J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

村上世彰氏系ファンドVSレオパレス 株主総会は乗り切るも火種はまだ...

   賃貸アパート大手のレオパレス21の臨時株主総会が2020年2月27日、東京都渋谷区で開かれ、旧「村上ファンド」の流れをくむ投資ファンド「レノ」が株主提案を行った。

   レノは、ニッポン放送株を巡るインサイダー取引で2006年に逮捕され、2011年に執行猶予付きの有罪判決が確定した元通産官僚の村上世彰氏が今も関わるファンドだ。株主提案は否決されたが、かつての村上ファンドを想起させる「問題企業VSもの言う株主」の対立が、しばらく続きそうだ。

  • レオパレスには厳しい局面が続きそう(イメージ)
    レオパレスには厳しい局面が続きそう(イメージ)
  • レオパレスには厳しい局面が続きそう(イメージ)

村上氏「側近」を取締役に...否決

   レノには旧村上ファンドの関係者が在籍する。レノはレオパレスの施工不良問題が発覚し、株価が大幅に下落した2019年3月以降、同社株を買い進めた。その結果、同じく村上系の共同保有者と合わせ、レオパレスの発行済株式総数の16.77%(2月17日現在)を握る第2位の大株主となった。筆頭株主は、村上氏とは関係のない投資会社「アルデシアインベストメント」で、17.12%(同)を保有している。

   今回、レノが臨時株主総会の開催を求め、村上氏の側近とされる大村将裕氏を取締役に選任するよう株主提案したが、賛成したのは議決権を有する株主の44%にとどまり、否決された。大村氏は清水建設と住友信託銀行などを経て、レノに入社している。レオパレス側は「施工不備問題を速やかに解決する具体策すら示していない」などと、選任に反対していた。

   レノはレオパレスの施工不良物件の改修工事が当初計画通りに進まず、業績予想の下方修正が続いていることから、「現経営陣は施工不備問題を解決する能力が欠けている」と批判し、大村氏の選任を求めていた。

   レノは当初、レオパレスの10人の取締役全員の解任を求める株主提案を行う予定だったが、一般株主やアパートのオーナーから「経営の混乱が長期化し、かえって改修工事が進まなくなる」などの批判が出たことから、方向転換した。レノは臨時株主総会で「(全取締役の解任を求めた)根本的な考え方は変わっていないが、10人解任というのは、あまりにも過激すぎた」と、撤回の理由を述べた。

改修完了、見えない出口

   レオパレスは当初、レノが求める臨時株主総会の開催に難色を示していたが、レノ側の主張を一部受け入れる形で社外取締役を2人追加選任する提案を行った。こちらは議決権を有する株主の56%の賛成を得て、可決された。これで同社の取締役は12人となり、半数以上の7人が社外取締役となった。

   レオパレスが「もの言う株主」から一時的にせよ、全取締役の解任を求められたり、臨時株主総会の開催を求められたりするのは、レオパレスの施工不良物件が増え、改修の完了が見通せない悪循環に陥っているからだ。

   同社は2018年4月、1994年から1995年にかけて施工したアパートに不備があったと公表。その後、1996年から2009年にかけて施工したアパートが耐火性を満たしていないなど、建築基準法違反の疑いがあることが次々と判明した。

   レオパレスは2019年2月、天井の耐火性に問題がある641棟の7669人に転居を求めたため、入居者の間で混乱を招いた。このため国土交通省は3月、建築基準法違反が確認された全棟の改修を同年夏までに終えるよう指示。同社は6月までに全物件を調査し、当初10月までとしていた改修工事の完了を「夏前に前倒しする」と表明した。ところが、全約4万棟を調べたところ、施工不良の物件が次々と拡大。改修工事は計画通りに進まず、10月末になって改修工事の完了を2020年12月末に先延ばしすると発表した。

今後も対立は必至

   これまで同社の調査で不備が見つかった物件は、全体の約8割に当たる2万9923棟に上る。このうち、耐火性など「明らかな施工不良」が見つかったのが1万3587棟で、安全性の点から改修工事を急がなくてはならないが、2020年1月末時点で改修に着手したのは4440棟、実際に完了したのは942棟に過ぎない。

   レノはこの点について、今回の臨時株主総会で「当初計画から1年以上の遅延という信じがたいスケジュールだ。施工不備問題について、信頼できる明確なゴールが示されていない」などと、経営陣を批判。「事業の分割、再編も視野に入れた企業価値の最大化」を求めた。

   レオパレスは「解体型買収の実現によって、レノは自己の利益を追求する可能性がある」と主張。レノの介入が再建へのマイナスになることを懸念した株主の支持をひとまず得た形だ。しかし、施工不良物件の改修が遅れているのは紛れもない事実で、この点に質問が及ぶとレオパレス経営陣の歯切れは悪い。同社は臨時株主総会を何とか乗り切ったが、6月の定時株主総会に向け、レノとの対立が続くのは間違いない。