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井上尚弥が目指す5階級制覇 アフマダリエフ、ナバレッテ...「ライバル」の実力は?

   ボクシングのWBA、IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(大橋)が大きな夢に近付こうとしている。主要4団体の王座統一へ向けてWBO、WBC王座の獲得を目指している。2021年中にも史上6人目の4団体統一王者が誕生しそうな勢いだが、井上がその先に見据えているのがスーパーバンタム級を制しての4階級制覇だ。大橋秀行会長はフェザー級までの5階級制覇に大きな期待を寄せており、井上にとっても大きな目標になるだろう。

  • 井上尚弥
    井上尚弥
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スーパーバンタム級の現状

   井上の当面のターゲットとなるのが、WBO王者ジョンリル・カシメロ(フィリピン)とWBC王者ノルディーヌ・ウバーリ(フランス)だ。井上が保持するIBF王座の指名試合の兼ね合いなどで統一戦実現の時期は不透明だが、実力的みればカシメロ、ウバーリが格下であることは確かだろう。これまでの実績や直近のパフォーマンスを見る限り、井上がカシメロ、ウバーリに負ける姿は想像しづらい。

   この先、井上がマッチメイクの関係で4団体の王座を統一出来なくとも、世界のバンタム級を制したといっていいだろう。トーナメント方式で争われるワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)に出場し、IBF王者エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)を倒し、さらに決勝戦では世界5階級制覇のレジェンド、ノニト・ドネア(フィリピン)を撃破。これだけでもバンタム級最強を証明するのに十分するすぎる実績だ。

   近い将来、井上が目指すスーパーバンタム級の現状はどのようになっているだろうか。主要4団体の王者をみてみると、ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)がWBAスーパーとIBFの2つのベルトを保持している。WBCはルイス・ネリ(メキシコ)が正規王座に就いており、足を負傷しているレイ・バルガス(メキシコ)が休養王者に認定されている。そしてWBOはアンジェロ・レオ(米国)が王座に君臨している。

スーパーバンタム級3王者は全て無敗

   これら正規王者の他にWBAとIBFにそれぞれ王者が存在する。スーパー王者を擁するWBAは、ブランドン・フィゲロア(米国)がレギュラー王座に就いており、IBFは岩佐亮佑(セレス)を暫定王者として認定している。WBAに関しては、スーパーとレギュラーの2王者が並行して防衛戦を行っていくとみられ、IBFはアフマダリエフと岩佐による王座統一戦が見込まれる。

   スーパーバンタム級のスーパー、正規王者3人の共通点はプロデビュー以来無敗で、27歳の井上よりも年下であること。プロわずか8戦目でWBAとIBFの王座を手にした26歳のアフマダリエフは8勝(6KO)。今年(20年)8月に王座を獲得したばかりのWBO王者レオも同じく26歳で戦績は20勝(9KO)だ。バンタム級に続いて2階級制覇を達成したネリは今年12月に26歳となり、戦績は31勝(24KO)と無敗をキープしている。

   この3王者のなかで井上の「ライバル」となりうるのはどの王者か。プロキャリアこそ8戦と場数を踏んでいないものの、豊富なアマチュアキャリアを持つアフマダリエフは怖い存在となりそうだ。2016年リオデジャネイロ五輪バンタム級の銅メダリストでもあるアフマダリエフは、18年3月にプロデビューし、20年1月にWBA、IBF王者ダニエル・ローマン(米国)を判定で破り2つの王座を獲得した。

WBC王者ネリ、WBO王者レオでは...

   アフマダリエフは屈強な上半身を持つサウスポーで、ローマン戦では強打に加えてタフネスも証明した。軽量級のトップアマとしては珍しく荒々しい好戦的なスタイルで、ローマン戦では左右フックを大振りするシーンが何度もみられた。防御に関しては甘さが目立ち、井上が付け入るスキは十分にあるだろう。ただプロ8戦目にして2本のベルトを獲得したポテンシャルは決して侮れず、井上の将来的な「ライバル」となりうる存在だろう。

   WBC王者ネリとWBO王者レオは井上の「ライバル」王者としては実績に欠ける。スーパーバンタム級での実績がないまま王座決定戦でベルトを手にしたネリは、タイトル戦でパワー不足を露呈するなどスーパーバンタム級に対応する体を作るのに時間がかかりそうだ。レオもまた王座決定戦によって王座を獲得した王者のため、その実力は未知数で今後、世界のトップクラスとの対戦で実力を見極める必要があるだろう。

   井上との対戦を熱望しながらフェザー級に階級を上げたエマヌエル・ナバレッテ(メキシコ)も面白い存在だ。スーパーバンタム級時代に井上戦をアピールしていたが、減量苦のため階級を1つ上げてフェザー級でWBO王座を獲得。32勝のうち27KOをマークする強打者で、年齢も25歳と若い。井上がフェザー級に上げるまでフェザー級に踏みとどまっていれば、間違いなく井上の「ライバル」となるだろう。