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アイドルは何を持ち帰っても「武器」になる 「地獄少女」出演のSKE48大場美奈インタビュー

   テレビアニメやコミックなどで知られるダークファンタジー作品「地獄少女」が映画として実写化され、2019年11月15日に公開される。作品のキーパーソンのひとり、インディーズアイドルの御厨早苗(みくりや・さなえ)を演じるのが、SKE48で現役アイドルとして活躍する大場美奈さん(27)だ。

   大場さんが映画に出演するのは、SKE48に関するドキュメンタリー映画を除くと約3年ぶり。「本職」のアイドルと女優の共通点や映画の見どころ、今後の活動に向けた意気込みについて2回に分けて聞いた。(聞き手・構成:J-CASTニュース編集部 工藤博司)

  • SKE48の大場美奈さん。映画「地獄少女」では、インディーズアイドルの御厨早苗(みくりや・さなえ)を演じている
    SKE48の大場美奈さん。映画「地獄少女」では、インディーズアイドルの御厨早苗(みくりや・さなえ)を演じている
  • SKE48の大場美奈さん。映画「地獄少女」では、インディーズアイドルの御厨早苗(みくりや・さなえ)を演じている

顔を傷つけられたアイドルを演じる

―― 「地獄少女」は、午前0時に現れるウェブサイト「地獄通信」にアクセスして恨んでいる人の名前を入力すると、玉城ティナさん(22)演じる閻魔あいが、その人物を実際に地獄送りにしてくれる、というストーリーです。その中で、御厨早苗はどのように活躍する役柄ですか?

大場: 本当に未来が明るいアイドル、御厨早苗だったのですが、そこで事件に遭ってしまいます。アイドルと言えば顔はもちろん命のひとつなので、顔を傷つけられた以上、どんなに歌声が良くても、「もう人生終わってしまった」と絶望してしまいます。そんな中で、自分の評判を検索するうちに「地獄通信」という不思議なサイトを見つけます。それをきっかけに、自分がずっと暗闇の中で生きているだけではなく、絶望を「その犯人を復讐できるものなら」という復讐心に変えて生きていく、という生き様を演じています。

―― 御厨早苗は閻魔あいから、赤い紐で結ばれた藁人形を渡されて「この紐を解けば、私との契約は成立する。恨みの相手は永遠に地獄をさまよう。ただし、あなたも地獄に落ちる」と伝えられます。地獄少女に復讐を頼むと、自分も犠牲にならないといけません。御厨早苗としても、すごく葛藤があったのではありませんか。

大場: そこに関しての葛藤はなかったですね。この先どんなに頑張っても明るい未来は送れないな、いう絶望はどうしてもぬぐいきれないものです。すでに事件はみんなが知っていますし、そのうえで何もなかったかのように生きるというのは無理だと思うので、そういう意味では、もう自分が地獄に落ちることに関して戸惑いはなかったと思います。

―― 決然とした気持ちで赤い紐を引っ張ったわけですね。

大場: 揺るがない気持ちで引っ張りましたね。そこまでは予告編の動画に映っていると思いますが、その後は、ぜひ劇場で見てほしいなと思います。

―― 撮影は2018年秋だったと聞きました。寒さが厳しくなってくる時期ですが、ロケで苦労などありましたか?

大場: 閻魔あいとの二人のシーン以外は屋内で撮ったんですが、結構ギュッとしたスケジュールの撮影で、1日で心情的にはものすごく自分の心が荒ぶるシーンを撮ったり、ただ落ち込んでいるシーンだったり...。1日で色々な感情のシーンを撮るのは未知の経験でしたが、白石(晃士)監督と撮影し始めて、不安は全くなくなりました。一つ一つのシーンが自然に入り込めましたね。

―― 撮影期間は延べ1週間だったと聞いています。その中で、ジェットコースターみたいに感情が行ったり来たりしたわけですね。

大場: そうですね。撮影ってそういうものだと思いますが、朝から晩までそうだったので、私としては楽しかったです。

CGで再現した「地獄」での演技には苦戦

―― この作品では大場さんの様々な感情表現が見られるということだと思いますが、演じるにあたって苦労したことはありますか?

