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ポスト安倍は前途多難... GDP落ち込みで「コロナと経済」苦境からのスタート

   日本の2020年4~6月期の国内総生産(GDP、一次速報、8月17日発表)は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値が前期比7.8%減、年率換算では27.8%減と、戦後最大の落ち込みを記録した。7~9月期は持ち直す見込みとはいえ、感染の再拡大の懸念もあり、「V字回復」は難しい状況。「ポスト安倍(晋三首相)」がどうなるにせよ、負の遺産を背負ってのスタートになる。

  • 次期政権は厳しい船出に
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個人消費は過去最大のマイナス幅に

   マイナス成長は、消費税率引き上げがあった2019年10~12月期から3四半期連続。マイナス幅は「100年に1度の危機」と言われたリーマン・ショック後の2009年1~3月期の17.8%減や、石油危機後の1974年1~3月期の13.1%減を軽く上回った。

   4~6月期は4月上旬から1か月半、新型コロナウイルスの緊急事態宣言が出され、個人の外出自粛や店舗の休業など、経済活動は全般に滞った。要因別にみると、GDPの半分以上を占める個人消費が前期比8.2%減と過去最大のマイナス幅を記録。巣ごもり消費は堅調だったものの、外出の自粛などで旅行・レジャーや外食など幅広い分野で支出が落ち込んだ。内需のもう一つの柱である企業の設備投資も1.5%減と2四半期ぶりに減少に転じた。事業の先行き不透明感から企業が投資に慎重になったようだ。住宅投資も0.2%減った。

   他方、輸出も18.5%減と、リーマン・ショック後の2009年1~3月期の25.5%減に次ぐマイナスになった。自動車などの輸出減に加え、統計上はサービスの輸出に含まれる訪日客(インバウンド)消費がほぼ「蒸発」したのが響いた。輸入が0.5%減にとどまったのは、中国からの輸入がいち早く再開されたほか、マスクなど医療関係品、テレワーク拡大に伴うパソコンなどの需要増が目立った。

   内外需のGDPマイナス幅への寄与度は、全体の7.8%減のうち内需が4.8%(年率19.1%)減、外需が3.0%(年率10.8%)減で、文字通り内外需総崩れという状況だった。

エコノミストの見立ては...

   問題は今後の見通しだ。日本経済研究センターが日本経済の将来予測を行っている民間エコノミスト約40人の見通しをまとめる「ESPフォーキャスト調査」は、4~6月のGDP発表前の8月13日の集計で、4~6月期を年率26.59%減と、ほぼ「的中」させていたが、7~9月期については年率換算13.26%のプラス成長という「急回復」を見込んでいる。経済活動の再開、Go To トラベル、「給付金特需」などが貢献して4~6月期の下落率のおおむね半分を取り戻す計算だ。

   このフォーキャスト調査について第一生命経済研究所のレポート(「エコノミックトレンド」8月17日)は、7~9月期の見通しを「6月以降にコロナ感染が広がったことを十分には織り込めていない。単月でみると、6月は回復したものの、7・8月の戻りは弱々しく、緩慢な伸び率になりそうだ」として、13.26%の伸びは「大きすぎるように思える」と指摘している。

   他方、みずほ総合研究所のレポート「コロナショックと日本経済」(8月18日)は7~9月期が年率14.9%と高めの予想。逆に野村総研の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは8月17日のリポートで「7~9月期成長率は7%程度」と低く見ている。

政権発足前の水準に逆戻り

   いずれにせよ、「外食、宿泊などのサービス消費の持ち直しが限定的にとどまっていること、7月に入り新型コロナウィルスの陽性者数が再び増加したことを受けて自粛を求める動きが強まっていることから、経済活動の正常化は遅れている」(ニッセイ基礎研究所8月17日リポート)。経済協力開発機構(OECD)の見通し(6月時点)でも、日本の成長率は2020年6.1%マイナスのあと、2021年は3.5%とプラスに転じるものの、戻りは緩慢になりそうだ。

   GDPの金額をみると4~6月期は年間換算で485.1兆円と、7年半ぶりに500兆円を割り込み、2012年末の第2次安倍政権発足前の水準に逆戻りした格好になった。7~9月期も500兆円をやっと回復する程度にとどまる見込みだ。

   直近のピークである2019年7~9月期(消費税率引き上げ前)の539.3兆円の回復時期について、日本経済新聞がエコノミストの回答をまとめたところ、2024年ごろとの見方が多い(8月18日朝刊)。野村総研の木内氏は「2024年10-12月期」とみており、第一生命研は「2024年末よりももっと時間がかかる可能性がある」と指摘している。

   今後の感染の拡大・終息の動向と経済活動回復のテンポがどのように進むか、首相が誰になろうと、経済政策運営は予断を許さない厳しい状況が続く。