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WBCはネリに「厳罰」を与えるのか 転級直後に「即世界ランク入り」の可能性も

   ボクシングのWBC世界バンタム級1位ルイス・ネリ(24)=メキシコ=の体重超過問題が大きな波紋を広げている。2019年11月23日(日本時間24日)に米ラスベガスで予定されていた対エマヌエル・ロドリゲス(27)戦で、ネリの体重超過により試合が中止された。この一戦はWBCバンタム級の挑戦者決定戦と銘打たれたもので、勝者は王者ノルディーヌ・ウバーリ(33)=フランス=との指名試合が予定されていた。

   前日計量で規定の118ポンド(約53.5キロ)を1ポンド(約450グラム)オーバーする「失態」を犯したネリ。日本をはじめとし、世界のボクシングメディアから批判が集中するなか、挑戦者決定戦を承認したWBCはネリへの具体的な処罰を決定していない。今後、WBCが何かしらの処分を下すとみられるが、日本のボクシングファンが望むような厳罰が下されるかどうかは疑問である。

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再計量の意志見せず、金銭交渉で試合成立を...

   世界的な舞台でネリが体重超過したのは、2018年3月の山中慎介氏とのタイトル戦以来2度目となる。今回はノンタイトル戦ということで、前回と多少事情は異なるものの、ネリの行動はより悪質だといえるだろう。山中戦では1度目の計量で約2.3キロオーバーし、再計量で約1.3キロオーバーした。今回は450グラムと、数字的には少ないものだが、再計量の意志を示さず、陣営は金銭交渉によって試合を成立させようとしたという。

   前回の体重超過でWBCがネリに対して下した処分を時系列で追ってみる。まず前日計量が行われた時点で規定通り体重超過でネリの王座ははく奪された。試合翌日の3月2日にWBCはネリのファイトマネー凍結を決定し、無期限の資格停止処分を科すことを公表した。WBCは本部のあるメキシコで8日までにネリの事情聴取を行い、9日に発表した最新の世界ランキングからネリを除外した。

   一度は無期限の資格停止処分を科す声明を出したWBCだが、2018年6月18日にネリを6カ月の資格停止とすることを新たに発表した。停止期限は18年9月1日まで。世界戦のリングに上がるようなトップレベルのボクサーの試合間隔は通常3カ月から半年で、6カ月間の資格停止処分に関して、ボクシング関係者から「キャリアに影響を及ぼすことはない」との見方が多かった。実際、ネリは10月6日に早くも復帰戦を行っている。しかも、復帰戦の舞台は世界戦に次ぐタイトル戦とされるWBCシルバー王座戦だった。

処分解除の比嘉はバンタム級7位にランクイン

   復帰戦に勝利してシルバー王座を獲得したネリは、WBCが発表した11月の最新ランキングで早速世界4位にランクインした。当初、同級の暫定王座決定戦出場を決めていた井上拓真(23)=大橋=が世界4位にランクしていたが、ネリが割り込むようにしてランクインしたため井上は5位に後退。シルバー王座を獲得したとはいえ、わずか1試合でいきなり4位にランクされた。

   ボクシングの世界ランキングに関しては、各団体によってそれぞれ一定の規定、方針が存在するとみられるが、一方で不透明な部分があることも否めないだろう。WBCの最新ランキングには、元WBC世界フライ級王者・比嘉大吾(24)=白井・具志堅スポーツ=がバンタム級7位にランクインしている。比嘉は昨年4月の世界戦で体重超過により王座をはく奪されライセンスの無期限停止処分を受けた。今年10月に処分が解除されたものの、バンタム級での実績がないまま世界ランク入りした。

   2度にわたり体重超過の「失態」を犯したネリは、バンタム級にとどまるのは不可能とみられ、スーパーバンタム級もしくはフェザー級への転級が見込まれる。世界戦でないとはいえ、それに準ずる試合がキャンセルとなり、しかも2度目の体重超過ということもあり、前回同様の処分を科される可能性が考えられる。ただ前述したように、6カ月程度の資格停止処分では大きな意味を持たず、ランキング作成の曖昧さを指摘するファンは多い。WBCには毅然とした対応が求められる。