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富士通の株価にみる「追い風」と「課題」

   富士通の株価が、さらなる上昇基調を続けている。2019年1月4日に今年の最安値をつけて以降、上昇基調にはあったが、10月29日に20年3月期連結決算の業績予想を上方修正した後、さらに投資家の期待が高まった格好だ。ただ高値警戒感や成長力に懐疑的な見方も残り、今後も上がり続けるかどうかは不透明だ。

   株価に影響を与えた上方修正の内容は、営業利益は従来予想から300億円上積みして前期比22.9%増の1600億円、純利益は従来予想から200億円増額し、前期比19.5%増の1250億円と見込んだ。

  • 今後の株価の動向に注目が集まる(画像はイメージ)
    今後の株価の動向に注目が集まる(画像はイメージ)
  • 今後の株価の動向に注目が集まる(画像はイメージ)

「筋肉質」な体質に

   国内企業の間で人員減などを背景に事務作業を効率化するシステム投資が盛んになっていることを追い風に、富士通の現在の主力であるシステム事業が伸びている。米マイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ7」が2020年1月にサポート終了となることに伴うパソコンの更新需要も業績を底上げしている。電子情報技術産業協会(JEITA)によると、19年4月から10月までの国内パソコン出荷台数は579.5万台に上り、前年同期比52.7%増に達している。

   また、これまでに半導体や液晶といった不採算事業を売却してきたことにより、売上高のサイズは縮まったものの、利益をあげやすい「筋肉質」な体質になっていることも増益に効いている。

   同時に発表した2019年9月中間連結決算は、売上高が前年同期比0.3%減の1兆8287億円、営業利益は25.4%減の710億円、純利益は21.5%減の636億円と減益だった。ただ、前年に退職給付関連の利益を計上した反動減の影響が大きく、実態としては通期のような追い風のもとで業績は改善しているとみられている。

   10月29日の発表を受けて野村証券は目標株価を1000円引き上げ1万1000円とした。リポートには「(デジタル化を高度に進める)DX(デジタルトランスフォーメーション)関連や基幹システム刷新の需要拡大を取り込んでおり、サービス事業の質的な改善が見込める」と記した。

「好材料は概ね出尽くした印象」との分析も

   上方修正が歓迎された翌30日の株式市場で株価は一時、前日終値比7.9%(712円)高の9712円まで上昇、株式合併考慮後で12年9カ月ぶりとなる高水準を回復した。実は兄弟のように歩んできたNECも同じ10月29日が決算発表だったが、翌30日の株式市場で一時6.6%(305円)安の4325円と3カ月ぶりの安値まで下げて明暗を分けた。NECは、中間決算の内容は良かったのだが、通期の業績予想を据え置いた。追い風が吹いているのに業績改善を見込めないとして投資家の売りを招いてしまった。

   しかし富士通も10月31日から4営業日連続で終値が下落した。利益確定の売りが出る中、ゴールドマン・サックス証券が11月5日付で「割高感」などから富士通の投資判断を5段階で真ん中の「中立」から4位の「売り」に格下げしたことも響いた。方向感が揺れる中、その後は、逆にSMBC日興証券やモルガン・スタンレーMUFG証券などが目標株価を引き上げたことで見直し買いが入って上昇に転じた。11月13日から7連騰を演じ、7連騰目の21日の終値は1万15円と1万円の大台に乗った。22日には約13年ぶりの高値となる1万60円、さらに12月4日には一時、1万300円をつけるなど、勢いを持続している。

   ただ、目標株価を引き上げたSMBC日興証券でも、リポートでは「好材料は概ね出尽くした印象。今後は中長期的な利益成長ドライバーの具体化を待ちたい」と記しており、さらなる成長を確信できていない。今後も株価が一本調子に上がり続けるかは見通せない状況だ。