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「鎖国」北朝鮮からラジオ出演 インドネシア外交官が伝えた「市場の有望性」

   隣国との航空便と鉄道の運航を停止して鎖国状態が続く北朝鮮で、首都平壌に駐在するインドネシアの大使が2020年3月23日にラジオ番組に電話出演し、現地の様子を伝えた。

   自分たちの状況について「安全」だとする一方で、それよりも熱を込めて語ったのが北朝鮮は「インドネシアにとって有望な市場」だという点だ。インドネシア製品の輸出には国連による制裁が障害になっているとして、中長期的な緩和も訴えた。

  • 平壌のインドネシア大使館からラジオ番組に電話出演するベルリアン・ナピトゥプル大使(写真はインドネシア大使館のツイッターから)
    平壌のインドネシア大使館からラジオ番組に電話出演するベルリアン・ナピトゥプル大使(写真はインドネシア大使館のツイッターから)
  • 平壌のインドネシア大使館からラジオ番組に電話出演するベルリアン・ナピトゥプル大使(写真はインドネシア大使館のツイッターから)

スカルノ大統領と金日成主席以来の友好関係

   両国は1964年に国交を樹立。スカルノ大統領(当時)はこの年に平壌を訪問し、翌65年には金日成主席がジャカルタを訪問するなど、長年にわたる友好関係を続けている。北朝鮮は2020年2月初めから国外との往来を事実上絶ち、平壌に駐在する外交官も自宅や大使館内での隔離生活を強いられた。隔離期間が終わった3月9日に一部の外交官が国営高麗航空でロシア極東のウラジオストクに向けて脱出したが、インドネシアの関係者は国内にとどまった。

   そんな中で、インドネシアのベルリアン・ナピトゥプル大使が20年3月23日、インドネシアの公共ラジオ国際放送「インドネシアの声」に平壌から電話出演した。大使によると、平壌にインドネシア人は25人おり、そのうち23人が大使館勤務。残り2人は国連児童基金(ユニセフ)事務所とシリア大使館の勤務で、全員が「健康で安全な状態」だと話した。インドネシア大使館のSNSでは、大使館員が写真講座やエクササイズに臨んだり、座席の間隔を開けて食事したりする写真などが投稿されており、特段の緊迫感は伝わってこない。ユニセフ勤務のインドネシア人は医師で、この医師を通じて北朝鮮の衛生状況を把握したり、マスク、消毒剤、栄養剤などを提供したりしているという。

食料、清涼飲料水、調味料、香辛料、コーヒー、生活雑貨、化粧品...

   大使が新型コロナウイルスの問題以上に力を入れて話したのが、北朝鮮は「インドネシアにとって有望な市場」だという点だ。大使は、インドネシア産の食料、清涼飲料水、調味料、香辛料、コーヒー、生活雑貨、化粧品などのブランド名を挙げながら

「北朝鮮国民はこういったものが好きだ。しかし問題は、いつも市場にあるわけではないことだ。継続的な供給がないからだ」

と述べ、「問題」の内容を(1)インドネシアから直接の出荷ができない。多くの商品は第三国や第三者を経由している(2)現地(北朝鮮)の経済についての情報が限られている。国連制裁の影響で銀行経由の送金ができない、などと説明。当面は北朝鮮への投資や貿易は難しく、スポーツをはじめとした社会文化の分野で交流を深めるべきだとした。

   ただ、出演の最後にインドネシア国民に対するメッセージを求められると、大使は

「インドネシアは長年の友好国で、両国ともに大きなポテンシャルがある。ただ、国連制裁といった障害はある。それでも、交渉と他国、特に米国との関係正常化を通じて、貿易では多くのチャンスがある。将来的には制裁が緩和され、国境が開かれることを望んでいる、インドネシアのビジネスパーソンには、この国を訪問して機会を探ってほしい」

などと述べた。大使館については「市場調査など役割を果たしたい」と話し、中長期的なインドネシア製品の売り込みに意欲を見せていた。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)