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AbemaTVとの「食い合い」リスクは? KDDIと組んだテレ朝「動画新会社」計画を読む

   テレビ朝日とKDDIが、動画配信サービスの合弁会社を設立すると発表した。

   テレ朝といえば、サイバーエージェントと組んだ「AbemaTV(アベマティーヴィー)」で、すでに動画配信サービスを行っている。そこに来ての新会社設立で、互いが食い合う可能性はないのだろうか。

  • テレビ朝日がKDDIとタッグ
    テレビ朝日がKDDIとタッグ
  • テレビ朝日がKDDIとタッグ

共同出資会社で「ビデオパス」運営

   2019年12月12日の両社発表によると、KDDIは11日に「LDEX設立準備」なる会社を設立した。当初はKDDIの100%子会社だが、20年3月2日にKDDIの動画配信サービス「ビデオパス」の事業を新会社に承継させるとともに、2社による50%の共同出資に切り替える。

   今回の取り組みは、20年にも国内で実用化予定の次世代通信システム「5G」を背景に、テレ朝のコンテンツや訴求力と、KDDIの技術力や顧客基盤などを融合させる目的がある。テレ朝は今回の新会社設立により、定額型の動画配信サービス事業に「本格的に参入」するとしている。

   テレ朝とKDDIは、新会社設立に先駆けて、15年8月にスマートフォン向け動画配信事業の分野で、戦略的業務提携を結んでいる。ドラマの地上波放送に加えて、「ビデオパス」でオリジナルエピソードを配信する試みを皮切りに、テレビCMに連動したスマホゲーム企画を行うなどの協業を続けてきた。

Abemaにも有料課金プランがある

   先行するAbemaTVでも、KDDIとの取り組み同様、地上波番組との連動を実施している。こちらは16年4月に開局して、19年6月時点で4200万ダウンロードを記録。会見中継に強く、今年は山里亮太さんと蒼井優さんの結婚や、宮迫博之さんと田村亮さんの「闇営業釈明」をノーカットで伝えて、視聴者数の増加につなげた。

   AbemaTVは、テレビ放送のように各チャンネルに分かれ、それぞれに編成された番組を流すサービスだ。コンテンツがあらかじめ用意されている「ビデオパス」とは、十分すみ分けできるだろう。見逃し配信を楽しめる月額960円の「Abemaプレミアム」(19年6月時点で約45万会員)の動向も気になるが、Abemaオリジナルコンテンツがビデオパスでも流れるようにならない限り、その影響は軽微になるかと思われる。

   では、KDDIの方はどうか。KDDIは18年5月、Netflix(ネットフリックス)と業務提携し、auとNetflixの使用料をセットにしたプラン「Netflixパック」を提供している。ただ、今のところは料金面でのつながりはあるが、コンテンツの共同制作には至っていない。テレ朝よりは動きやすい身体と言えるだろう。

通信各社、動画サービスへの目立つ注力

   高速通信が可能になる5G時代を見越してか、通信各社は動画サービスに力を入れつつある。NTTドコモは19年12月から、「ギガホ」などの契約者を対象に、「Amazonプライム」(年額4900円)が1年間無料になる特典を始めた。Amazonプライムでは、商品配達の「お急ぎ便」が無料になるほか、「Amazonプライムビデオ」も視聴でき、そこには松本人志さんが企画した「ドキュメンタル」「フリーズ」をはじめ、婚活バラエティ「バチェラー・ジャパン」などのオリジナルコンテンツも含まれている。

   ソフトバンクは、傘下にGYAO!(ギャオ)を持っている。テレビドラマの見逃し配信に加え、元SMAPの木村拓哉さんを起用した「木村さ~~ん!」といった独自番組もラインアップ。ソフトバンクの「動画SNS見放題」プラン、ウルトラギガモンスター+(プラス)に入っていれば、データ使用料として加算されないメリットもある。

   5Gでは最大速度20Gbps(ギガバイト毎秒)が理論値で、現状の4G回線より20倍ほどのスピードになると言われている。普及すれば、動画配信サービスもより長時間、高精細なものが求められるだろう。そんな状況下で、強力なコンテンツを持つテレビ局とタッグを組めれば、通信事業者にとってメリットは大きい。他社が追随するかに注目だ。

(J-CASTニュース編集部 城戸譲)