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新型コロナウイルス「製薬会社が広めた」「ワクチンは開発済」 根拠不明の情報拡散、30か国でファクトチェック進む

   新型コロナウイルスによる肺炎の問題では、根拠不明の情報が世界中で拡散している。「新型ウイルスの作者」なる人物の画像が出回ったと思えば、ウイルスは「生物兵器」だという陰謀論、「酢酸がウイルスに効く」といったものまで、その内容は様々だ。

   こういった状況を受け、ファクトチェックの専門機関「国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)」が主導し、世界30か国・地域の48機関が協力してファクトチェックを行う取り組みが始まっている。

  • 米国のファクトチェック団体は「新型コロナウイルスは特許を取得している」という書き込みを「正しくない」と判定した
    米国のファクトチェック団体は「新型コロナウイルスは特許を取得している」という書き込みを「正しくない」と判定した
  • 米国のファクトチェック団体は「新型コロナウイルスは特許を取得している」という書き込みを「正しくない」と判定した

「根拠」の特許は別のウイルスのもの

   IFCNのウェブサイトによると、取り組みが始まったのは2020年1月24日から。その直前から、世界中で根拠不明な情報が拡散してきた。米国では、1月22日頃から「新型コロナウイルスは実験室で作成されて特許を取得しており、ワクチンも開発されている」といった主張が拡散された。フェイスブックやツイッターの書き込みには、根拠として特許公報へのリンクが紹介されているものもある。だが、少なくとも3つのファクトチェック団体が、特許は今回のコロナウイルスに関するものではなく、SARS(重症急性呼吸器症候群)などの別のウイルスに関するものだと指摘。現時点では新型ウイルスへのワクチンはない、と結論づけている。

   ブラジルでも、「製薬会社がワクチンを売るために新型コロナウイルスを広めた」とする書き込みが拡散。やはり「根拠」は特許で、米国と同様の理由で「誤り」だと判定された。

   メキシコでは、「生化学エンジニアで新型ウイルスの作者」のものだとされる顔写真が、CNNのロゴ付きで拡散。CNNのウェブサイトにはそのような写真は掲載されておらず、写真はスペイン人のユーチューバーのものだった。

台湾では「酢酸はウイルスに対して効果的」説

   台湾では、「酢酸はウイルスに対して効果的だ。水で薄めて消毒する空間に噴霧する」とする説が広まったが、ファクトチェック団体は専門家への取材を踏まえて「酢酸を噴霧しても消毒にはならない」とした。「生理食塩水でウイルスが殺せる」として、うがいを勧める書き込みも広がったが、同様に「生理食塩水は殺菌効果がない」と指摘している。

   ベネズエラ、コロンビア、ウクライナでは、自国でも新型ウイルスの感染者が出たとする書き込みが拡散。各国の団体が現地の官公庁や医師会に確認した結果として「誤り」だとしている。こういった状況に、IFCNのウェブサイトでは

「医療当局が確認していない場合、新コロナウイルスによる感染や死亡に関する書き込みをシェアしてはならない」

などと呼びかけている。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)