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枝野流「消費税ゼロ」実現への2つのハードル

   新型コロナウイルスの感染拡大を受けた経済対策として消費税のあり方が取り沙汰される中、2020年9月29日にはツイッターで「消費税0(ゼロ)」が「トレンド」入りした。

   立憲民主党の枝野幸男代表が産経新聞のインタビューに対して、消費税率を一時的にゼロに引き下げることも選択肢だとの考えを示したことを受けての反応だ。枝野氏は元々消費減税に慎重な姿勢だったが、コロナ禍を受けて、一時的な減税は選択肢に入れるべきだとする立場を鮮明にするようになった。

   枝野氏が税率ゼロに言及するのは今回が初めてではない。ただ、与野党の合意のあり方や、税率引き下げの決定から実際の減税までタイムラグがあると消費が落ち込む問題など、乗り越えるべきハードルは高い。

  • 立憲民主党の枝野幸男代表。9月15日の結党大会後の記者会見では、消費減税を選挙の争点にすることには否定的な考えを示した
    立憲民主党の枝野幸男代表。9月15日の結党大会後の記者会見では、消費減税を選挙の争点にすることには否定的な考えを示した
  • 立憲民主党の枝野幸男代表。9月15日の結党大会後の記者会見では、消費減税を選挙の争点にすることには否定的な考えを示した

2月には慎重姿勢→9月の討論会「どうせやるなら思い切ってゼロ」

   枝野氏のインタビューは9月28日に行われ、同日夜に産経新聞ウェブサイトに掲載された。枝野氏は消費税率を時限的に引き下げることについて

「一種のショック療法なので、選択肢としては否定すべきではない。せいぜい2年までだ」

などと述べたという。

   元々、枝野氏は消費減税には慎重な立場だった。2月16日に開かれた党大会にあたる「立憲フェス」では、れいわ新選組が税率5%への引き下げを目指していることに対する見解を支持者から問われ、枝野氏は

「難しいのは、上げれば消費にマイナスの影響を与えるのは確かだが、下げたら消費にプラスの影響を与えるかというと、必ずしもそうではない。上がることは、みんなそのことで消費を控えるが、下がったからといって下がった分消費をするというものではない。これはかなりはっきりしている」

などとして、税率引き下げの効果を疑問視していた。

   だが、枝野氏は3月17日には、コロナ禍を受けた経済対策について

「消費税(減税)を含めて、あらゆる施策を選択肢として検討する必要がある」

と発言。その後の野党の合流新党(現・立憲民主党)の代表選では、消費減税に前向きな姿勢を鮮明にしてきた。9月9日に日本記者クラブで行われた討論会では、枝野氏は減税の際は時限的に行うのが現実的だとして、税率は「どうせやるなら思い切ってゼロ」と述べている。

「与野党で合意形成しなければ、いくら拳を振り上げたって変わらない」

   枝野氏の一連の発言からは、減税実現に向けて大きく2つのハードルが浮かぶ。ひとつが、減税決定と実際減税とのタイムラグの問題だ。9月9日には、

「消費税減税は『やりそうだ』となってから実際に減税されるまでの間に時間的に大きく開いてしまうと、その間の消費を冷え込ませるという、副作用がものすごく大きなものがある。『あと半年待てば消費税が下がるんだ』と思ったら、住宅とか自動車とか、大型家電とかの売れ行きは間違いなく冷え込む」

として、

「やるならば、決めて2か月ぐらいでバーンとやれる時を決断しなきゃいけないと思っている」

と主張。9月23日に日本外国特派員協会で行った記者会見でも、消費減税の必要性を問われて

「今の社会状況であれば、本来それが望ましいと思う。ただし、やり方をうまくやらないと...。『下げますよ』というアナウンスをしてから下げるまでの間、むしろ消費を冷え込ませることになるので、非常にハンドリングが難しいと思っているが、できれば下げることが望ましいと思う」

と応じている。

「選挙の争点」にしたがらない理由

   もうひとつのハードルが、与野党間の合意の問題だ。次期衆院選では、消費減税を旗印に野党が結集すべきだとの主張が一部で展開されている。だが、枝野氏は消費減税の争点化には一貫して否定的だ。9月9日には

「政治争点化をしてしまったら、どう考えても与野党で対立して合意形成は難しい。与野党で合意形成しなければ、いくら拳を振り上げたって変わらない。そうすると、(合意形成できる可能性がある政策は)与党も合意ができそうで、しかも経済に効果を与えるとすれば時限的なものだと思っている」

などとして、

「合意のできる余地は、(税率を下げる)時間が区切られるのであれば、与党側にもあると思うし、そういう可能性の感触も受けている」

などと折衝の必要性を強調。9月15日の結党大会後の記者会見でも、

「選挙の争点というのは、当事者が『これが争点だ』といくら言っても、争点になるわけではない。政治状況、有権者の判断だと思っている」
「本当に実行しようと思ったら、参院を考えれば自民党が賛成しなければ法律が通って実現することはあり得ない。どうやって賛同してもらう状況をつくるか。それにはもちろん表の論戦もあるし水面下(の折衝)もあるし、当然のことだと思っている」

と述べている。

   なお、この記者会見の終盤、記者から消費減税への立場について、

「否定的・消極的・懐疑的・肯定的・積極的、どう表現するのが代表の立場に一番近いか。もし、この中で明らかに『これは間違っている』という表現があれば教えてほしい」

などと問われ、枝野氏は

「一言です、『現実的』。リアリズムです、政治の」

と答えている。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)