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森法相「震災で検察官が逃げた」野党時代からの持論だった 一方「定年延長との関係性」には異論も

   「震災で検察官が逃げた」と森雅子法相が国会で答弁して物議を醸しているが、野党時代に国会で追及していたほどの持論だったことが分かった。

   とはいえ、そのことを黒川弘務東京高検検事長の定年を延長する根拠としたことについては、「意味不明だ」との声が相次いでいる。

  • 持論を元に説明する森雅子法相(参院公式サイトの会議録情報から)
    持論を元に説明する森雅子法相(参院公式サイトの会議録情報から)
  • 持論を元に説明する森雅子法相(参院公式サイトの会議録情報から)

参院の予算委員長も、「質問に的確、適切に」と苦言

   森氏の発言が出たのは、2020年3月9日の参院予算委員会で、定年延長の理由について、政府が「社会情勢の変化」などと説明したことに対し、野党統一会派の小西洋之氏(無所属)がどんな変化なのかをただしたときだ。

   森氏は、国家公務員法に定年制度が設けられた1981年のときに比べての変化について、こう説明した。

「例えば、東日本大震災のとき、検察官は、福島県いわき市から、国民が市民が避難していない中で、最初に逃げたわけです。そのときに身柄拘束をしている十数人の方を理由なく釈放して逃げたわけです。そういう災害のときも、大変な混乱が生じると思います」

   さらに続けて、もう1つの変化だと言いたかったとみられている次のような説明を加えた。

「また、国際間を含めた交通事情は、飛躍的に進歩し、人や物の移動は容易になっているうえ、インターネットの普及に伴い、捜査についてもですね、様々な多様化、複雑化をしているということを申し上げておきたいと思います」

   ここで、金子原二郎予算委員長が「法務大臣、簡潔に」と注意して、審議がいったん中断した。しばらくして、金子委員長が「答弁者は、質疑者の質問に的確、適切にお答えいただきますようお願いします」と森氏に苦言を呈すると、議場から拍手が沸いた。

「優秀な検察官にはトップで残ってほしい」の意味?

   この予算委ではその後、森氏の別の答弁に移ったが、3月11日の衆院法務委員会で、立憲民主党の山尾志桜里氏が、検察官が震災で逃げたという発言内容は事実かどうかを政府にただした。

   これに対し、森氏は、自民党が野党だった時期に国会質問で同様な発言をしたと明かしたうえで、理由なく逃げたという部分については、「個人の見解だった」と釈明した。そして、この日の参院予算委員会で、森氏は、「不適当なので、発言を撤回する」と表明し、12日には、安倍晋三首相から厳重注意を受けた。

   一方、野党側は、ウソを言って検察を貶めたとして、森氏の辞任などを求め、国会が紛糾している。

   森氏が野党時代にした国会質問を参院公式サイトで検索できる会議録で調べると、福島地検いわき支部が震災直後に「捜査遂行が困難」などの理由で勾留中の容疑者らを処分保留で釈放したことについて、何度も政府の見解をただしていた。

   例えば、森氏は、2011年11月24日の参院法務委員会では、福島県選挙区選出の立場から、「残念ながら、被災地で避難区域に政府が指定をしていないのに国家機関が住民を置き去りにして逃げた、その前提として多くの被疑者を処分保留のまま釈放した」などと当時の平岡秀夫法相に関係者の処分などを求めていた。

   こうした持論を元にした森氏の今回の答弁について、ツイッター上などでは、「その話が検察官の任期延長と何の関係があるんだ」「全然、意味が解らない・・・」などと困惑の声が上がった。森氏が弁護士でもあることから、詭弁とも言える独特の論法なのではないかとの指摘もあった。

   一方で、逃げ出すような検察官もいるから優秀な検察官にはトップとして残ってもらって厳しく指導してほしい、といった意味ではないかなどと推測する向きも出ている。

   発言の意図について、森氏の国会事務所にJ-CASTニュースが12日夕に取材すると、「こちらには何も情報が入っていないので、詳しいことは分かりません。法務省ですかね」と秘書が答えた。そこで、法務省の刑事局総務課に取材したが、国会が紛糾している状況ですぐに回答するのは難しいとのことだった。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)