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北朝鮮「感染者なし」、国際社会は心配の目 ロシアは検査キット寄付、赤十字も声明...

   日本は韓国で新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、北朝鮮では現時点でも感染者は発生していないと主張している。

   隣国との航空便と鉄道の運航を停止する水際対策が奏功している可能性もあるが、医療体制が脆弱な分、いったん関連事例が起こる被害は甚大になるとみられる。それだけに、国際社会からは心配の目を向けられている。

  • 北朝鮮メディアは連日のようにコロナウイルス対策について報じている
    北朝鮮メディアは連日のようにコロナウイルス対策について報じている
  • 北朝鮮メディアは連日のようにコロナウイルス対策について報じている

労働新聞も感染防止策を連日報道

   北朝鮮の国営メディアは、韓国で感染が広がっていることや、北朝鮮での感染防止に向けた取り組みを連日のように報じている。2020年2月27日の労働新聞の「新型コロナウイルス感染症を徹底的に防ごう」と題した記事では、

「悪性伝染病である新型コロナウイルス感染症が急速に伝播されるのと関連して、複数の科学研究機関では伝染病を事前に防ぐための研究事業を活発に広げている」

   として、北朝鮮国内には流入していないとの立場を強調。医学生物学研究所と薬学研究所で抗ウイルス薬の開発を進めたり、化粧品工場で消毒製品を生産したりする事例を紹介している。感染すると重症化するリスクが高い高齢者については、

「特に老人がこの伝染病に感染しないようにするための防疫事業に、より深い関心を向けている」

として、特段の注意を払うように呼び掛けている。

ロシア外務省は北朝鮮の要請に応じて...

   北朝鮮国内で感染者が確認されない段階でも、北朝鮮には支援が必要だとする動きが広がっている。国際赤十字・赤新月社連盟は、北朝鮮への支援物資について制裁からの適用除外を国連安保理に申請し、認められたことを2月24日に発表。

「防護服や検査キットといった、感染爆発に備えるための不可欠な物資の差し迫ったニーズがあると承知している」

として、適用除外が認めらえたことで「北朝鮮国民が人道支援を受けられる」と評価した。

   ロシア外務省は2月26日、北朝鮮の要請に応じて新型コロナウイルスの検査キット1500個を寄付したと発表。発表の中で、

「この取り組みが、北朝鮮での感染症侵入阻止に役立つことを願っている」

とコメントしている。

「人口の43%以上が栄養失調状態」「新型コロナに、さらに脆弱に」

   北朝鮮の人権状況を調べる国連特別報告者のトマス・オヘア・キンタナ氏は2月26日、北朝鮮と国際社会に対して、感染拡大防止のために協力するように求める声明を発表した。声明では、入国管理を厳格化したり、国連機関に支援要請したりする、北朝鮮のこれまでの対応について「支持する」する一方で、

「北朝鮮の外部は(感染に)対応できるようにしておくべきだし、北朝鮮政府は医療専門家と人道活動の担当者に対して、完全かつ制限のないアクセスを認め、情報へのアクセスの制限を緩和すべきだ」
「これ以上孤立を深めることは答えではない」

   などとして、北朝鮮側に門戸を開くように求めた。この背景にあるのが、北朝鮮の劣悪な衛生状態だ。声明では、この様子を次のように説明した。

「多くの北朝鮮国民、特に地方に住んでいる人は、保健、水、衛生に関する権利を完全には享受できていない。人口の43%以上が栄養失調状態で、教育や保健施設の半数には、十分な水供給と衛生施設がない。情報へのアクセスが限られていることもあって、新型コロナウイルスに対して、さらに脆弱になっている」

   こういった状況を踏まえて、

「今回のコロナウイルスの危機で、北朝鮮国民の人権問題を政治的合意ができるまで先送りすることはできないということが改めて明らかにになった」
「北朝鮮の人権支援団体は、浄水器、衛生キット、井戸を掘るための資金といった命を救うための、無害とみられる供給の輸入に関する許可を得る必要がある」

として、早急に制裁を見直す必要性に言及している。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)