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中国、2カ月半遅れの全人代 経済成長を死守できるのか

   日本の国会に相当する中国の全国人民代表大会(全人代)が、2020年は5月22日から開幕する。新型コロナウイルスの影響から、例年と違い、2カ月半遅れての開催となり、直前に開かれる中国人民政治協商会議(政協)も21日の開催だ。

   コロナウイルスとの闘いに一段落をつけた中国だが、2020年の全人代は今後の経済運営を含め、異例の開催となっている。

  • コロナの影響で2カ月遅れで始まる全人代を中国国民は固唾を飲んで見守ってい
る
    コロナの影響で2カ月遅れで始まる全人代を中国国民は固唾を飲んで見守ってい る
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出席者は全員PCR検査、取材もカメラ経由

   中国では政治の季節になると、首都・北京の道路交通は慢性的な渋滞に急性的渋滞が加わるが、2020年はコロナの影響が重なる。

   5月中旬から交通警察による検問がいたるところで始まり、第四環状道路(四環)では日常的な渋滞に頻繁な検問が重なり、渋滞はますますひどくなっている。

   地方から上京する場合、臨時のナンバープレートを発行されるが、トラックの場合、それを付けていても昼間は北京市内に入ってはいけない。しかし、地方から北京市内入ってくるトラックは多く、警察はそれを厳しく取り締まっている。

   全人代、政協の出席者は5月中旬から北京に入り、特定のホテルに泊まりこむ。すべての人がPCR検査を受け、その検査をパスできないと全人代、政協には出席できず、会議の出席以外は、ほとんど一般市民から隔離されている。

   全人代には例年、日本を含め、多数の海外メディアが取材に来るが、新華社の記者によると、

「今年は日本から来るのは3社だけです。取材もほとんど対面のものはなく、会場にいる代表をプレスセンターからビデオカメラを通して取材します」

失業した高給取りがブランド品をネットで投げ売り

   中国経済は4月以降、サービス業を除いて急速に回復しているように見えるが、庶民の生活は深刻なままだ。

   北京、上海におけるサービス業の重要性は、日本の東京、大阪におけるサービス業とあまり違わない。北京の場合、映画館は現在、完全に閉鎖されており、レストランも3人以上の会食は基本的に禁止となっている。小中学校はまだ休校中で、全人代、政協が終わった6月以降に始まる。現在基本的にはオンライン教育で間に合わせている。

   サービス業の回復の遅れで多数の雇用が失われた。製造業も国外から来た注文が途切れ、国内市場の開拓はまだ十分行っていないため、工場労働者もどんどん職を失っている。連鎖的に中小零細企業も仕方なく雇用を切る。

   日本のヤフーオークションのような不用品を売り出すサイト「閑魚ネット」を見てみると、大都会で一時は高給を得ていた人が失業して、今は高級品ブランド品を買値の一割にも満たない値段で売り出している。それでもほとんど買い手がない。

成長率1%で新規雇用200万人

   2020年は中国の第13回五か年計画(2016~2020年)が終了する年で、次の5か年の企画を立てる時期である。2020年のGDP成長率は次の五か年計画にとってもたいへん重要なデータである。

   政協委員で北京大学の林毅夫教授は、政協会議に出る前の5月19日、新浪ネットの取材を受けて2020年のGDP成長を次のように展望した。

「第3と第4四半期に成長率が10%ぐらいリバウンドするなら、2020年の年間成長率は3~4%になるだろうが、当初の5.6%の成長目標を達成するために、第三と第四はいずれも15%以上の成長を実現しなければならない」

   今回の全人代は、このGDP成長率を死守することができるかどうか。

   実は、中国では1%のGDP成長率は200万人の新規雇用を意味しており、成長率の見通しは政府の雇用の安定に対する姿勢そのものであるといえる。

   中国は2008年のリーマンショックの際、4兆元(当時では58兆円に相当)の財政を出動して経済回復を図った。だが、その後遺症として、倒産してもおかしくなかったゾンビ企業などが生き延び、今も中国経済発展の足を引っ張っている。中国政府は、もうそのようなやり方を許さないだろう。今回はどのような景気刺激策が出るのか、多くの国民は全人代の決定を固唾を飲んで見守っている。

(在北京ジャーナリスト 陳言)