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山本太郎氏VS大阪府警、戎橋「街頭演説」騒動 J-CAST記者が双方の見解を聞いた

   大阪・ミナミの戎橋で街頭演説を行ったれいわ新選組の山本太郎代表(45)に対し、大阪府警の南署が現場で中止要請を行い、その動画がネット上で拡散される騒ぎになっている。

   山本氏は、道交法に基づいていると主張するが、戎橋は人出の多い場所だけに議論になっている。中止要請について、南署の副署長と山本氏側に話を聞いた。

  • 山本太郎氏
    山本太郎氏
  • 山本太郎氏

「通行への著しい妨げにはなっておらず、政治活動や表現の自由だ」

   「街頭演説の方をいったん中止して下さい」。2020年10月12日の午前中に戎橋の欄干そばで演説を行った山本氏に対し、南署の警察官がスピーカーでこう呼びかける。しかし、山本氏は、「いったん中止するその根拠を教えて下さい」と食い下がり、壇上から降りようとしなかった。

   この日は、大阪都構想への賛否を問う住民投票が告示され、れいわのタスキをかけた山本氏は、お立ち台とモニター2台を設置して、都構想に反対する立場からマイクを握って通行人らに訴えた。

   ところが、南署の警察官数人がそこに駆け付け、れいわのスタッフらに演説の中止要請を行った。これに対し、山本氏は、「法的根拠は何ですか?」とマイクで呼びかけ、警察が何も回答しないと主張して、「妨害ですね」などと訴えた。山本氏の支持者らから警察にヤジも飛んで、現場は騒然とした雰囲気になった。平日の月曜日ともあって、人通りはそれほどではなかったが、通行人が驚いた様子で見ていた。

   警察官は、「止めて下さい」と何度も呼びかけ、スタッフらと路上で話し合いを続けた。山本氏は、通行への著しい妨げにはなっておらず、道交法第77条に基づいているとし、政治活動や表現の自由だとマイクを使って主張した。

   山本氏と警察とのやり取りは、10分弱続き、山本氏はその後、警察とスタッフらが話し合いを続ける中でも、都構想反対について話し始めた。

街頭演説の許可を申請も、警察は、地元の要望があると受け付けず

   しかし、山本氏は、街頭演説は中止したと述べ、「独り言で言っているのと、たまたまマイクが拾っている」と説明した。都構想反対についてマイクで話すことについて、「街頭演説ではございません」と強調し、持論をぶっていた。

   スポーツ紙などの何社かは、山本氏の演説を取材しており、トラブル時の動画も投稿された。れいわ新選組などが配信した動画なども含め、ツイッターなどでこれらの動画が拡散しており、ネット上で様々な意見が寄せられている。

   山本氏の支持者らを中心に、警察への非難も相次いでおり、「そのうち言論の自由も奪われていきそうで怖い」「この国のデモクラシーはどないなったんや」「国家権力の妨害に負けないで」などと書き込まれている。

   一方で、山本氏への疑問や批判も多く、「無許可でやるのはダメでしょ」「ルールを守らずに主張しても、多くの人に賛同は得られない」といった声が出ている。山本氏がパフォーマンスのためわざわざやったのでは、とのうがった見方さえあった。

   南署にJ-CASTニュースが10月13日に取材して聞いたところによると、山本氏側は、代理人が9日に同署を訪れて、街頭演説の許可を申請しようとした。しかし、道路管理者や地元の人たちから、人通りが多くて危ないため戎橋の使用許可を出さないでほしいと要望があることから、申請書を引き取ってもらった。演説の場所を変えてほしいとも要請し、代理人も納得して帰ったという。

