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井上尚弥を取り巻く「世界バンタム級戦線」 コロナ禍で次戦の行方は...

   ボクシング界が再始動に向けて本格的に動き出している。新型コロナウイルスの影響で試合の延期、中止が相次いだが、ようやく世界戦などのタイトル戦再開にこぎつけた。日本のボクシングファンの注目を集めるWBA、IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(27)=大橋=の次戦はどのような展開を見せるのか。「モンスター」を取り巻く世界のバンタム級事情を追ってみた。

  • 井上尚弥
    井上尚弥
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カシメロ陣営はファイトマネー減額応じるか

   本来ならば井上の2020年度の初戦は4月25日(日本時間26日)に米ラスベガスでWBO世界バンタム級王者ジョンリル・カシメロ(フィリピン)を迎えて世界3団体統一戦を予定していた。これが新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて延期となった。タイトル戦は中止ではなく延期ということで、カシメロ陣営は米国内にとどまり調整を続けてきた。ところがここにきて事情が変わり、カシメロに代わる新たな対戦候補が浮上している。

   米スポーツ専門チャンネル「ESPN」(電子版)は2020年7月23日(日本時間24日)、井上をプロモートするトップランク社のボブ・アラムCEOがカシメロ陣営に対してファイトマネーの減額を求めたと報じた。「ESPN」によると、アラム氏はカシメロ陣営が要求に応じなかった場合、井上の対戦相手をWBO世界バンタム級1位ジェイソン・マロニー(豪州)に変更する可能性に言及している。

   マロニーはWBOのトップコンテンダーでWBAでは3位につけ、WBC、IBFともに4位にランクインしている。戦績は21勝(18KO)1敗で、唯一の敗戦は2018年10月にIBF世界バンタム級王者エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)に挑戦して判定負けを喫したもの。このタイトル戦はワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)の準々決勝として行われ、マロニーが勝っていれば決勝戦の相手は井上だった。

   アラム氏がマロニーを代役候補に挙げたのは、アラム氏流の駆け引きのひとつでカシメロ陣営へのけん制とみられる。ただ実際のところ新型コロナウイルスの影響で観客をフルに入れての通常開催は難しく、当初予定していた興行収入が見込めない。アラム氏の計画では今年の9月にも井上のタイトル戦を予定しており、今後のカシメロ陣営の動向が大いに注目される。

リゴンドーはビッグマッチの予定なし...

   一方、井上の対立王者であるWBC世界バンタム級王者ノルディ・ウーバーリ(フランス)は、元世界5階級王者ノニト・ドネア(フィリピン)を相手に12月12日(日本時間13日)に防衛戦を行う。このタイトル戦は当初、5月16日に米国で予定されていたがウイルスの感染拡大を受けて延期になっていた。井上は4団体統一を目標に掲げており、この一戦の勝者が井上の標的となるだろう。

   また、バンタム級戦線において忘れてならないのが、WBA世界バンタム級正規王者ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)の存在だ。リゴンドーはスーパーバンタム級でWBAとWBOの王座統一に成功し、WBA王座は9度防衛した。減量に問題がないため階級を一つ下げ強豪が集うバンタム級に転級し、2019年12月にWBAバンタム級王座を獲得し、世界2階級制覇を達成した。

   より強い相手との対戦を求めて階級を下げてまでバンタム級にきたリゴンドーだが、いまのところビッグマッチの予定はない。現在、世界のバンタム級戦線は井上を中心に回っており、リゴンドーも井上にからみたいところ。リゴンドーはバンタム級で自身が望む強豪との対戦が実現しなければ、階級をスーパーバンタム級に戻す意志を見せており、バンタム級の王座を返上する可能性もある。