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与党はノー、野党もダメ... 現職・前職「共倒れ」の鹿児島県知事選、新人勝利の背景は

   任期満了にともなって行われた鹿児島県知事選が2020年7月12日に投開票され、与党が推した現職と、立憲民主党の県連が推薦した前職の両方が敗れるという異例の展開になった。

   当選したのは、新人で前九州経済産業局長の塩田康一氏(54)。塩田氏は「前の人(前職)でも今の人(現職)でもない」をキャッチフレーズに、政党からの支援を受けない草の根選挙を展開した。現職への批判が高まっていたことも背景に、都市部や無党派層の支持を集めた。

  • 鹿児島県知事選では、現職にも前職にも「ノー」が突きつけられた(写真はイメージ)
    鹿児島県知事選では、現職にも前職にも「ノー」が突きつけられた(写真はイメージ)
  • 鹿児島県知事選では、現職にも前職にも「ノー」が突きつけられた(写真はイメージ)

原発再稼働容認、集票依頼疑惑、「鹿児島モデル」撤回...

   知事選には現職の三反園訓(みたぞの・さとし)氏(62)=自民、公明推薦=、前職の伊藤祐一郎氏=立憲県連推薦=(72)ら過去最多の7人が立候補した。三反園氏は元テレビ朝日記者で、16年の前回選挙で九州電力川内原発の再稼働反対を掲げ、野党の支援を受けて出馬。3期12年を務め、4選を目指していた伊藤氏を破って初当選した。

   しかし、その後九州電力川内原発の再稼働容認に転じ、政治姿勢が一貫していないとの批判が強かった。

   さらに、6月21日には地元紙の南日本新聞が、県内の複数の首長が三反園氏から電話で票のとりまとめを依頼されたと証言した、などと報じた。公職選挙法は特別職を含む公務員が地位を利用して選挙運動することを禁じている。三反園氏は翌6月22日の記者会見で、電話したことを認めた上で集票の意図は否定した。

   新型コロナ対策をめぐっては、5月22日に独自の「鹿児島モデル」を発表していたが、6月19日になって撤回。大幅に経済活動へのハードルを下げた新基準を発表していた。

構図逆転が政党支持者の離反招いた?

   16年の選挙では伊藤氏が自民・公明の支援を受けており、今回の選挙では構図が逆転した形だ。自民党内には三反園氏を推すことに反発する動きもあり、伊藤氏の出陣式でマイクを握った自民党県議もいた。こういった異例の構図が、それぞれの政党支持者の離反を招いた可能性もありそうだ。

   NHKや鹿児島テレビ(KTS)の出口調査によると、塩田氏は自民党の支持者の3割強の支持を集め、立憲支持層や、無党派層からも4割以上の支持を集めた。三反園氏は自民支持層の3~4割しか固められず、無党派で支持した人も約2割にとどまった。伊藤氏を支持したのは自民支持層の2割程度で、立憲支持層の支持は2割も固められなかった。無党派層からの支持も2割に満たなかった。共産党は内科医の横山富美子氏(73)を推薦したが、共産党支持者以外には訴えが浸透しなかった。

   投票率は49.84%で、前回16年の56.77%を6.93ポイント下回った。ただ、16年は参院選とのダブル選で、そのまま比較することはできない。さらに4年前の12年は県知事選単独で行われ、43.85%だった。当時と比べると6ポイント近く上回っている。

   得票数は塩田氏22万2676票、三反園氏19万5941票、伊藤氏13万2732票。得票率にすると、それぞれ33.9%、29.8%、20.2%だったが、塩田氏の都市部での強さが目立った。最も有権者が多い鹿児島市の得票率を見ると、塩田氏42.5%に対して、三反園氏22.4%、伊藤氏18.2%だった。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)