   ところが、12日は、周辺の警戒中だった署員が、午前10時過ぎに山本氏が演説しているのをたまたま見つけ、通報を受けて他の署員らが駆け付けた。

   そのときの状況について、同署の副署長は、取材にこう話す。

中止要請の根拠も道交法77条で、「人が集まると危ない」

「警告している途中で、山本さんは、演説を中断しました。しかし、5~10分ぐらいやり取りした後、山本さんは、演説を再開しました。山本さんは、注意を聞かずに、演説を最後までやっており、中止したという認識はないです」

   山本氏は、当初の予定通りこの日の正午ごろに演説を終え、設置したモニターなどを片付け、撤収して帰ったのは、13時ごろだったとしている。

   演説の中止要請をする法的根拠としては、道交法第77条第1項の4を挙げる。道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為は、警察から危険防止策などを行う条件付きの許可を得ないといけないと定めたものだ。また、道路に人が集まるような方法で演説などを行うときは警察の許可が必要と定めた大阪府道路交通規則第15条の4にも当てはまるとした。

   山本氏が政治活動への妨害だと主張していることについては、次のように言う。

「許可なしで演説を始めたら、警告するしかありません。選挙のときなら公選法上いいとされていますが、人通りが多いので過去に演説した人はほとんどいないと思います。人が集まると、押されて川に落ちたり、中には飛び込んだりする人も出る恐れがあります」

   道交法違反などで捜査するかについては、こう話した。

「国会に議席もある政党の代表ですので、慎重に対処したいと思っています。話が大きくなったため、府警本部も交えて、これから検討していく考えです」

「強行に中止を求める行為は、不当な公権力の行使」

   代理人が納得して警察から帰ったかどうかや南署が挙げた道交法などの根拠について、山本氏の秘書は10月13日、取材にこうコメントした。

「納得して帰った、というのは事実とは異なります。南署からの要望である街宣車は使わない、ということをこちらは受け入れ、セッティングに時間の掛かる音響機材直置きでの準備まで行なっております。政治活動の自由は最高法規である憲法でも認められれているのはご存知の通りで、基本的に公道において必ず許可が必要になるものではありません。道路交通法第77条第1項では、許可が必要となる行為が定められ、第4号においては『一般交通に著しい影響を及ぼす』行為等について許可を求めておりますが、私たちは、ご指摘の当該街宣については、一般交通に著しい影響を及ぼす行為には当たらないと考えております。私たちは、街宣にあたっては日頃より万全の備えと対応を行っており、当日の状況においても『一般交通に著しい影響を及ぼす』ものではないことはあきらかです。なお、大阪府道路交通規則は、道路交通法第77条第1項の規定に基づく手続きを定めたものであり、当該街宣が同法第77条第1項第4号の許可対象行為とならない以上、その適用はされないものと考えています。私たちが行なっているのは、最高法規と道交法に従っての街宣活動であり、南署による強行に中止を求める行為は、不当な公権力の行使にあたります。現場でも『中止を求める法的根拠』を求め続けましたが、南署は、一切答えていません。当然答えられるはずもありません。それが全てです。何かしらに忖度し不当な圧力を行使したもの、以外に言いようがありません」

   人が集まれば川に人が落ちるなどの危険があるかなどについては、こう言う。

「最も人が集まる、というのは、インバウンド景気に沸く状況があった時が最後ではないかと考えます。戎橋において混雑により川に人が落ちる、というのは阪神タイガース優勝くらいの勢いで人が溢れた場合に起こり得ることであり、外需頼みのインバウンド景気が蒸発した現在においては考えられない事態で、あまりにも現状を認識していない所見と言えます。景気が良かった頃の大阪が現在、衰退し、それを象徴する場所として選ばせていただいたのが戎橋です。私たちが街宣を行った平日午前10時頃の戎橋の人通りは、悲しいくらいに閑散としておりご指摘は全く正しくない、ことは言うまでもありません。加えて、私たちは当日の街宣については一般向けには一切、告知を行なっておりませんので、混雑する理由もありませんし、実際、そのような状況にもなっていません」

(J-CASTニュース編集部 野口博之)