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新型コロナ、消費にどう影響? 2月のデータから読み解くと...

   世界を襲う新型コロナウイルス。

   日本でも感染者が徐々に増え始めていた2020年2月は、中国を中心とした訪日外国人が激減した一方、マスクなどの感染予防に関係する商品が品薄になったり、外出を控える「自粛ムード」に伴って自宅内で過ごす時間が増えたりして、消費を巡る前例のない動きが相次いだ。

  • ドラッグストアでは品薄が相次いだ(2月29日撮影)
    ドラッグストアでは品薄が相次いだ(2月29日撮影)
  • ドラッグストアでは品薄が相次いだ(2月29日撮影)

まだ国内では本格化前だったが

   2月初めの国内の新型コロナウイルスの感染者数はまだ20人程度で、1万人を超えた中国が「震源地」として頻繁に報道されていた。しかし、2月も終わりに近づくと日本国内の感染者数は横浜港に寄港したクルーズ船の乗客も含めて1000人に近づき、死者も10人を超えた。27日には全国の小中学校などに対して、安倍晋三首相が3月2日からの臨時休校を突如、要請する意向して、国内でもようやく深刻さが認識されつつある頃だった。

   そんな2月は、消費に関連する各業界がまとめた売上高が明暗を分けた。この数年、増加が続いた訪日外国人の「インバウンド」の恩恵を最も受けていた百貨店はコロナショックの直撃を受け、既存店売上高が前年同月比で12.2%の大幅減。5カ月連続のマイナスだが、その幅が跳ね上がった。

   特に訪日外国人による売り上げの割合が高かった都市部の落ち込みが激しく、東京は12.8%減、大阪は21.0%減で、感染が先行していた北海道の札幌は25.8%減だった。新型コロナウイルスに加えて、記録的な暖冬だったこともあり冬物衣料の売れ行きが鈍っており、衣料品の落ち込みは15.9%に達した。3月に入ると減少幅は更に拡大しており、業界関係者は「リーマン・ショックや東日本大震災を超えるのでは」と悲鳴を上げる。

   一方、日常生活に近いコンビニエンスストアやスーパーマーケットでは状況が異なった。日本フランチャイズチェーン協会がまとめた2月の主要コンビニ7社の既存店売上高は同2.6%増となり、2カ月連続で前年同月を上回った。

   マスクや消毒液、ティッシュペーパーなどが品薄になるほど売れたのに加え、感染を避けようと外出を控えて自宅で過ごす「巣ごもり消費」が定着した影響で、パンや冷凍食品の売り上げが伸びた。「うるう年」で2月の営業日が前年より1日多かったこともあったが、百貨店に比べれば〝健闘〟しているのは明らかだ。

ドラッグストアでは前年同月比20%増も

   この傾向はスーパーではさらに顕著だった。日本チェーンストア協会がまとめた全国の売上高は、既存店ベースで4.1%増となり、10%への消費税率引き上げ前の駆け込み消費が起きていた2019年9月以来、5カ月ぶりに前年同月を上回った。

   ドラッグストアになるとさらにすごい。最大手のウエルシアホールディングス(HD)の2月の売上高(既存店ベース)は前年同月比20.6%増だったのをはじめ、ツルハHD7.1%増、スギ薬局20.9%増、ココカラファイン9.7%増といった具合だ。

   その後の国内感染拡大を踏まえると、2月はまだ序盤だったと言えよう。3月に入ると全国的に臨時休校が始まり、東京都や大阪府などの知事が週末や夜間の外出自粛要請したことも加わり、一部の百貨店やコーヒーチェーンが週末を臨時休業にしたり、多くの小売店が夜の閉店時間を繰り上げたりして、一部で消費が「蒸発」する動きが起きている。消費税増税で冷え込んだ日本経済に打撃を与え、政府は2月まで掲げていた「緩やかな回復」という景気認識を撤回して、「厳しい状況」に変更せざるをえなくなった。

   国際通貨基金(IMF)のリポートは、感染症が猛威を振るっている時期が少なくとも3~6カ月続く可能性があると指摘している。こうした状況だからこその新たな消費のスタイルも生まれてきており、難局を乗り越えるために小売業界の知恵が問われている。