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一帯一路にはまだまだ負けない? 今も進化するシベリア鉄道とバム鉄道

   アジアとヨーロッパを結ぶ鉄路と言われると、最近なら中国が掲げる巨大経済圏構想「一帯一路」を思い浮かべるだろう。「一帯一路」の主軸とも言える「中欧班列」は、年々利用が急増、その存在感を強めている。

   その激しい「追い上げ」を受けている感はあるが、ロシアのシベリア鉄道やバム鉄道もアジアとヨーロッパを結ぶ役割を過去も、そして現在も果たしている。今回はシベリア鉄道の貨物輸送やバム鉄道の概要を紹介したい。

  • シベリア鉄道の主役はあくまでも貨車。主要駅には長編成の貨物列車が停車している
    シベリア鉄道の主役はあくまでも貨車。主要駅には長編成の貨物列車が停車している
  • シベリア鉄道の主役はあくまでも貨車。主要駅には長編成の貨物列車が停車している

実際にシベリア鉄道に乗った筆者の感想は...

   中国は日本に「一帯一路」の参加を熱望しているが、日本はシベリア鉄道が大好きなのかもしれない。国土交通省は1月10日にシベリア鉄道を使った日露間の精密機械の実証輸送を追加実施すると発表した。シベリア鉄道の利便性向上を通じて海上輸送、航空輸送に並ぶ第三の輸送手段としてロシア運輸省やロシア鉄道と協力するとしている。

   また、同省は2019年度に実施したシベリア鉄道による日露欧間の貨物輸送事業の結果も公表した。それによると、輸送品質は概ね良好とした一方、一部貨物においては軽度な揺れや突発的な衝撃が記録されたという。

   筆者は2018年に極東のウラジオストクからモスクワまでシベリア鉄道完乗を達成した。もちろん客車と貨車で条件は大きく異なるが、シベリア鉄道の乗り心地は国土交通省の発表とまったく同じである。つまり、路盤は整備されており、線路の整備不良による揺れは感じられなかった。たまに連結器から発生したと思われる大きな揺れはあったが、かつてのブルートレインのような発車の度に揺れることはない。日本人が思っている以上にシベリア鉄道の近代化は進んでいる。

バム鉄道の近代化も進んでいる

   「シベリア鉄道」は聞いたことがあっても「バム鉄道(バイカル・アムール鉄道)」は馴染みがないだろう。バム鉄道はシベリア鉄道のタイシェトと極東のソビエツカヤガワニを結ぶ全長4287kmの路線である。タイシェトはシベリアにあり、バイカル湖よりも西にある。ソビエツカヤガワニから3駅先にあるヴァニノとサハリンはフェリーで結ばれている。バム鉄道は「第二シベリア鉄道」とも呼ばれ、アジア側からヨーロッパ方面へつながる重要な路線である。また、沿線には豊富な天然資源が眠っている。

   しかし、バム鉄道は複線化率約25%、電化率約30%にとどまり、急勾配や急カーブも存在する。ロシア鉄道は2000年代から、ロシア軍の協力も得ながら長距離トンネルの設置や路盤整備、複線化などの輸送力増強に努めている。今後もプーチン政権はシベリア鉄道、バム鉄道の輸送力増強を続けることを発表している。

   ところで、旅客列車は1日1本しか設定されていない区間が多く、全区間を走破する列車はないため、全線走破は難しいだろう。

(フリーライター 新田浩之)