J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

渡部建不倫で注目の「セックス依存症」 経験者の漫画家が語る苦しさと、社会に求められることは?

   2020年6月11日発売の「週刊文春」で不倫問題を報じられた「アンジャッシュ」の渡部建さん(47)。妻が美人女優の佐々木希さん(32)ということもあり、大きな好奇の目を集めるとともに、彼女を「裏切った」渡部さんは、世間からの激しい非難を受けることとなった。

   加え、文春記事では複数女性と不倫をしていたという点や、多目的トイレで性行為に及んでいたことも報じられている。この点も、時にメディアでは「獣欲」などといったおどろおどろしい言葉で語られた。

   一方、こうした「常軌を逸した」ともいえる行動には、なんらかの「病」ではないかと疑う声も、早くからあった。特に最近では一歩踏み込んで、「セックス依存症ではないか?」との論調で報じるメディアも出始めている。17日の東京スポーツは、憶測交じりではあるものの1面トップでこうした「疑惑」に触れた。

   近年は常習的な不倫の原因として「セックス依存症」が挙げられることも多く、病気として認識される機会が増えている。そこで、J-CASTニュース編集部では、「セックス依存症になりました。」で知られる漫画家の津島隆太氏に話を聞いた。

  • 渡部建さん(2017年撮影)
    渡部建さん(2017年撮影)
  • 渡部建さん(2017年撮影)
  • (C)津島隆太/集英社
  • (C)津島隆太/集英社
  • (C)津島隆太/集英社

「あくまで『可能性』の話に留めるべきかと」

   自らも「セックス依存症」を患った津島氏は2018年4月に「週刊プレイボーイ」(集英社)でその経験を題材に「セックス依存症になりました。」の連載を開始し、漫画家デビュー。2020年3月からは「グランドジャンプ」(同)で、漫画「セックス依存症になりました。<決定版>」を連載しているほか、セックス依存症についての情報を広めるべく、メディアに出演するなどしている。

   津島さんはJ-CASTニュースの取材に、「セックス依存症」を患う中で、最も辛い点、苦しい点をこう語る。

「セックス依存症を患う中で私が一番辛い点はやはり『セックスをしないこと』です。よく依存症者はその嗜癖を失くすと『生きがいを失う』と怖がります。アルコール依存症者でしたらお酒がないと『人生の楽しみを失う』と言うことがありますが、セックス依存症者もセックスを失うと『男として・女として終わりだ』とか言ったりします。けれど、依存症者は自身のコントロールを失っているので、嗜癖を続けたままの方が人生が終わってしまう可能性は高いのです。治療では必ずしもセックス禁止というわけではありませんが、私の場合、淫らなセックスを控える為にセックス自体も止めているので辛いです」

   前述のとおり、今回のスキャンダルを受けて、渡部さんへの一方的な非難だけではなく、「セックス依存症」を疑う声も出始めている。津島さんは、こうした病気を疑う声や報道が増え始めていることについて、病気の経験者として、そして同作の作者としてどのような感想を抱いたか。

「実際がどうであれ、少なくとも今回、渡部健さんにセックス依存症を疑う声が出た事自体は良い事だと思いますが、あくまで『可能性』の話に留めるべきかと」

   と冷静な議論を呼びかけるとともに、

「また、現在セックス依存症の知識は世間に浸透しておりませんので、ご指摘は『中傷』だとか『病気のせいにしている』と誤解されてしまう恐れもあると思います」

と危惧する。

話しづらいため「タブー」として扱われがちだが...

   同作の第3話でも、医師による診断を受ける主人公が自らの行為を「自分のせい」ではなく「病気のせいである」と医師に指摘され、「あまりにも都合が良すぎないか」と困惑するシーンもある。この病についての理解は、世間に広く共有されているとは言い難い。

「世間のセックス依存症への理解が深まらないのは、その性質上とても誤解されやすく(ただのセックス好きだと思われる)なおかつ恥ずかしいという気持ちから話す事がタブーとされやすいのが原因だと私は思います。現在では理解の深まった他の病気も、最初は誤解や偏見で差別に使われたりした事もありました。それを恐れず話し合い、差別は止め、誤解が生まれたら解き、理解を深めてゆく必要があると思います。特にセックス依存症(性依存症)は不倫や性犯罪などにも繋がる可能性があり、これ以上被害者を生まないためにも早急な対処が求められると思います」

   「セックス依存症になりました。」で主人公が医師による診察を受けるきっかけとなったのは、二股関係が破綻したことによって発生した、自らを被害者とする暴行事件だ。これによって自らが病気であることを自覚する、いわゆる「底尽き状態」を迎えることになる。渡部さんが実際に「セックス依存症」かは分からないものの、

「今回の不倫発覚が渡部さんの『底尽き』になる可能性はあると思います。セックス依存症治療に来られる方々も、不倫発覚から治療に繋がった方は多くいらっしゃいます」

と津島さんは言う。

もし自分が「依存症では?」と感じたら?

   渡部さんがセックス依存症だった場合、「セックス依存症になりました」を読むことで参考になるであろう点についても聞いてみた。

「依存症は自認が最も難しい病気ですので、まずは2話目にある『自分ではどうしようもない病気』だという事。そして、3話目にある『原因と責任を混同しない』という事。これは過ちは病気のせいだけれども、責任は自分が背負わなければいけないという事です。それらを読んで頂けたら幸いです」

   最後に、一連の報道などを通じて、「自分も『セックス依存症』では?」と感じた人へのメッセージをお願いした。

「自分も依存症かもと感じられた方にお伝えしたいのは、まずは知識を身につけて病院に行って欲しいということです。それはどんな病気でも同じだと思います。自分や家族が病気に罹ったらその病気を調べて対処しますよね。依存症者の行動は他者から見るととても不可解ですが、依存症の知識があるとその仕組みは徐々にわかってきて、ご本人も周りの方のストレスも減るだろうと思います。そして依存症は回復に何年もかかり、スリップ(再行動)してしまう可能性もありますが、どうか、スリップしたとしても治療や回復し続ける事を諦めないで欲しいです。共に回復して参りましょう」

(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)