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ベガルタ仙台「報道までDV非公表」のなぜ 「クラファンとの関係」疑うコメンテーターも

   J1クラブ、ベガルタ仙台が大揺れだ。所属していたMF道渕諒平(26)が交際女性にDV(家庭内暴力)を繰り返し、逮捕されたと報じられた問題は、それまでの経営難と相まってクラブの「解体論」まで指摘される事態になった。

   仙台は問題発覚の2020年10月20日に会見を開いて、事の経緯を説明したが、なおも不可解な点は残った。そもそもなぜ問題を非公表としてきたか、なぜ報道直後に公表に至ったか。また、道渕の逮捕とDV行為をどこまでクラブが把握していたか、という点も判然としない。

  • ベガルタ仙台はクラウドファンディングで支援を募っている(クラブ公式サイトより)
    ベガルタ仙台はクラウドファンディングで支援を募っている(クラブ公式サイトより)
  • ベガルタ仙台はクラウドファンディングで支援を募っている(クラブ公式サイトより)

「逮捕状が執行」「逮捕の事実は確認していない」

   数々のDVと傷害罪容疑での「逮捕」が2020年10月20日、週刊誌「FLASH」に報じられた道渕については、同日午前に仙台が突然の契約解除を発表。「当クラブが認知していなかった事実など、クラブの秩序、風紀を著しく乱す内容が含まれていた」ためだとしたが、その内容が判然としなかった。発表ではクラブが把握している事の詳細も説明したが、「逮捕」に関する言及はなかった。道渕が「女性とのトラブル」を起こしたとして、その経緯を書いただけだ。

   クラブが「トラブル」を認識したのは8月14日。顧問弁護士から「当人同士で解決することが望ましい」との助言を受け、道渕も代理人弁護士を立てて話し合い、最終的に双方合意の上で解決したとクラブが報告を受けたのは9月5日だった。これと時期を同じくする8月23日~9月13日の5試合で道渕はベンチ外だったが、9月20日の試合で復帰すると10月18日の試合まで7戦連続で出場している。クラブは二度と同様の行為をしないとの誓約書を書かせ、「重い処分」を科した上で活動継続させたが、この処分の内容は明らかになっていない。

   10月20日午後には仙台の菊池秀逸社長、渡辺雅昭取締役、丹治祥庸・強化育成本部長が会見。発表で記載のなかった事実として、8月18日から道渕を自宅待機させ、Jリーグにも事案を報告していたという。9月5日には「示談」が成立したと道渕の代理人弁護士から報告を受けた。

   会見の説明によると、9月7日には道渕に「逮捕状が執行」されたが、すぐに「釈放」され、「微罪処分」だったと同弁護士から聞いたという。だが、逮捕についてクラブが警察に聞いても答えを得られなかったとして、「逮捕の事実は確認していない」とも話しており、ちぐはぐさが残る。さらに、この曖昧な状態で道渕は翌9月8日には練習に復帰している。

非公表から公表に一転

   仙台がここまで道渕の事件を非公表としてきたのは、「両名のプライバシーに関わり、また双方の要望がある」(前出・発表文)ためだった。そうした事情があり、「逮捕状の執行」を把握しながら道渕の復帰もさせていたのが、「写真とLINE」が報道されて即日契約解除、公表に一転したのは、どのような判断だったのか。

   「認知していなかった事実」はFLASHに掲載された、道渕がビデオ通話越しに包丁を持ち出した写真や、返信の遅れを問い詰めるLINEの文言などだったと会見で明かされた。DV行為そのものだが、こうした言動を把握していなかったのであれば、道渕の問題をどこまで知っていたか、「逮捕状」が出ていることを知った時点で原因を調査しなかったのか、何をもって「重い処分」を科したか判然としない。会見では「重い処分」の内容も明かされなかった。

   道渕は17年7月のJ2・ヴァンフォーレ甲府(当時J1)時代も、女性への暴力により暴行罪容疑で逮捕されていた(その後不起訴処分)。甲府が同シーズンの出場停止、減俸などを発表した17年9月1日付のリリースで、道渕自身は「今後は全てのご批判を真摯に受け止め、二度と同様の過ちを犯さないことをお誓い致します」とのコメントを寄せている。にもかかわらず、わずか3年で「同様の過ち」を犯したことは、今回の「誓約書」の信憑性がないに等しいことはもとより、仙台の所属選手に対する管理監督責任の問題にもなってくる。

