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井岡一翔、王座統一戦の相手は VSロマゴンも現実味...20年は勝負の年に

   ボクシングのWBOスーパーフライ級タイトル戦が2019年12月31日、東京・大田区総合体育館で行われ、王者・井岡一翔(30)=Reason大貫=が、同級1位ジェイビエール・シントロン(24)=プエルトリコ=を3-0の判定で下し初防衛に成功した。今後は王座統一戦を基本線に世界4階級制覇のローマン・ゴンザレス(ニカラグア)との対戦を視野に入れており、2020年は勝負の年となりそうだ。

    初防衛戦の序盤は階級の「壁」に苦しんだ。身長で5.5センチ、リーチで12センチ上回るサウスポースタイルの挑戦者がフットワークを駆使して王者をあしらった。鋭い右ジャブで井岡の出鼻をくじき、長い距離からいきなりの左が容赦なく井岡の顔面をとらえる。約6年ぶりとなるサウスポーは懐が深く、容易に接近戦を許さない。序盤は我慢のボクシングが続いた。

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左ボディーで流れ変えた

   挑戦者に傾きかけた流れを変えたのは左ボディーだった。顔面にパンチを受けながらも下がることなく、左ボディーを打ち込んだ。1ラウンドから意識的にボディーにパンチを集め、これが徐々に効果を発揮する。ボディーを意識する挑戦者のガードは自然と下がり気味となり、顔面へのパンチが当たりだす。中盤以降、挑戦者は明らかにボディーを嫌い、スタミナを奪われていった。

   距離感も絶妙だった。自身の体格を最大限に活用するように挑戦者は左右にステップを踏み、リングを回り続けた。対する井岡は常に最短距離で挑戦者を追った。この試合で挑戦者は井岡の何倍も動き回り、これがスタミナの消耗を招いた。終盤に入ると挑戦者のパンチのキレはなくなり、体ごと井岡に突っ込み、当てるだけのパンチが目立ち、スタミナの差は明らかだった。

   ランキング1位の挑戦者を退けて初防衛に成功。井岡が次なる目標に掲げるのが王座統一で、WBC王者フアン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)との対戦を希望している。その一方で、ロマゴンが井岡との対戦を熱望しており、WBO世界フライ級王者・田中恒成(24)=畑中=は、階級をスーパーフライ級に上げる計画もあり、WBOのフランシスコ・バルカルセル会長は、井岡VS田中戦の実現を望んでいる。

ロマゴンが世界ベルトを巻く可能性は...

   現在のスーパーフライ級の情勢を見てみると、井岡が対戦を望むWBC王者エストラーダ(メキシコ)は手の負傷により長期の休養を強いられる模様だ。そのエストラーダと今年1月に対戦を予定していたWBA王者カリド・ヤファイ(英国)の次戦は未定となっている。井岡が早期の統一戦を望むならば、WBAのヤファイかIBF王者ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)が現実的だろう。

    一方でロマゴンが年内にスーパーフライ級のベルトを巻く可能性がある。ロマゴンはWBAの最新ランキングで2位にランクインしており、1位が暫定王者なので事実上のトップとなり、ヤファイに挑戦する可能性が出てきた。また、WBCはエストラーダの負傷により暫定王座が設定される可能性もあり、その場合、WBCでもランク2位につけるロマゴンが優先的に暫定王座決定戦に出場する権利を得る。

   日本のボクシングファンが待ち望んだ井岡VSロマゴン戦は王座統一戦として行わる可能性が出てきた。ロマゴンがヤファイに挑戦して王座を獲得すれば、WBAとWBOの王座統一戦として試合が開催される。そうなれば井岡が望む形でロマゴンとの対戦が実現することになる。

井岡VSロマゴン、もし実現すれば展開は

   12月23日に横浜アリーナで約1年3カ月ぶりのリングに上がったロマゴンは、フィリピンの格下ボクサーを2回TKOで仕留めた。ロマゴンはスーパーフライ級に階級を上げてからの世界戦では1勝2敗と、関係者からスーパーフライ級は限界であると指摘する声もあるなか、ロマゴンは改めてスーパーフライ級で王座返り咲きを目指すことを公言。標的を井岡とヤファイに絞り、今年2月末に復帰第2戦目を予定している。

   スーパーフライ級で井岡VSロマゴン戦が実現した場合、試合展開はどうなるのだろうか。井岡の最近のファイトをみると、より攻撃的なスタイルになっている。このスタイルになってから攻撃力は増したが、一方でまともに被弾する場面が多くなった。相手の正面に立ち、なおかつパンチの届く距離で戦うためカードしきれないパンチが顔面にヒットする。シントロン戦でもまともに左ストレートを食らう場面が何度も見られた。

   スーパーフライ級では体力面での優位性に欠けるとされるロマゴンだが、パンチの正確性や威力は世界トップクラスのものがある。シントロンと比較すると、経験値を含めすべてが上回っている。井岡はロマゴンと拳を交えるにあたって、シントロン戦とは異なる戦略をとるだろうが、シントロン戦のように何度もまともにパンチを浴びれば、命取りになりかねないだろう。

   13歳でボクシングを始め、今年3月で31歳となる井岡。ボクサー年齢からいえば決して若くはない。本人も理解しているのだろう。井岡がこだわるのは王座統一。エストラーダ、ヤファイ、ロマゴン...。2020年の井岡から目が離せない。