大場: 今の自分にとっての「絶望」と、御厨早苗にとっての「絶望」は全くレベルが違う話なので、それを今までの体験を生かして演じられるものではありませんでした。自分と御厨早苗の職業は同じなので、「自分がもしそうなってしまったら」という想像で演じました。元々自分は明るくてテンションが高い性格ではなく、撮影前に自分の世界に入り込んで、自分の中で御厨早苗にとっての「絶望」を想像したりしていました。「自分が思っているより辛いことなんだろうな」とは何となく分かっていたので、自分がいま「体感的にこれくらいの辛さなんだろう」というレベルを上回った辛さを表現できたらと思って演じました。

―― 特に難しかった場面があったら教えてください。

大場: 「地獄通信」にアクセスして閻魔あいに出会い、「自分がもし地獄に行ったらこうなる」という様子を体験する場面です。地獄っていうのは現実世界にないのでCGで再現なのですが、その撮影が一番難しかったですね。行ったことも見たこともないですし、体験したこともない。多分、白石監督の頭の中にしかその世界観がなくて。アニメは昔から見ていたから分かりますが、人間が実際に地獄に入っていくというのがなかなか難しくて...。地獄っていうのは生きていること以上に苦しいことばかりなんですよ、表現することが。地獄で起きていることは、ただの人間の「苦しい」とは異質なものですし、CGなので、自分できちんと想像していかないといけない。すごく新しい体験をさせてもらったと思います。白石監督はこの世界観へのこだわりが一番熱く、そこに関してはすごく大変でした。

―― 特に印象深かった場面や、「ここは注目してほしい」といった場面はありますか?

大場: 決意を固めて藁人形の赤い紐を解くシーンは、私の撮影で最後のシーンだったんです。すごく自分もいい意味で御厨早苗に入り切ったというか、いろんなものを経て御厨早苗になりました。あそこで自分の人生が変わってしまう訳なので、すごく特別な気持ちでしたね。

本職の経験は演技に役立った?

―― 今回の役柄は「インディーズアイドル」で、大場さんの本職はSKE48という「大手アイドル」。普段のアイドル活動が今回の演技に役立ったり、逆に今回の演技がアイドル活動に生かせたりするところはあったのでしょうか。

大場: 自分のアイドルの経験として役に経ったのは、そのライブの「振り覚え」ぐらいでした。この点ではすごく役に立ったのですが、アイドルと映画は全く別の世界で、奥深いお芝居の世界を経験すると自信になります。映画の撮影では、その現場ではわからないこともたくさんあるし、教えてもらうこともたくさんあるので、「まだまだ必死に、一生懸命に」という感じですが、いざ自分の本職に戻ろうとなったときは、やっぱりいっぱいいろんな経験をしたからこそ、人として自信がついて帰ることができるというのはありますね。

―― 御厨早苗は、映画のキーパーソンのひとりです。今回はアイドルというよりも、役者としての大場さんが前面に押し出されているように思います。

大場: そうですね、やっぱりアイドルは本職ですが、私としては、アイドルとお芝居は切り離していて考えています。リンクさせられる部分だったらどんどん活用していこうとは思いますが、またちょっと違うジャンルだなと思っているので、そこはそれこそ「新人としてよろしくお願いします」という気持ちで撮影に入っています。

―― 映画で大場さんを知った人が、「このアイドル役の人、実は本職もアイドルなんだ」と気づくこともありそうですよね。映画で学んだものを本職に持ち帰って、歌などにも今後深みが出そうです。

大場: アイドルは何を持ち帰っても自信は武器になって、何にでも活かせるので、そういう意味ではすごく面白い職業だなと思いますね。

エゴサの結果は「正直に受け止める派」

―― そういえば、インディーズアイドルの御厨早苗は、自分のことを検索する(エゴサ)中で「地獄通信」に出会います。アイドルの大場さんもエゴサはするんですか?「エゴサはすごくメンタルに悪い」と、あえてやらない人もいます。

大場: はい、エゴサはやります。嬉しいことは嬉しいと思いますし、「ふざけんな」ってことは「ふざけんな」って思いますし、私は正直に受け止める派ですね。

―― おそらくエゴサするときは、このインタビューもヒットすると思いますので、(いいね!や拡散など)よろしくお願いします(笑)

大場:はい、ぜひ、よろしくお願いします。

インタビュー後半に続く。11月15日掲載予定です)


大場美奈さん プロフィール
おおば・みな 1992年生まれ。神奈川県出身。2009年にAKB48メンバーとしてデビューし、13年にSKE48に加入。18年の選抜総選挙では8位。映画、ドラマ、舞台に活躍の場を広げ、19年秋には「ハケンアニメ!」で舞台初主演を務める。