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「一生懸命やっている人たちが一番かっこいい」 SKE48大場美奈、「人の本気を笑わない」を座右の銘にした思い【インタビュー】

   映画「地獄少女」(2019年11月15日公開)に出演しているSKE48の大場美奈さん(27)は、19年8月に初の写真集「本当の意味で大人になるということ」(スクウェア・エニックス)を出版したのに続いて、10月に初の主演舞台「ハケンアニメ!」に臨むなど、アイドル以外にも活躍の幅を広げている。

   大場さんは09年にAKB48の9期生としてデビュー。11月14日にはAKB48劇場での公演デビュー10周年を迎えた。インタビュー後半では、18年まで10年間にわたって行われてきた選抜総選挙や、自らが現在所属するSKE48、11年目に向けた思いを聞いた。(聞き手・構成:J-CASTニュース編集部 工藤博司)

  • SKE48の大場美奈さん。映画「地獄少女」出演以外にも主演舞台「ハケンアニメ!」など活躍の場を広げている
    SKE48の大場美奈さん。映画「地獄少女」出演以外にも主演舞台「ハケンアニメ!」など活躍の場を広げている
  • SKE48の大場美奈さん。映画「地獄少女」出演以外にも主演舞台「ハケンアニメ!」など活躍の場を広げている

18年総選挙で8位。「もっと頑張ろう」と思えた

―― 映画、舞台、写真集など、AKB48グループ以外の活躍の場が増えています。18年に行われたAKB48グループの選抜総選挙では8位にランクインし、初めて上位16人の「選抜」入りしました。このことで知名度が上がって追い風が吹いた面もあるように思いますが、ご自身ではどう分析していますか。

大場: やはり総選挙8位というのは大きかったなと思いますね。この「地獄少女」も総選挙で8位になった直後の18年秋に撮りました。「背中を押してもらった」というか、やはり「8位という順位を自分が持っている」ということが自信に変わったからこそ写真集も出したいという意欲に変わりましたし、舞台も「やりたい」と思っていたものにたまたま出会えた、ということはあります。偶然と、8位という「看板」がついたことの自信で「もっと頑張ろう」と思えた気持ちの両方だと思います。でもやっぱり、偶然も大きいかなと思いますね。

―― 運を手繰り寄せるのも力のうちだったりしますからね。大場さんが8位を勝ち取って参加した楽曲が「センチメンタルトレイン」(18年)です。この曲が18年9月の「うたコン」(NHK)で披露された際は、出演者全員がアップになって簡単な紹介文が出ました。大場さんは「座右の銘は『人の本気を笑わない!』」。調べた限りでは、初出は17年の総選挙の開票イベントのスピーチです。当時の順位は26位で、目標の「選抜」に入れず「悔しいです。『人の本気を笑わない』、これは私を常に支えてくれるスタッフさんと決めた合言葉です」と話していました。これには、どんな思いを込めていたのですか。

大場: 若い子に限らず、最近は本気になって頑張っている熱い人たちを結構笑ってる人たちが多いと、ふと思ったんですよ。自分も確かに笑う側だったというのもありますが、ある時に一生懸命やっている人たちが一番かっこいいんじゃないかなと気づいて、どんなに小さな目標でも一生懸命やっている人の方が応援したいと思うし、そういう風に熱く何かをやっている人になりたい、という思いを込めました。私はその当時、真面目にしっかり向き合って総選挙で上位を目指したいと決めて、日ごろの活動もそうですが、目の前のことを一つ一つ真剣に一生懸命バカみたいに熱くやってそれを成功させたり、一喜一憂を経たりして人が大きくなっていくと感じていました。そこで、その(17年の総選挙に臨むまでの)1年間は特に
「人の本気を笑わない、自分も本気になるし、周りの人も見て笑わない。誰がどんなに熱く頑張っていても笑わずにそれが正しいと思って、応援したり応援されたりして頑張っていこう」
という気持ちを込めて、ひとつのスローガンとしてスタッフさんやマネジャーさんと頑張っていました。ただ、これは表に出しておらず、ファンの皆さんにも伝えていませんでした。17年の総選挙では色々頑張りましたが及ばず、そこで「ファンの人の前で公に言って、一緒に本気で戦ってほしい」という意味を込めて、総選挙の(開票イベントの)スピーチで言いました。なので、周りのメンバーにも言っていなかったんですよ。スピーチで「人の本気を笑わない」という言葉を初めて聞いたメンバーの何人かは刺激を受けてくれたそうなので、言ってよかったと思います。この反応を聞いて、私自身も「本気で頑張ろう」という思いを新たにしましたね。

