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BTS「炎上」のややこしい事情 朝鮮戦争言及に「中国ネット激怒」も...その実態は?

   韓国のヒップホップアイドルグループ「防弾少年団(BTS)」メンバーのスピーチが、中国のネットユーザーの間で波紋を広げている。

   米韓の交流組織「コリア・ソサエティー」は毎年、米韓の関係強化に貢献した人物や団体に「ヴァン・フリート賞」を贈っており、2020年の受賞者のひとつがBTSだ。BTSメンバーが受賞スピーチで、朝鮮戦争について「(米韓)両国が共に分かち合った苦難の歴史と、数え切れないほど多くの人々の犠牲を常に忘れない」と言及。当時は北朝鮮側についた中国の人々の感情を刺激したとの見方が出ている。

  • コリア・ソサエティーの「ヴァン・フリート賞」受賞にあたってスピーチするBTSメンバー(写真はコリア・ソサエティーのオンライン受賞式の動画から)
    コリア・ソサエティーの「ヴァン・フリート賞」受賞にあたってスピーチするBTSメンバー(写真はコリア・ソサエティーのオンライン受賞式の動画から)
  • コリア・ソサエティーの「ヴァン・フリート賞」受賞にあたってスピーチするBTSメンバー(写真はコリア・ソサエティーのオンライン受賞式の動画から)

「両国が共に分かち合った苦難の歴史と、数え切れないほど多くの人々の犠牲」

   「コリア・ソサエティー」は、朝鮮戦争で国連軍と米第8軍の司令官だったジェームズ・ヴァン・フリート大将が1957年に設立。「ヴァン・フリート賞」は、1995年に設けられた。BTSは10月7日(米東部時間)にオンラインで行われた受賞式で、メンバーが次々に受賞の喜びを韓国語で語った。そして、最後にリーダーのRM氏が英語で

「今年は朝鮮戦争70周年で、コリア・ソサエティーの年に一度の祝賀会は特に意義深い。私たちは、両国が共に分かち合った苦難の歴史と、数え切れないほど多くの人々の犠牲を常に忘れない。70年を経て、私たちが生きている世界は以前よりもずっと狭くなり、様々な面で境界線が曖昧になってきている。グローバル社会の一員として、より深い理解と連帯を築き、共に幸せになろうではありませんか。BTSはこれからもヴァン・フリート賞の意義を忘れず、ベストを尽くしていきたい。ありがとうございました。」

と締めくくった。「コリア・ソサエティー」の創立者や創立の経緯、「米韓関係の強化」に寄与した人物や団体を顕彰するという賞の趣旨を踏まえれば、受賞スピーチで朝鮮戦争や米韓関係に話題が及ぶのは必ずしも不自然とはいえない、との見方もできる。ただ、中国では、そうは受け止められなかった。

朝鮮日報「今回の議論は、一部のネットユーザーと環球時報が主導」

   10月11日頃、BTSの発言がウェイボー(微博)の急上昇ワード(熱捜)に浮上し、10月12日には中国共産党系の環球時報が、

「中国のネットユーザーが朝鮮戦争のコメントに怒り 防弾少年団が中国で『被弾』」

と題した記事をウェブサイトに掲載した。記事によると、BTSメンバーの発言の「両国が共に分かち合った苦難の歴史を常に忘れない」という部分が「特に中国のネットユーザーを怒らせている」という。「両国」は「米韓」を指すため、中国を敵視していると受け止めた人もいたようだ。一部のファンは

「私は中国人なので」
「国家の尊厳に関わることに口を出すのは絶対許せない」

などとして、ファンをやめることを宣言したという。

   ただ、今回の発言に対する批判が、現時点ではどの程度の広がりを見せているかは不明だ。朝鮮日報は10月12日付けの北京発の記事で

「今回の議論は、一部のネットユーザーと環球時報が主導している。環球時報は中国共産党機関紙の人民日報の姉妹紙で、反米、民族主義性向を示している」

と指摘している。

   17年には、米軍の最新鋭迎撃システム、「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備に中国が猛反発。中国では韓国への団体旅行の販売が禁止されたり、韓国製品の不買運動が展開されたりした。中韓の微妙な緊張関係が、今回の件で改めて浮き彫りになったとも言えそうだ。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)