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入管収容中に精巣がん、痛み訴えるも「3カ月半放置された」 摘出手術のクルド人男性、国を提訴

   茨城県牛久市の東日本入国管理センターに収容中、睾丸に痛みを訴え続けたにもかかわらず、3カ月間半以上、放置されたとして、トルコ国籍のクルド人、ムスタファさん(26)=埼玉県=が2019年11月26日、国を相手に慰謝料など832万5000円を求める訴訟を東京地裁に起こした。

   ムスタファさんは外部の病院で、悪性の精巣腫瘍との診断を受けた。提訴後、都内で開かれた会見で、「悲しかった。(入管は)ひどすぎる」と心境を明かした。

  • 会見を開いたムスタファさん(2019年11月26日編集部撮影)
    会見を開いたムスタファさん(2019年11月26日編集部撮影)
  • 会見を開いたムスタファさん(2019年11月26日編集部撮影)

「彼がハンガーストライキをやらなければ、さらに収容が続いていた」

   訴状などによると、ムスタファさんは2012年2月10日来日した。難民認定申請は今回で2回目。クルド人のため、国籍のあるトルコに帰ると迫害を受ける恐れがあるとしている。一時的に拘束を解く仮放免の許可を受けていたが、ある一件で罪に問われ、2016年5月に30万円の罰金刑を受け、東京入国管理局(現:東京出入国在留管理局)に収容された。17年6月、茨城県の東日本入国管理センターに移された。

   ムスタファさんは、収容中の19年4月ごろから睾丸の痛みを訴え続けた。19年5月、センターの医師から「病名不明なので外の病院に行かせる」と告げられた。医師は、精巣腫瘍の疑いを持っていなかったとみられる。しかし約3カ月半にわたり、外部病院に行く機会はなかった。

   診療が受けられない中、無期限の長期収容が続くことに耐えられず、抑うつ症状が出た。解放を求め、19年8月にハンガーストライキを始めた。センターからは8月下旬ごろ、ムスタファさんに、ハンガーストライキを止めれば仮放免を許可する方針を示されて止めた。9月、ムスタファさんは仮放免許可された。

   仮放免を許可された後の9月8日、住居地近くの診療所で診療を受けた。同月10日に総合病院に行ったところ、右精巣腫瘍と診断された。9月13日に手術を受け、右精巣を摘出した。腫瘍は悪性でがんだったが、現時点で転移は確認されていないという。

   代理人の大橋毅弁護士は、提訴後の会見で「彼がハンガーストライキをやらなければ、さらに収容が続いていた。医療に関する放置も続いていたことが確実な状態でした。こういう状態で強制送還するのは、人道としても許せない」と訴えていた。

   J-CASTニュースでは26日、東日本入国管理センターへの電話取材を試みたが、担当者は「本日不在」とのことだった。

(J-CASTニュース編集部 田中美知生)