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「ロックダウン」なら鉄道どうなる 欧米の事例と日本の「計画」は?

   東京都では新型コロナウイルスの感染者が増え続けており、小池百合子都知事が会見で「首都封鎖」「ロックダウン」に言及して以降、首都圏の住民の間では東京が封鎖されるのではないか?という不安が生じている。

   もしロックダウンとなった場合交通機関はどうなるか、既に市民の外出に大幅な制限がかかっている欧米の事例を参考に推察する。

  • 鉄道への影響は?
    鉄道への影響は?
  • 鉄道への影響は?

欧米は減便も「全面停止」に至らず

   結論から言えば、既にロックダウン状態の欧米の都市でも鉄道・バスといった公共交通が全面的に止まっているわけではない。医療・警察・物流・小売などで働く人のために交通の運行は続けている。

   各都市のケースを具体的に見てみると、ニューヨークでは20以上ある地下鉄の運行系統のうち、複数の系統を全面的に運休、その他の路線でも一部区間を運休させていることが多い。これは、ニューヨーク地下鉄では同じ区間に複数の運行系統が走っていることが多いためで、代替ルートもニューヨーク州都市交通局(MTA)のサイトで確認できる。特に急行系統の運休が目立ち、東京でいえば、中央・総武線各駅停車の運転区間を三鷹から高尾まで延長する代わりに快速電車を運休したり、埼京線を池袋以北だけの運転として山手線と並行する区間(池袋~大崎)を運休させたりするような措置である。

   ドイツ・ベルリンでは地下鉄は10分間隔の運転を維持、バスも市中心部の路線は10分間隔で運転されている。ロンドンの地下鉄は一部の駅を封鎖し、かつ10分~20分間隔に本数を減らして都心部の運行を継続している。バスの24時間運行も継続中だ。

   一方、パリではより厳しい減便が行われている。パリ市内を走る地下鉄(メトロ)と鉄道(RER)は各線で運行本数を通常の30~50%に減らし、運行時間も6時~22時と短縮、一部の駅を封鎖している。バスやトラムも同様に減便と運行時間短縮がなされた。

   欧州最多の感染者と死者が出ており、深刻化しているイタリアではミラノの地下鉄と路面電車は運行を継続、ローマでも運行時間の短縮にとどまっており、各国で温度差はあるものの全面停止には至っていない。各都市の交通事業者は不要不急の外出で公共交通を使わないことを呼びかけつつ、公共インフラの維持のために運行を続けている。

   都市交通を停止し、完全に移動手段までも封じたのは最初に感染爆発が起きた中国・武漢くらいである。武漢市では1月23日に市内の都市交通と市外を通じる鉄道・バス・飛行機を全て遮断したが(3月28日に再開)、中国国内でも武漢以外の都市では交通の停止にまでは至っていない(ただし、マスク着用・検温などの制限がある)。

   日本の新幹線のような、長距離の交通機関はどうか。こちらも欧米では減便がありつつもドイツ鉄道(DB)、アメリカのアムトラック、フランスのSNCFは長距離路線の運行を続けている。ただしSNCFでは主要駅を無人化するなど、一部サービスの停止が行われている。

新型インフル特措法で「行動計画」を策定

   首都圏などの市民の関心は日本の鉄道がどうなるかだが、実は既に2012年成立の新型インフル特措法に基づき、JR各社や大手私鉄は感染症の流行に備えた業務計画を策定している。その計画では各社とも「輸送の継続」を目標とし、運行停止は想定していない。東海道新幹線を運行するJR東海も「基本方針」で、「新型インフルエンザ等が国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるよう、新型インフルエンザ等対策の適切かつ迅速な実施に万全を期することとし、もって旅客の輸送を適切に行うものとする」としている。

   4月1日に、もし緊急事態宣言が出された場合の運行について取材を行ったところ、東京メトロは「まだ『緊急事態宣言』でどのような指示が行政からあるかも不明だが、原則として通常通りの本数を維持する方針」と答えている。またJR東海は「新型インフルエンザ等対策業務計画に基づいて行動することになるだろう」と答えた。

   特に都市部では容易に列車本数を減らせられない事情もある。減便すると混雑率が増して感染リスクを高めるためだ。実際にロンドンでは地下鉄を減便した結果、少ない列車に乗客が集中してかえって混雑が増し、感染の危険が増すと市長が警告する事例があった。東京メトロも「減便すると感染リスクが上がる恐れがあるので、通常の本数を維持したい」と答えている。

   3月下旬に小池都知事が「首都封鎖」に言及した時は「東京が封鎖される」と様々な噂が飛び交ったが、欧米同様に公共交通機関の本数はキープされることになるだろう。

(J-CASTニュース編集部 大宮高史)