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北朝鮮「コロナ疑い事例」が急増 依然として「感染者ゼロ」も...マスクなし軍事パレードとの関係は?

   新型コロナウイルスの感染者が1人も出ていないとしている北朝鮮で、これまでに行われたPCR検査の件数が1万件を超えたことが、このほど公表された世界保健機関(WHO)の2020年10月30日付けの週次報告書で明らかになった。

   この報告書でも、PCR検査で陽性反応が出た人や感染者の数は、引き続きゼロだとされている。ただ、発熱などの症状がある「疑い事例」は急増している。10月10日には、朝鮮労働党創建75周年にともなう大規模な軍事パレードが行われ、兵士らはマスクをせずに行進。この前後に隔離された人も増えている。

  • 10月10日には、朝鮮労働党創建75周年にともなう大規模な軍事パレードが行われた。兵士らはマスクをせずに行進した(写真は労働新聞から)
    10月10日には、朝鮮労働党創建75周年にともなう大規模な軍事パレードが行われた。兵士らはマスクをせずに行進した(写真は労働新聞から)
  • 10月10日には、朝鮮労働党創建75周年にともなう大規模な軍事パレードが行われた。兵士らはマスクをせずに行進した(写真は労働新聞から)

隔離人数もパレードの前後に増える

   10月2日付けの報告書によると、「疑い事例」の人数は9月24日時点で累計1906人だった。その後の報告書では集計期間の表記が変更され、累計の「疑い事例」の人数は10月1~8日に3770人、10月8~15日に4522人、10月15~22日に5368人と推移。この1か月で2.8倍ほどに増えたことになる。

   朝鮮労働党の金正恩委員長は、10月10日の軍事パレードでの演説で、

「1人の悪性ウイルス被害者もなく、みなが健康であってくれて本当にありがとうございます」

などと新型コロナ感染者がいないことを強調していた。ただ、朝鮮中央テレビなどが伝えた映像を見る限りでは、パレードに参加した兵士や観客はマスクをしておらず、「密」な状態。感染対策とはほど遠い国家行事だ。事前リハーサルを含めると、かなりの長時間にわたって過酷な環境に置かれた人が多かったとみられ、発熱などの症状を訴えて「疑い事例」にカウントされた人の数が増えた可能性もある。

   隔離された人の数は、9月17~24日が176人、10月1~8日が294人、10月8~15日が284人、10月15~22日が161人と推移。パレード前後に増加している。隔離が終了した人は10月22日時点で累計3万2011人に達している。

検査キットが届いて検査件数も増える

   この1か月で検査の件数も増えた。10月2日付けの報告書によると、累計3538件の検査が行われ、それから10日が経過した9月24日の時点で陽性反応が出たのはゼロだった。その後、累計の検査件数は、検査から10日が経過した10月8日時点で7266件、10月15日が8770件、10月22日が1万462件と推移。

   10月9日付けの報告書には検査数に関する記載がない代わりに、

「医薬品や診断キットなど新型コロナ関連物資が中国・大連港に到着。大連から(北朝鮮の)南浦への輸送許可申請書を保健部長官に送付」

という記載があった。検査キットが大量に届いたことで検査件数が伸びたとみられる。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)