総選挙開催見送りで「ファンの人と会えなかったのは寂しかった」

―― 17年の総選挙の前に「真面目にしっかり向き合う」ことを決めたことが座右の銘につながったとのことですが、何かきっかけはあったのですか。

大場: SKE48が10周年を迎える年で、明るく頑張っていこうという年でもあったので、周りを気にしていても仕方ないと思って、今自分がいる場所、見える景色を信じて本気でやるしかないと思ったのがきっかけですね。

―― 17年に沖縄で行われた総選挙では、悔しい思いをしたわけですが、18年にSKE48の拠点でもある名古屋で行われた総選挙では、初の選抜入りを果たして活躍の幅も広がりました。19年は初めて開催が見送られましたが、そのことで活動はどのように変わりましたか?

大場: ちょっと寂しかったですね。毎年(開票イベントがある)6月のためにファンの人も私たちも、とにかくお互いに気持ちを一緒に合わせて、それこそ本気で戦ってきました。それがなくなってしまってちょっと距離が開いてしまった、なかなか会えなくなってしまったという感覚でした。

―― 確かにイベントが減るとファンとの触れ合いは減りますね。数少ない機会が握手会でしょうか。

大場:その握手会も、ゴールデンウィークから無くなっちゃったんですよ。選挙シングルっていうものが無くなったので(編注:例年は総選挙の投票券と握手券が封入されたAKB48のシングルが5~6月に発売されるが、19年は発売されなかった)。ファンのみなさんと会えなかったのは寂しかったですね。

―― そう考えると、来年は総選挙は復活してほしいですか?

大場: えー、どうなんですかね。でも、10回やったという意味では、確かに一定の役割は終えたのかなと私は思います。私も今年でデビュー10年なので、10年続けるのは本当に色々と大変なことが沢山あっただろうと思うので、そういう意味では、素直に「お疲れ様」とも言えます。ただ、本当に総選挙で人生が変わる子もいるし、私もそうだったので、「あってほしいな」という気持ちもあります。

―― 「人の本気を笑わない」という大場さんの言葉を聞いて刺激を受けた後輩メンバーもいました。

大場: ですよね。私は総選挙でステップアップできましたが、「じゃあ来年」と意気込んでいた子たちのことを考えると、あってほしいなと思いますね。

2020年に総選挙開催なら「出ます」、目標は「神7」

―― 総選挙は最近は立候補制で、毎年「誰が出馬するか」が話題になります。仮に2020年の開催が決まった場合、大場さんはどうしますか。

大場: 出ます。

―― 断言ですね。18年の総選挙では、目標順位として上位7人の「神7(セブン)」を掲げていました。20年の総選挙でも神7を目指すということですね。

大場: はい、そうです。

―― そうなると、AKB48グループのメンバーとしてもソロとしても、活躍の幅が広がりそうです。「AKB48は『夢への通過点』」という見方がある一方で、グループ総監督の向井地美音さん(21)のように、「AKB48自体が自分の夢」だと考える人もいます。大場さんはどちらの立場に近いですか。

大場: どちらにも近くありません。今はお芝居がやりたいという気持ちがありますが、私が今アイドルを続けている理由は「ライブが好き。歌って踊りたい。」これひとつなんですよ。卒業してしまったら歌って踊る機会はなかなかないと思うので、私としては今やりたいことをやっている、ただそれだけなんですよね。「夢への通過点」という気持ちはわかりますが、私としては「なにかこれ一個に」という決断はしていないです。

