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ウェザーニューズに「成長期待」感 コロナ禍で「主力」売上減なのになぜ?

   民間気象情報会社として世界最大規模とされる東証1部上場のウェザーニューズの株価が2020年9月2日(5200円)、3日(5280円)と連日、上場来高値を更新した。長梅雨に猛暑、大規模な台風と天候不順が続く中、「詳細な天気予報の需要が今後も高まるのではないか」との思惑買いが株価を押し上げているようだ。

   ウェザーニューズの設立は1986年。2000年12月に大証ナスダック・ジャパン市場に上場し、02年12月に東証2部、03年11月に東証1部に移った。創業者の石橋博良氏が1970年、福島県の小名浜港を襲った爆弾低気圧で貨物船(石橋氏が仕事でかかわりがあった)が沈没した海難事故をきっかけに気象情報の世界に進み(具体的には後に伊藤忠商事と合併する商社・安宅産業から米企業に転職)、さらに日本で自らの会社を立ち上げたのだった。気象庁が絶対的な立場にある日本の1980年代に民間気象情報会社を設立するというのはなかなかのベンチャースピリットであり、立志伝中の人物でもあったが病のため2010年に63歳の若さで亡くなった。

  • 天気が気になる…(写真はイメージ)
    天気が気になる…(写真はイメージ)
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営業利益も純利益も2ケタ増益

   創業者亡きあとも、必要なところへ必要な気象情報を届けるというマインドは失われず、成長を続けている。現在の草開千仁社長(55)は、会社設立の翌年に新卒で入社した気骨ある人物で、石橋氏の生前、2006年に社長に就いた「2代目」だ。

   2020年5月期連結決算(7月13日発表)は売上高が前期比5.3%増の179億円、営業利益は11.5%増の22億円。純利益は18.8%増の16億円と堂々の2ケタ増益。21年5月期の業績予想も売上高が6.9%増の192億円、純利益が4.4%増の17億円と増収増益を見込んだ。コロナ禍でも成長する姿に発表翌日の株価は一時前日終値比11.7%(415円)高の3950円まで上昇。しばし4000円近辺でもみ合った後、 8月後半から上昇気流に乗った。

   事業内容は大きく法人向けと個人向けに分かれ、法人向けは「祖業」である船舶対象の航海気象のほか、航空機や鉄道、道路の企業を顧客とするサービスを展開。個人向けでは詳細な天気予報などを提供している。「サポーター」と呼ぶ人たちから集めた独自の観測ネットワークを活用してきめ細かい情報を作りだし、世界に展開している(海外売上高は23%)。

天気予報アプリのダウンロード数が増加

   売上高でみると2020年5月期は法人向けが102億円、個人向けが76億円。伸び率は個人向け(8.4%増)が法人向け(3.0%増)を上回った。コロナ禍で法人向けの主力、航海気象の売り上げが3.5%減ったことが影響した。一方、個人向けサービスの増収には、大規模な気象災害の発生が続く中で天気予報アプリのダウンロード数が増加し、これに伴って広告売り上げが増えたことが貢献した。

   野村証券は8月11日付のリポートで目標株価を3500円から4200円に引き上げた。ウェザーニューズが現在、アプリ利用者拡大を狙って積極的に投下するテレビCMが落ち着く2022年5月期に営業増益率が高まる、といういかにもプロの分析だ。ただ、「コロナの法人向け事業に与える影響が不透明」とも指摘した。

   成長期待から上場来高値を更新した株価だが、さすがに高値警戒感も出ており、9月7日の終値は4営業日ぶりに5000円を割り込んだものの、8日には5100円台に。当面、「利益確定」と「なお期待」がせめぎ合う展開となりそうだ。