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右肘手術後なのにサインねだられ続け...「いたっ」 SB甲斐野に心配の声、球団は「深刻でない」

   プロ野球・ソフトバンクの甲斐野央投手(23)とファンとの交流を映した動画が、SNS上で物議をかもしている。

   右ひじの手術を終えた甲斐野投手が、ファンの酷ともいえる要求に応える姿が収まっており、撮影者は「下手をしたら怪我の回復を邪魔するようなことになってしまいます」と危惧する。

   一方、球団は「球団も本人も騒ぎになっていることは承知しております」と話すも、問題視しておらず、ネット上での反応に困惑しているという。

  • 当該動画の1シーン
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「もうやめましょ、だってもう失礼、俺が」

   東洋大から18年にドラフト1位で入団した甲斐野投手。新人ながら65試合に出場と大車輪の活躍で、19年11月の世界野球「プレミア12」で日本代表にも選ばれた。

   しかし各報道によれば、右肘内側側副靭帯の一部損傷が見つかり、20年2月18日には右肘のPRP(多血小板血漿=しょう=)注射を受けた。

   動画はその翌日に撮影された。甲斐野投手がファンサービスに応じた際の一幕だ。ペンを差し出され、色紙にサインをする姿から始まる。

   冒頭、右手に持ったペンでサインを書き始めると、「いたっ」と声を上げた。「ホンマにこんなんすよ」と話す甲斐野投手は、腕が痛いためか、手首を固定してペンを走らせる。ファンは「ごめんね、頑張ってね」と声をかける。

   詰めかけたファンに黙々とサインをし続けたが、終盤に「もうやめましょ、だってもう失礼、俺が」と甲斐野投手。うまく字が書けない申し訳なさから、切り上げようとしたとみられるが、ファンは「大丈夫、大丈夫」「全然大丈夫」と続行を望んだ。

松坂大輔の「悲劇」連想

「ファンの方が甲斐野投手に差し入れを渡したら、他のファンの方が甲斐野投手に色紙を差し出してサインをねだっていました」

   撮影した20代の女性はJ-CASTニュースの取材に、当時の状況をこう説明する。

   動画の撮影前、甲斐野投手は「肘が伸びない、ペンのキャップも外せないから、(きちんと)書けないっすよ」と話したという。しかし、"サイン会"は強行された。

   女性は「私自身、同じファンとしてすごく残念で悲しいです。自分さえサインをもらえれば良い、という方がいるせいで、下手をしたら怪我の回復を邪魔するようなことになってしまいます」と懸念し、「たしかに間近でサインを頂いたり、写真を撮ってもらうことももちろんですが、何よりも選手が元気にプレイして活躍することが最高で最大のファンサービスではないのかな、と私は思います」と話す。

   動画がツイッターで投稿されると、約1万リツイート(拡散)され、ファンの姿勢を問う声が相次いだ。19年2月に当時中日だった松坂大輔投手(39、現西武)が、ファンと接触時に右腕を引っ張られて負傷した"悲劇"を思い出す人も少なくなかった。

   球団はどのように受け止めているか。福岡ソフトバンクホークス広報室は20日、取材に対し、「本件、球団も本人も騒ぎになっていることは承知しております」と書面で回答した。

   ただ、ファンサービスは体調を最優先で行うため、「ファンの皆様がご心配いただいているほど、深刻なものではありません」とし、「甲斐野投手としても、練習後多少余裕があったためサインに応じたが、肘が張っておりうまくかけず照れ隠しも含めて冗談半分で交わしたやり取りがこのように大きく取り上げられ、(球団、本人の双方とも)かなり戸惑っております」と続ける。

ファンへの要望聞くと...

   球団では、選手の安全には十分配慮しているという。

「ホークスのキャンプは、選手導線の道幅が大変広く、文字通り『柵』があります。全くファンと接触しないままの移動が可能で、トラブル防止策を講じるのは、『選手が自らファンに近づく場合』になります。サインを求めて、ファンが殺到することもありますので、警備などが押さないように注意しますが、前述のように、身に危険が迫れば、選手がその場を離れれば済むという話ではあります」(広報室担当者)

   最後に、ファンへの要望を聞くと、次のように回答した。

「ホークスの春季キャンプには、2月ひと月で33万人以上(2019年実績)のファンがお越しになり、大変熱気にあふれておりますが、その全員のお願いにお答えすることはできません。それなのに、サインを複数枚取得し転売している方がいるようです。他のファンも選手本人も悲しい思いをしますので、おやめいただきたいです」

   なお、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染予防のため、ソフトバンクは2月20日、サインや握手などのファンサービスを当面自粛すると発表した。