―― 今はいろいろやりたいわけですね。

大場: 今やりたいことをやる。この先もお芝居をやりたいのか、それこそ歌って踊りたいのか...。急に本を書きたくなるかもしれません。何かを365日感じて生きていたら、いろいろと人は思うことが変わってくると思うので、その時の自分の気持ちに正直に生きていきたいと思います。

卒業時期決めて逆算して活動するのは「もったいない時間」

―― 人によって様々ですが、「将来は女優になりたい」などと明確に目標を決めている人もいます。今のお話をうかがっていると、大場さんは全然そういうことはなくて、SKE48からの卒業とかは全然視野に入れていらっしゃらない、ということでしょうか。

大場: 卒業はいつかはするものだなと思っていますが、卒業の時期を決めて、そこから逆算して「それまでにこれをやって、これをやって、じゃあここら辺で発表して...」というのは、自分の人生にとって楽しめない、もったいない時間だと思ってしまいます。自分は楽しんで生きていきたい人なので、自分の卒業のタイミングは、「歌って踊って、もうおなかいっぱい」となった時だと思います。

―― AKB48グループ以外の仕事が増えると「卒業フラグ」と言われますが、そんなことはない、ということですね。

大場: 今は、歌って踊ることがめちゃめちゃ楽しいです。

「実力があってトップにいるのは珠理奈さんとだーすー。それがうちの現状」

―― SKE48というグループについてもうかがいます。先ほど話題になったNHKの「うたコン」のように、地上波の全国放送の番組はファン以外の人にも知ってもらえる貴重なチャンスですが、SKE48としてではなく、AKB48の楽曲メンバーとして出演せざるを得ないことが多いのが実情です。AKB48がテレビ番組に出る際のメンバーは「AKB48メンバー+姉妹グループメンバー」という構成ですが、最近はAKB48メンバーの比率が上がっているように感じます。そういった中で、どうすればSKE48は48グループ内で存在感を増すことができると思いますか。
AKB48のシングルでは、SKE48の須田亜香里さん(28)やHKT48の田中美久さん(18)が、常連に近い存在です。総選挙の結果を反映したシングルでは、大場さん以外にも古畑奈和(なお)さん(23)や惣田紗莉渚(さりな)さん(26)などSKE48から多くの人が参加しますが、それ以外の楽曲では、必ずしもそうではありません。例えば「サステナブル」(19年9月発売)では、SKE48から選ばれたのは松井珠理奈さん(22)と須田さんの2人でした。その上、松井さんが体調不良で休養したため、メディアに登場したSKE48メンバーは須田さんだけだという状態が続きました。

大場: 完全にわたしの個人的な思いですが、どこのグループも実力主義だとは思うんですよ。SKE48は特にそうだし。AKB48も最近そうなってきていると思います。「期待枠」(編注:今後の活躍が期待できる若手が抜擢されることが「期待枠」と呼ばれることがある)もありますが、それはAKB48の期待枠であって、SKE48の期待枠ではありません。その分、AKB48シングルのNMB48とかが入ってるところを(SKE48メンバーが)勝ち取るには実力がないとだめなんです。現状実力があってトップにいるのは珠理奈さんとだーすー(須田さん)。それがうちの現状。博多(HKT48)は田中美久ちゃんっていう若い子が選抜。でもそれは期待とかではなくて、実力で入っている、ただそれだけだと思うんです。

