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「中国コスメ」SNS後押しでブーム加速 「チャイボーグメイク」話題も...流行の理由は?

   昨今の化粧雑貨店の多くには、韓国ブランドの化粧品が並んでいる。そのような輸入化粧品コーナーの一角に、中国ブランドの化粧品(以下「中国コスメ」)も並び始めている。

   J-CASTニュースが、化粧雑貨店などに取材を行うと、若い世代や美容に関心の高い人々の間では「中国コスメ」ブームが加速しているという。中国コスメを取り扱う5社にメールで取材をしたところ、4社がここ1年の間に中国コスメの取り扱いを開始したとのことだった。

  • ズーシー(ZEESEA)「大英博物館 エジプトシリーズ」16色アイシャドウパレット
    ズーシー(ZEESEA)「大英博物館 エジプトシリーズ」16色アイシャドウパレット
  • ズーシー(ZEESEA)「大英博物館 エジプトシリーズ」16色アイシャドウパレット
  • 増加する「チャイボーグ」の検索数

「チャイボーグメイク」の流行

   SNS上では2019年ごろから、「チャイボーグメイク」と呼ばれる中国風のメイクが話題となっていた。人を超えた「サイボーグ」のように美しい中国風のメイクであるとして、このような造語が用いられている。中国の古典演劇「京劇」を想起させるような鮮やかな色を用いて、目元や口元にポイントを置き、凛々しく美しい印象を与えるメイクだ。

   このような「チャイボーグメイク」の流行が発端で、中国ブランドの化粧品も注目されるようになったのではないかと多くの化粧品雑貨店は推測している。そのうちの1つライフスタイルストアPLAZA(プラザ)のコスメ担当バイヤー・中野幹也さんは、チャイボーグメイクへの注目によってYouTubeやTwitterなどから中国コスメの情報を集める層が出始め、それに合わせて更なる拡散が起こっているという見方を示した。

Google Trendsより 2019年ごろから「チャイボーグ」の検索数が激増している
Google Trendsより 2019年ごろから「チャイボーグ」の検索数が激増している

   現在最も注目されている中国コスメブランドは、「ZEESEA (ズーシー)」。現在は「ロフト」や「PLAZA」、「コスメラボ」、「@cosme SHOPPING」でも一部商品が取り扱われている。同ブランドの中でも最近話題となった商品は、大英博物館とコラボして発売したアイシャドウパレット。この商品は、大英博物館所蔵されている古代エジプトの遺品をモチーフとしており、異国情緒溢れるパッケージデザインが人気を博している。「チャイボーグ」メイクで用いられるような鮮やかで発色の良い16色のアイシャドウは、絶世の美女であるクレオパトラをイメージしているという。さらに、ザクザクした大粒なラメや、星形のラメも入っており、日本や韓国にはないような派手なものとなっている。

ズーシー(ZEESEA)「大英博物館 エジプトシリーズ」16色アイシャドウパレット
ズーシー(ZEESEA)「大英博物館 エジプトシリーズ」16色アイシャドウパレット

   輸入化粧品販売店「コスメラボ」の運営で知られる日本機能性コスメ研究所の代表取締役・林紗陽さんは、

「やはり材料からパッケージまで一気通貫で作れるという環境が日本では考えもつかないコンセプトの化粧品を生み出しているのだと思います。この5年でデザイン力が上がり、見た目が大変改良されていると感じます」

と、中国コスメのデザイン力について注目している。

中国コスメの魅力とは?

   中国コスメの魅力は、このようなパッケージや色遣いなどの徹底したコンセプトデザインである。前述のPLAZAの中野さんは、中国コスメブームの背景についてこう分析している。

「最近の中国ブランドは、中国の伝統的デザインと今っぽさのトレンドデザインが組み合わさった新しく革新的なアイテムが多くあると感じています。今まで欧米系のアイテムは色々とよく目にしていたものの、中国はあまりフィーチャーされることがなかったため、目新しさが注目度を加速させているのではないでしょうか。現在の中国(コスメ)ブランドイメージに関しても、特にパッケージのクオリティが高く、持っていたいと思わせる仕掛けが多々あり、品質も以前のネガティブなイメージから良いイメージに転換してきている時期だと思います」

   さらに、こうしたデザインが注目されるようになった背景には、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う自粛期間の影響も挙げられる。生活雑貨店「ロフト」の担当バイヤーである髙田佳奈さんは、

