」と喜ぶ神田さんの5ページにわたるロングインタビューとなっている。これらに加え、「あいみょん」など、2019年に活躍した有名人を紹介する「2019年のキーパーソン」や、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック関連のコーナーも目を引く。

用語解説のページで、大きな変化が

   これらのコーナーが終わると、105ページからは「本編」ともいえる用語解説のページが始まる。ジャンルは「政治」「時代・流行」「経済」「世界情勢」「情報メディア」「社会」「スポーツ」となっており、一例を挙げると、「政治」のページでは「G20大阪サミット」といった用語を辞書的に解説。これだけ見ると、前年までの同誌と同じ形式に思えるが、前年までは、「政治」のジャンルの中に、さらに、「日本政治」「行政」といった小ジャンルが設定され、識者たちが署名で小ジャンルごとにページを担当しており、この点を考慮に入れると、用語を小ジャンルで細分化せず、「政治」などの大きなジャンルで一括してまとめているのが分かる。

   その一方で、これらに「今日の論点」と銘打たれたページが複数差し挟まれている。これまでの同誌にはない形式であり、こちらの各ページは署名記事となっている。執筆者は「今日の論点・北東アジアの地政学的変動」のページは元外務省主席分析官で作家の佐藤優氏、「今日の論点・権力の監視とジャーナリズム」のページはライターの武田砂鉄氏という具合に、これまでの同誌に寄稿していた識者がページを担当している。ページの構成は用語解説のページのように寿司詰め状態ではなく、特集ページのように余裕を持たせた読みやすさ重視のページとなっているのが特徴的だ。

   これらの変更点を鑑みると、前述のリリースの通り、ページ数を削減して重量を減らして持ちやすくするのはもちろん、新たな形式のページを盛り込んで読みやすさを追求し、また、価格を抑えるなど購入のハードルを下げるなど、「手に取りやすさ」を追求した大幅なリニューアルが行われたことが分かる。

   昭和23年(1948年)に創刊され、戦後、そして平成の時代をくぐり抜けてきた同誌が、新たな時代となる令和となった2019年に大幅なリニューアルを迎えたのは、掲載される用語はもちろん、その出版の形式も常にアップデートを怠らないという姿勢の表われなのかもしれない。

(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)