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VR空間に「待機列」「最後尾札」も バーチャル同人誌即売会、新型コロナで動き加速

   新型コロナウイルスの影響で即売会が開催できなくなっている同人誌即売会の世界で、オンラインで作品を披露しようという動きが加速している。

   多いのはネット通販や同人ショップを介したサービスだが、VR空間で即売会を開催する試みも始まった。

  • 公式サイトより
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積まれた見本誌、参加者はアバターで

   新型コロナの猛威はおさまらず、5月に予定されていたコミックマーケット98までも中止となった。

   作品を披露する場を失った同人作家たちのために、「ComicVket 0」(コミックブイケットゼロ)の開催が急遽決定した。期間は2020年4月10日17時から12日24時までで、主催はバーチャル空間でのマーケットを運営するHIKKY(東京都渋谷区)である。

   同社ではすでにVR空間での即売会「バーチャルマーケット」を昨19年9月に開催した実績がある。

   ComicVket 0は、「VRCHAT」「cluster」「STYLY」の3つのプラットフォームアプリのいずれかを使って、バーチャル空間で出店するサークルに出会える。既にプロのイラストレーターらも参加を表明している。このうちclusterを使えばスマホからもアクセス可能だ。

   3つのプラットフォームは少しずつ機能が異なり、VRCHATでは不特定多数のユーザーが会場にいる「パブリック」モードと、ユーザー本人や友達のみがいる「プライベート」モードの選択が可能、STYLYとVRCHATは見本誌閲覧が可能、となっている。

   同人イベントの風物詩といえば、ずらりと並んだサークルスペースに見本誌が積まれている光景。これがComicVket 0ではバーチャル空間でかなり再現されており、VRの視界の中で見本誌を手に取って読むことも可能だ。そしてアバターで売り子や参加者がいるという構図になっている。

   前述のSTYLYなら現実の即売会同様大勢の参加者がバーチャル空間に現れ、「待機列」や「最後尾札」のような風物詩も見られるという、即売会の臨場感もある程度再現されている。オンラインでの参加のため海外からも24時間アクセスして作品を購入できる。

夏に「ComicVket1」も予定

   一方で、3Dの空間にまだ慣れないというユーザーの感想もあり、バーチャル空間では出展者に直接感想を送ることもできないので、リアルな「場」を介してのコミュニケーションにはまだ及ばないという印象を受ける。出展サークル数も80サークルにとどまり、現時点では普段から同人活動を行っているネットユーザー以外への話題性はまだ高くはない様子だ。

   今回は苦境の同人作家や印刷会社を応援する目的もあって急遽の開催となったため、プロのクリエイターらが中心の顔ぶれで出展となっているが、8月13日から16日にも即売会としてComicVket1を開催予定である。

   今後、新型コロナの状況次第で同人イベントもどのように推移していくか不透明だが、リアルなイベントが開催できない状況が続きバーチャル即売会という形態に慣れるユーザーが増えれば、作家とファンを媒介するツールとして定着する可能性を秘めている。