「日本のコスメや韓国コスメにはない鮮やかな発色やカラーバリエーション、作りこまれた魅力的なパッケージデザイン等が話題となり、自粛期間の『#おうち美容』や『#おうちでメイク研究』等でSNS拡散がより後押しされていると思われます」

と自粛期間の影響を言及した。

   コスメ・化粧品・美容の総合情報サイト「@cosme(アットコスメ)」の運営で知られるアイスタイルのリサーチプランナー・西原羽衣子さんによれば、近年は「持っていてうれしい」「使っていて楽しい」「香りに癒される」など、コスメの情緒的な価値が重視される傾向があるという。さらに、その流れが今回のコロナウィスルの感染拡大による「ステイホーム」などで強まっている傾向があり、現在中国コスメの大きな魅力になっている「芸術性=見て楽しむ」がその流れにマッチしたという。

   こうして中国コスメブームが広がる一方で、インターネット上では、オンラインで購入した中国コスメが偽物であったという報告や、輸入過程で壊れてしまっていたという声も相次いでいる。ある化粧品雑貨店は匿名で、このような個人輸入に対する危機感を露わにした。

「海外から個人輸入をする業者が多いのですが、海外では日本の薬事で禁止されている成分を使っている化粧品が本当に多く、知らずに個人輸入される方は特に注意して頂きたいと思います。また日本法人でも日本の個人でも輸入代行を行うことは本来薬機法の法律に違反する行為になります。現在大変多く見かけ、個人的にブームの一方で安全性に対する危機感を感じます」

とはいえ中国コスメブームはSNSから徐々に広がりつつあり、今後は国内実店舗での販売も拡大していくものとみられる。

実店舗販売の拡大

   「@cosme(アットコスメ)」のリサーチプランナー・西原さんは、中国コスメの中でも、先に紹介したチャイボーグメイクブームの背景について、こう分析している。

「一部で話題になっている『チャイボーグメイク』は『周囲に迎合しない強さ』のようなものが魅力だったりするようですが、今人気の韓国アイドルでもガールズクラッシュ(女性が憧れるかっこよさ)をコンセプトにしたアイドルが人気だったり、女性の『強さ』への憧れは増しているように思うので、メイクトレンドにも、少しずつ『強さ』が取り入れられるようになるかもしれません(とはいえ、マジョリティ層の女性にまで広がるには数年はかかるかもしれませんが)」

   インターネット上ではこうした「強さ」への憧れが顕著だ。2019年冒頭には、画像生成メーカー「Picrew(ピクルー)」の「強い女メーカー」が大流行するということもあった。このような「強さ」への憧れが、「チャイボーグメイク」、そしてそれを実現させる「中国コスメ」の人気につながっているのだろうか。ロフトは、SNS情報やメイクトレンドに敏感な世代で中国コスメの人気が高いと述べる。PLAZAも、若い世代や美容の関心度の高いユーザーからの反響が大きいと述べた。

   さらに、日本機能性コスメ研究所の林さんは、

「中国では数年前までは、中国コスメというと中間層~低所得者向けのイメージがあったのですが、ほんのここ1~2年でデパコスに並ぶ高価格帯の高品質な国産コスメが増えており、OLなどの可処分所得が高い高所得者の方も買うようになってきたという印象です」

とターゲットの広がりも示唆している。

   日本機能性コスメ研究所は、2016年に「kailijumei(カイリジュメイ)」という香港ブランドの化粧品を発売して以降、中国系コスメに力を入れている。多くの化粧品雑貨店では、「ZEESEA」や「Venus Marble」の2社ほどの取り扱いとなっているが、同社では現在10ブランド以上の中国系コスメを取り扱っており、「ZEESEA」だけでなく、「kailijumei」のフラワーリップ、「Perfect Diary」のアイシャドウ、「AURORA KITTY」の口紅、「Blacktime」のアイシャドウパレット、「VCND」のネイルポリッシュもSNSを中心に注目が高まっていると述べる。

   現在、多くの化粧品雑貨店が中国コスメの導入に意欲的だ。PLAZAは、既に注目のブランドのいくつかには導入に向けて動いているという。@cosme SHOPPINGは良い商品があればと、ロフトも新商品の展開に前向きだ。今後、日本機能性コスメ研究所が挙げたようなブランドが広がっていく可能性や、新たにSNS上で話題となったコスメが輸入される可能性もある。

(J-CASTニュース編集部 瀧川響子)