   仙台は問題を把握した後の9月26日、クラウドファンディング(CF)や口座振込などによる支援を募り始めている。新型コロナウイルス禍で、見込み通りであれば今期末3億800万円の債務超過になるという経営難が理由だが、選手の不祥事を隠したままの形でサポーターの寄付を呼びかけたクラブの判断は、かえって不信感を招いたようだ。

CFめぐり...「正直に言ったほうがよりお金は集まります」

   Jリーグの広報担当は10月20日夜、J-CASTニュースの取材に「ベガルタ仙台からは、8月に『女性とのトラブル』があるということ、9月には示談が成立したということを報告されていた」とし、そこで解決済みという認識だったと話した。「個人のプライベートな場での問題でもあり、当時クラブへの処分は検討しなかった。示談し、被害届が取り下げられているので、我々が公表すると相手方の問題もある」とした。

   道渕や仙台への処分に関して同担当者は、「Jリーグから個人への罰則というのはない。個人に対して処分などをするのは、管理監督しているクラブになる。Jリーグができるのは、クラブに対して管理監督責任を問うこと」としたうえで、今後の仙台への対応については「即時に決められない。もし対応するのであれば、裁定委員会の諮問を受けて検討し、最終的にチェアマンが決定することになる」と話した。

   発覚から一夜明けた10月21日、クラブの対応をめぐってはワイドショーでも散々だ。「ひるおび」(TBS系)では落語家・立川志らくさん、国際弁護士の八代英輝さんが苦言を呈した。

「2度目の(逮捕の)時点でもう解雇ですよ。(CFなどで)お金を集めるためにもしかしたら隠していたかもしれないが、正直に言ったほうがよりお金は集まります。スター選手がこんなことやってしまいました、このチームはダメになるかもしれない、皆さん助けてください、今こそ助けを頂かないとって。週刊誌に出るまで黙っていて、こんなチーム誰が助けるかってなります」(志らくさん)
「組織の一部の人間がそうした行為を犯した時にどういう対応をするかというガバナンスの問題、危機管理の問題だと思います。こうした問題に隠蔽的、後ろ向きであることがクラブの体質のように見られると、多くの女性ファン、サポーターから背を向けられてしまうことになると思います。女性の保護に後ろ向きだと。クラブ全体にマイナスだし、隠蔽し続けていい時代ではないと認識しないといけない」(八代さん)

「内部を全部改革しないと」

   21日の「スッキリ」(日本テレビ系)では、お笑いタレントでサッカーファンでもある加藤浩次さんが「たぶん、クラブ側は道渕選手の話だけ聞いていたので、示談が成立したし釈放されたから今後気を付けますということでOKにしていたけど、女性側の意見を聴取していなかったというクラブ側の落ち度はちょっとあるかなと僕は思う」と指摘した。

   同日の「バイキングMORE」(フジテレビ系)でも、カンニング竹山さんが「クラブチームとして0点のチームです。試合に出しているのがダメ、ファンへの裏切り。内部を全部改革しないと、こんなチームに誰がサポーターとしてついていきます?」と批判した。

   ツイッター上では21日、「ベガルタのガバナンスの無い対応は最悪。リーグ下から3位の成績もうなずける。一度クラブを解体し、出直しすべき。球団社長、監督の辞任は当然」「一旦、クラブ解散してゼロから始めるのが良いと思う」「フロント陣のグダグダ対応 ちゃんと調査もせずに適当な対応したとしか見えんよな」「選手に迷惑かけないで最善の方法をとってほしいな 抜本的な変化は必要かと」などと厳しい声があがる。

   J-CASTニュースは21日、ベガルタ仙台に(1)「双方の要望」で公表してこなかったのに、なぜ報道直後に契約解除・公表に至ったのか(2)報道された写真・LINEが契約解除の理由になったのはなぜなのか(3)CFは継続するか、返金対応するか――などについて改めて取材を試みたが、広報担当は「昨日のプレスリリースと記者会見の内容が回答の全てとなります。大変申し訳ありませんが、いただいた項目については回答を控えさせていただきます」とのことだった。