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黒川氏「進退」、産経だけ朝刊で伝えず 同じ「当事者」朝日と比べると

   東京高検の黒川弘務検事長(63)が、緊急事態宣言が出ている2020年5月1日と13日夜に賭けマージャンをしていたと週刊文春が5月20日に報じたことを受け、辞任や更迭が不可避な情勢となった。

   今回の事案で異例なのが、マージャンの相手が産経新聞の記者2人と、朝日新聞の元記者の社員だったという点だ。黒川氏の辞任の見通しを各紙が5月21日の紙面で大きく伝える中で、唯一それをしなかったのが、産経新聞だった。

  • 朝日新聞(左)と産経新聞(右)は、それぞれ紙面で自社の見解を説明した
    朝日新聞(左)と産経新聞(右)は、それぞれ紙面で自社の見解を説明した
  • 朝日新聞(左)と産経新聞(右)は、それぞれ紙面で自社の見解を説明した

朝日「極めて不適切な行為でおわび」、産経「社内規定にのっとって適切に対処」

   文春報道によると、賭けマージャンが行われたのは産経新聞のA記者の自宅。そこに産経のB記者と、朝日新聞の元検察担当記者で、今は経営企画室に所属する社員のC氏が合流したという。マージャン後、黒川氏は産経が用意したハイヤーで帰宅したという。

   文春では、賭けマージャンは「『3密』そのもの」で、国家公務員が記者と賭けマージャンしてタクシーで送迎してもらった場合は国家公務員倫理規程に抵触するおそれがあるとする人事院の見解を紹介している。

   当事者となった産経、朝日は5月21日の朝刊紙面で、自社の見解を説明した。産経は、広報部による「取材に関することには従来お答えしておりません」というコメントを踏まえた上で、井口文彦・東京本社編集局長が

「その取材過程で不適切な行為が伴うことは許されないと考えています。そうした行為があった場合には、取材源秘匿の原則を守りつつ、これまでも社内規定にのっとって適切に対処しており、今後もこの方針を徹底してまいります」

などとする談話を出した。

   朝日新聞は

「勤務時間外の社員の個人的行動ではありますが、不要不急の外出を控えるよう呼びかけられている状況下でもあり、極めて不適切な行為でおわびします」

とする広報部のコメントを載せた。

産経は単に「賭けマージャン報道」、辞任の見通しに言及せず

   ただ、黒川氏の進退をめぐる両紙の報道ぶり(いずれも東京本社最終版)は対照的だった。朝日は1面トップで「黒川検事長が辞意 賭けマージャン認める」と報じ、第2社会面(28面)に

「マージャン報道後、急転 緊急事態中、記者らと 黒川氏辞意」

の見出しで関連記事を掲載。その記事の下に「本社社員も参加、おわびします」の小見出しで、広報部のコメントを載せた。

   なお、朝日の東京最終版は「14版△」と呼ばれる。そのひとつ前の、郊外に配達される「14版」と呼ばれるバージョンでは、1面には黒川氏の話題は登場せず、第2社会面に

「黒川検事長マージャン 週刊文春報道 緊急事態中 記者らと」

という見出しの記事を載せるにとどめていた。

   対する産経の1面トップは台湾の蔡英文総統の2期目就任に関する話題。黒川氏の話題が登場したのは総合面(3面)で、見出しも「黒川検事長 賭けマージャン報道 文春『本紙記者らと今月』」。辞任の見通しについて言及はしていない。この記事の下に、「取材源秘匿は責務 不適切行為あれば対処」の見出しで、自社の見解を説明した。なお、ウェブ版では8時34分に辞任の見通しを報じている。

   他の全国紙3紙は、そろって辞任の見通しに触れている。読売新聞は1面の3番目の項目で「黒川検事長、辞任の意向 緊急事態中 マージャン報道」、毎日新聞も1面の3番目扱いで、「黒川検事長の交代検討 法務省 賭けマージャン文春報道」の見出しで報じている。日本経済新聞は政治面(4面)に

「黒川検事長 辞任論強まる 報道受け与党内でも」

と題した記事を載せている。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)