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慰安婦へ安倍首相「土下座」像のトンデモ 過疎施設の「客寄せ」?韓国内でも批判が...

   元徴用工をめぐる問題に加えて、日韓関係に「決定的な影響」を与える可能性がある火種が新たに浮上した。韓国の植物園で、安倍晋三首相をモチーフにした男性が慰安婦像にひざまずく像が製作され、近く序幕式が行われることが明らかになったためだ。植物園は8年間にわたって閉園しており、2020年6月にリニューアルオープンしたばかり。話題になることを見込んで設置した可能性もありそうだ。

   ソウルの日本大使館前の慰安婦像をめぐっては、15年末の慰安婦合意で、韓国政府が「適切に解決されるよう努力する」とされたが、いまだに撤去は実現されていない。日本側は今回の像は「国際儀礼上許されない」と反発しており、韓国内でも賛否の声があがっている。

  • 「永遠の贖罪」(A heartfelt apology)と題した像の存在は、京郷新聞が7月25日に報じて明らかになった(写真は京郷新聞ウェブサイト)
    「永遠の贖罪」(A heartfelt apology)と題した像の存在は、京郷新聞が7月25日に報じて明らかになった(写真は京郷新聞ウェブサイト)
  • 「永遠の贖罪」(A heartfelt apology)と題した像の存在は、京郷新聞が7月25日に報じて明らかになった(写真は京郷新聞ウェブサイト)

話題づくりのために設置?

   この問題は、京郷新聞が7月25日に報じて明らかになった。タイトルは「永遠の贖罪」(A heartfelt apology)で、8月10日に元国会議員らを招いて除幕式が予定されているという。

   同紙によると、作品を製作した彫刻家のワン・グァンヒョン氏は、その狙いを

「日本が歴史と正面から向き合って心から謝罪し、新しい日本に生まれ変わることを祈るために作られた」

と説明。像が設置される韓国自生植物園の園長は、国内外の慰安婦像を「非難・嘲笑したり、毀損したりする実態」があるとして、「贖罪の対象を確実に形にする必要があった」などと安倍氏が慰安婦像にひざまずく構図にした理由を説明した。

   植物園のウェブサイトによると、植物園は12年に起きた火災が原因で休園が続いていたが、20年6月6日にリニューアルオープンしたばかり。場所は、18年に冬季五輪が開かれたことで知られる北東部の江原道・平昌で、ソウルから距離もある。集客は困難だとみられ、話題づくりの一環として設置した可能性もある。

   朝鮮日報は、ネット上に賛否両論あることを伝えている。賛成論は

「日本大使館前少女像に設置する必要がある。江原道は余りに遠い」
「久しぶりの素晴らしい芸術作品」

といったもので、

「率直に言って、外交的負担感が感じられる」
「日本の人が文在寅(大統領)をこうすれば、どうだろうか」

「仮に報道が事実であるとすれば、日韓関係に決定的な影響」

   この計画に、日本側は激しく反発した。菅義偉官房長官は7月28日午前の記者会見で、

「事実かどうかは確認していないが、そのようなことは、国際儀礼上許されないと思う。仮に報道が事実であるとすれば、日韓関係に決定的な影響を与えることになる」

などと警告。その上で

「いずれにせよ慰安婦問題については、韓国側に対し、慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認した日韓合意の着実な実施を引き続き強く求めていく、そうした考え方に変わりない」

と続けた。15年末の慰安婦合意は、ソウルの日本大使館前の慰安婦像について

「(日本政府が)公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを(韓国政府が)認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する」

と言及している。これは「領事機関の公館の保護」をうたったウイーン条約を念頭に置いた文言だが、今回の像が設置されたのは私立の植物園だ。撤去を求めるには別の根拠が必要で、韓国政府の対応も注目される。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)