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金与正氏、青瓦台を「低能」「三歳の子ども」 妹に韓国罵倒させた、正恩氏の狙いは

   北朝鮮の朝鮮労働党・金正恩委員長の妹で、党第1副部長の与正(ヨジョン)氏が2020年3月3日、国営メディアを通じて、青瓦台(韓国大統領府)を非難する声明を出した。

   これまで与正氏は、正恩氏の随行員のひとりとして国営メディアに登場することが多かったが、自らの名義で声明を出すのは初めて。

   声明のタイトルは「青瓦台の低能な考え方に驚愕」。与正氏は18年2月に行われた平昌五輪開会式出席のために韓国を訪問し、青瓦台で文在寅(ムン・ジェイン)大統領とランチミーティングをしている。その与正氏が韓国に対して厳しい声明を出したことで、南北関係の冷え込みが改めて浮き彫りになったと言えそうだ。

  • 朝鮮労働党第1副部長の金与正氏(写真中央)は2018年には青瓦台を訪れて文在寅(ムン・ジェイン)大統領(写真左)とランチミーティングまでしていた。それが今では「低能」呼ばわりだ(写真は韓国大統領府(青瓦台)ウェブサイトから)
    朝鮮労働党第1副部長の金与正氏(写真中央)は2018年には青瓦台を訪れて文在寅(ムン・ジェイン)大統領(写真左)とランチミーティングまでしていた。それが今では「低能」呼ばわりだ(写真は韓国大統領府(青瓦台)ウェブサイトから)
  • 朝鮮労働党第1副部長の金与正氏(写真中央)は2018年には青瓦台を訪れて文在寅(ムン・ジェイン)大統領(写真左)とランチミーティングまでしていた。それが今では「低能」呼ばわりだ(写真は韓国大統領府(青瓦台)ウェブサイトから)

韓国の「遺憾の意」は「せん越なふざけた行為」

   与正氏が出した声明は、3月2日に北朝鮮が短距離弾道ミサイルを発射したことを受けて青瓦台が「遺憾」の意を示したことに反発する内容だ。北朝鮮の国営メディアは弾道ミサイルの発射を「人民軍前線砲兵の火力戦闘訓練」だと報じており、与正氏は

「われわれは、誰かを脅かすために訓練を行ったのではない。国の防衛のために存在する軍隊にとって訓練は主な事業であり、自衛的行動だ」

と主張。韓国の「遺憾の意」を「せん越なふざけた行為だと言わざるを得ない」と非難した。与正氏は弾道ミサイルを発射した北朝鮮側の「訓練」と米韓軍事演習を対比させながら、3月に予定されていた米韓軍事演習が中止になったことについて、

「南朝鮮を席巻する新型コロナウイルスが延期させたもので、いわゆる平和や和解と協力に関心もない青瓦台の主人らの決心によるものではないということは、周知の事実である」

と切り捨てた。

   その上で、「非論理的で低能」「三歳の子どもと大きく変わらない」といった激しい言葉を交えながら罵倒を続けた。

「われわれは軍事訓練をすべきであり、お前たちはすべきではないという論理に帰着した青瓦台の非論理的で低能な思考に『強い遺憾』を表明しなければならないのはまさに、われわれだ。この言葉に気分が非常に悪くなるだろうが、われわれが見るには実際に青瓦台の行動と態度が三歳の子どもと大きく変わらないように見える」

「白頭山血統」の露出増やして正当性強調?

   与正氏は、「本当に遺憾でがっかりする」一方で、文大統領が直接北朝鮮を非難したわけではないことについては「幸いだと言うべきだろう」とも論評。わずかに対話の余地を残しつつ、皮肉交じりに談話を締めくくった。

「実に、すまない比喩であるが、怖気づいた犬がもっと騒々しく吠えると言われた。ぴったり誰かのように···」

   北朝鮮では、白頭山を抗日ゲリラの拠点が設けられた「革命の聖地」と位置付けており、金日成主席の直系血族を「白頭山血統」と呼ぶ。1月26日には、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の叔母にあたる金敬姫(キム・ギョンヒ)氏の動静が6年ぶりに報じられた。金敬姫氏は故・金正日総書記の妹で、13年12月に処刑された張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長の妻。張氏の処刑にともなって金敬姫氏も失脚したとみられていたが、復権が確認された。与正氏も当然「白頭山血統」の一員。与正氏名義の声明を出すことで、「白頭山血統」の露出を増やして正当性を強調する狙いもありそうだ。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)