J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

新型コロナが「口座維持手数料」導入を加速!? 銀行に預金してるだけでお金が...

   預金しても利息はスズメの涙にもならないのに、銀行口座を持っているだけで維持費をとられる。そんな事態に預金者は泣き寝入りするしかないのだろうか――。

   2016年2月に日本銀行が実施に踏み切った「マイナス金利」政策による収益悪化を背景に、地方銀行などを中心に、銀行の「口座維持手数料」の導入がじわじわと進んでいる。

   そうしたなか、新型コロナウイルスの感染拡大への懸念から、株価が急落。2020年3月3日、米国が先手を打って連邦準備制度理事会(FRB、米国の中央銀行にあたる)が緊急利下げを発表。日銀に追加の金融緩和に踏み切るよう、プレッシャーをかけたかのようだ。

  • 3月、日銀は追加の金融緩和に踏み切るのか?(写真は、日本銀行本店)
    3月、日銀は追加の金融緩和に踏み切るのか?(写真は、日本銀行本店)
  • 3月、日銀は追加の金融緩和に踏み切るのか?(写真は、日本銀行本店)

銀行悲鳴! 新型コロナでマイナス金利「深堀り」か?

   新型コロナウイルスによる金融市場の動揺で、米FRBが緊急の追加利下げに踏み切った。利下げ幅は0.5%と通常よりも大きく、政策金利を1%から1.25%の範囲とした。

   3月3日に、主要7か国(G7)の財務相と中央銀行総裁が電話会議後の共同声明で、新型コロナウイルスの世界経済への影響を抑え、持続的な成長の達成と下振れリスクに備えるため、適切な政策手段を用いる意思があることを表明。米国の緊急利下げは、この協調姿勢を受けたものだ。

   一方、日銀の黒田東彦総裁も、「適切な金融市場調節や資産買い入れの実施を通じて、潤沢な資金供給と金融市場の安定確保に努めていく」との異例の談話を、2日に公表しているが、日銀は18、19日に開く金融政策決定会合で、「追加の金融緩和に踏み切らざるを得なくなった」(証券アナリスト)との見方は支配的だ。

   注目は、その緩和策にある。米FRBが早めに、しかも利下げ幅を大きくしたことで、「マイナス金利の深掘り」が、浮上してきたようなのだ。

   マイナス金利政策は、導入から4年が過ぎたものの、当初の目的とされた「物価上昇率2%」のインフレターゲットの達成目標には、ほど遠いのが現状。そのため、今回の会合では「深堀り」(現行のマイナス0.1%のマイナス幅を拡大する利下げ)は見送られると思われてきたが、「景気判断の下方修正は仕方がないとしても、打つ手をきっちり打っていることを国際的にアピールする必要があります。東京五輪・パラリンピックのこともあり、政府の意向が働いている可能性があります」(前出の証券アナリスト)と話している。

預金は銀行で「厄介者」扱い

   金融当局のこうした動きに警戒感を強めているのが銀行だ。マイナス金利政策の影響で、銀行の収益力は弱まっている。ボディブローのように効いてきた。

   金利を「ゼロ」にすれば、会社はお金を借りやすくなるが、使い道のないお金は借りない。仮に売り上げを伸ばそうと設備投資をしたくても、先行きが不透明な状況では投資しにくい。そもそも、銀行は返してもらえそうにないお金は貸さない。

   一方、業績のいい会社は「安全運転」経営なので借金はしないし、利益を貯め込んでいる。お金は潤沢にあるから、銀行の出番がない。さらには、マイナス金利で「利ザヤ」が薄いので、「薄利多売」の銀行はお金を貸しても収益を上げられないわけだ。

   そんな銀行の「ツケ」を、預金者に押し付けようというのが「口座維持手数料」だ。預金者に口座維持手数料を求めるやり方は、欧米の銀行では珍しくなく、日本の銀行が「ガラパゴス」化しているとの指摘もある。

   たしかに銀行では預金口座の維持、管理のために一定のコストがかかっている。どの銀行も一冊の通帳につき、毎年200円の印紙税を負担。そのほか、口座管理のシステムや人件費、またマネーロンダリング(資金洗浄)のチェックなどのコストもかさむため、口座の残高にかかわらず、一口座あたり年間数千円の維持費がかかるとされる。

銀行に預金が集まらない日がやって来る?

   すでに、一部の銀行では預金者に口座維持手数料を徴求しはじめた。りそなホールディングス傘下のりそな銀行と埼玉りそな銀行をはじめ、関西みらい銀行(導入当時は近畿大阪銀行)や十六銀行(岐阜県)、2018年の開業時から導入しているローソン銀行、19年には西京銀行(山口県)と続き、この4月からは栃木銀行が導入する予定だ。

   また信用金庫でも、播州信金(兵庫県)や岡崎信金(愛知県)、岐阜信金のほか、4月からは埼玉縣信金や巣鴨信金(東京都)、瀬戸信金(愛知県)などが導入を予定している。

   ある地銀関係者は一般論としたうえで、「預金コストが高まっていることは事実です。付加価値の高いサービスを提供することで、お客様のご理解を得たうえで必要な手数料をいただいていくことが基本的な考え方です」と話す。

   とはいえ、自身の生き残りが怪しくなると、預金者利便などおかまいなしで支店を閉鎖したバブル経済崩壊後の金融危機の時代を預金者は忘れていない。すでに、メガバンクではATMコーナーですら、共同化したり閉鎖したりとその数を減らしている。

   銀行に預金が集まらない日がやって来るのは、そう遠くないかもしれない。