「SKE48をもっと輝かせていかなきゃいけないという意識が高い子が多い」

―― では、SKE48の若手はどうすれば露出できるのでしょうか。

大場: SKE48は若い子をちゃんと抜擢しているし、SKE48が若い子を育てていかなきゃいけないと思っているのと同じで、AKB48も先のことを考えていると思います。SKE48をもっと輝かせていかなきゃいけないという意識が高い子が多いので、SKE48で必死に頑張っているあまりAKB48で実力を出すことに追いついていない子たちがいるのは確かだと思います。AKB48の番組に出られる機会も少ないので、若い子たちが必ずしもAKB48のファンの方々に知ってもらっているわけではありません。AKB48シングルのカップリング曲にSKE48の若い子が抜擢されているというのはあるので、そこでいかに名前と顔を知ってもらって、応援してもらえるかが大事だと思います。自分たちのグループでまず代表メンバーになってからAKB48を目指す、と思っている子たちが多いと思います。まずはSKE48の代表に、という思いが大きいのだと思います。

―― そういったコースに乗っているのは、7月発売の「FRUSTRATION(フラストレーション)」でセンターに抜擢された古畑さんあたりでしょうか。

大場: 古畑は若手じゃないですね...。古畑はきっと実力がつけば須田とか珠理奈さんみたいにいつでも選抜に入れると思います。でも、見え方は変わらないと思いますよ。古畑も7~8年やっていて、NMB48の白間美瑠(22)と同じくらいのキャリアです。

松井珠理奈は「加入前からずっと見てきた人だし、大スターで憧れの存在」

―― 一方で、SKE48発足時から「顔」として活躍しているのが珠理奈さんです。珠理奈さんはキャリアこそ大場さんより長いですが、大場さんよりも5つくらい年下でもあります。大場さんは「AKB48グループ プロフィール名鑑2018」で、「尊敬する先輩」として珠理奈さんを挙げていて、18年6月掲載のORICON NEWSのインタビューでは、珠理奈さんのことを「先頭を走って引っ張ってくれている、SKE48の『将軍』」だと表現しています。大場さんにとって、珠理奈さんはどんな存在ですか?

大場: 芸能界って不思議なもので、年齢はあまり感じなくて、歴で先輩だと思うので、そこに関しては「年下だから」というのはありません。加入前からずっと見てきた人だし、大スターで憧れの存在です。私が気づかないこともすごく気づくし、そういうのを見ていると、やはり経験の違いだと思います。どんな場面でも言葉選びがすごく素敵で、感受性とか、やはりすごいなって思います。私にはそこまでの言葉は出なかったし考えられなかった。そういう部分で尊敬しています。

―― グループの屋台骨としての存在感は大きいですね。先日、静岡と横浜でのコンサートが発表されました。運営会社の株主向けコンサートと合わせると、実質「横浜アリーナ 2days」(20年3月14~15日)です。SKE48のコンサートとしては、かなり大規模です。

大場: そうですね。久しぶりの関東の大規模会場ですね。ですが、私たちは昔ながらの「48ルール」で、サプライズ発表されたものは本当にみなさんと同じレベルでしか知らされていません。おそらく来年にならないと詳細は分からないと思いますが、横浜アリーナは高柳明音(27)の卒業コンサートでもあるので、どんな形であれ、とにかく楽しいコンサートにしたいです。全員で立てるステージなので、例えば「大きな会場になったとしても会場全体のお客様をどう楽しませるか」など、色々なアイデアを出していきたいと思います。

―― ドキュメンタリー映画「アイドル」(18年)では、ナゴヤドームでのコンサートを目指すことが描かれていました。横浜アリーナの次は、14年以来のナゴヤドーム単独公演が目標ですね。

大場: そうですね、やっぱり名古屋が本拠地のアイドルグループなので、一番大きなナゴヤドームに、本当は毎年立てたらいいと思います。ですが、なかなか今は難しいので、実力がそこまでついたら、ナゴヤドーム公演をSKE48単独でやりたいというのは、ずっとありますね。

大場美奈さん プロフィール
おおば・みな 1992年生まれ。神奈川県出身。2009年にAKB48メンバーとしてデビューし、13年にSKE48に加入。18年の選抜総選挙では8位。映画、ドラマ、舞台に活躍の場を広げ、19年秋には「ハケンアニメ!」で舞台初主演を務める。