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グレタさん「床座り写真」で注目 ドイツ鉄道「ファーストクラス」はどんなサービス?

   スウェーデンの環境保護活動家のグレタ・トゥーンベリさん(16)がCOP25からの帰路のツイッターでの投稿をきっかけに、ドイツ鉄道(DB)のアカウントとちょっとした「舌戦」になった。

   スペイン・マドリードで行われた国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)からスウェーデンへの帰途でも鉄道を利用したグレタさんだが、途中ドイツ国内での移動の様子から、DBとの騒動が発生した。

  • 欧州各国では環境意識から鉄道シフトに積極的だが、肝心の定時性は?(写真はイメージ)
    欧州各国では環境意識から鉄道シフトに積極的だが、肝心の定時性は?(写真はイメージ)
  • 欧州各国では環境意識から鉄道シフトに積極的だが、肝心の定時性は?(写真はイメージ)

途中から「座れるようになった」

   2019年12月15日、COP25からスウェーデンに帰国するグレタさんは、ドイツ鉄道(DB)の車内で床に座っている写真とツィッターに投稿、ドイツの列車はとても混雑していたとツイートした。するとDBのツイッターアカウントは同日、「親愛なるグレタさん、気候変動と闘う鉄道労働者を支援してくれて感謝します。ICE74列車を利用してくれてありがとう」「ファーストクラスの席で、クルーがあなたにどれだけ親切に接してくれたかに触れてくれれば、さらによかったでしょう(編集部訳)」と投稿。さらにDBのサイト上で、カッセルからハンブルクまで座っていたと明かした。このやりとりを見ていたツイッターユーザーからは、実はグレタさんはファーストクラスに乗車していて、床に座っていた写真はパフォーマンスではないか、という批判が生じた。

   ところが、グレタさん側はこれに対して同日、スイスのバーゼルからの列車が運休になり、2本の列車を乗り継がねばならず、その車内では床に座らざるを得なかったと反論した。そしてゲッティンゲンから座れるようになったとツイートしている。

   ICE74という列車は、本来はスイスのチューリヒからドイツのキールまで向かう列車だった。途中バーゼル、フライブルク、バーデンバーデン、カールスルーエ、マンハイム、フランクフルト、カッセル、ゲッティンゲン、ハノーファー、ハンブルク、ノイミュンスター、キールと停車する。グレダさんはこの列車にフランクフルトから乗り、ゲッティンゲンから座ったと主張しているが、DBはカッセル~ハンブルク間でファーストクラスにいたと説明しており、主張が食い違っている。

   他方、グレタさんは釈明ツイートの最後に「列車が混雑しているのは鉄道移動のニーズが高い証拠」とツイートし、DBも「ドイツ鉄道は、(グレタさんの)気候変動との闘いにおける支援に心から感謝します」とサイトで表明している(いずれも編集部訳)。

「『DBはよく遅れる』のが常識」

   ところで、DBの「ファーストクラス(一等車)」「クルーの対応」とはどういうものだったのだろうか。DBのICEなどの高速列車は一等車と二等車があり、一等車は二等車より座席幅が広く、軽食サービスが受けられてラウンジを利用できるなどのメリットがある。この件を報じた英メディア「ガーディアン」のサイトによれば、グレタさんは父親と同乗しており、クルーは「LIEBLINGSGAST」というチョコレートを配ったと報じている。これは通常は一等車の乗客専用のサービスだが、列車が遅れれば二等車の乗客にも配られるものだそうだ。

   一方今回グレタさんが遭遇したように、ドイツの鉄道は突然の遅れや運休が珍しくない。ヨーロッパの鉄道事情に詳しいフリーライターの新田浩之さんによれば、「数十分単位の遅れは珍しくなく、ドイツ人にとっては『DBはよく遅れる』のが常識になっています」「また大都市同士を結ぶ列車は混雑するので、特に二等車は事前に予約することも定着しています」という。グレタさんとDBの舌戦をウェブで報じた米メディア「スタートリビューン」は「かつては時間に正確だったドイツ鉄道だが、近年は遅れや突然の運休、高額な運賃で批判にさらされている(編集部訳)」とも述べている。発端となったグレタさんが床に座っている写真も、元をたどればDBの突然の運休のせいかもしれない。

   グレタさんは12月17日、「驚くべきことに、メディアはCOP25が失敗に終わったことより、ティーンエイジャーの鉄道の旅に興味を持っているようです」とツイートし、メディアがこの舌戦を頻繁に報じていることに疑問を表明している。