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桜を見る会は「検察の試金石」 前夜祭で安倍氏側「差額補填」報道、識者の見方は...

   安倍晋三前首相の後援会が主催した「桜を見る会」前夜祭を巡り、ホテルに支払われた総額と会費の差額を前首相側が補填した可能性があると各メディアが報じ、波紋が広がっている。

   安倍氏は、すべて参加者の自己負担と国会答弁していたが、報道通りなら事実と違うことになる。これが刑事責任を問われるかなどについて、識者の見方を聞いた。

  • 安倍晋三前首相(2020年8月撮影)
    安倍晋三前首相(2020年8月撮影)
  • 安倍晋三前首相(2020年8月撮影)

安倍前首相は、すべて参加者の自己負担と答弁していたが...

   年内の解散・総選挙の可能性がほぼなくなり、菅義偉政権が軌道に乗り始めた時期になって、東京地検特捜部の動きがメディアにキャッチされた。

   桜を見る会問題で、特捜部が後援会の代表をしている公設第1秘書らから任意で事情聴取をしていたと2020年11月23日に報じられた。

   この問題では、参加者1人5000円の会費との差額を前首相側が補填していた疑いがあるとして、弁護士らが5月に公選法違反(寄付行為)と政治資金規正法違反(不記載)の罪で前首相らを告発していた。

   NHKなどの報道によると、前夜祭では、2015年からの5年間で計約800万円の差額を前首相側が補填していた可能性があるといい、多いときは250万円に上ったという。そして、そのことを示す安倍氏代表の資金管理団体あての領収書やホテルが作成した明細書も見つかったとしている。毎日新聞は、安倍氏の事情聴取も特捜部が検討していると報じている。

   安倍氏はこれまで、前夜祭はすべて参加者の自己負担で、後援会の収支はなく政治資金収支報告書に記載する必要はないと国会で説明し、明細書などについても「事務所に確認したがホテルからの発行はなかった」としていた。こうした経緯を元に、野党からは、虚偽答弁に当たるのではないかとして、安倍氏の参考人招致を求める動きが出ている。

「証人として国会で答弁していないので、偽証罪には問えない」

   安倍氏の事務所は11月23日、特捜部の動きを認めて、「捜査に協力し、真摯に対応させていただいている」などとしたコメントをマスコミに出した。安倍氏も24日、国会内で記者団の取材に応じ、「事務所としては全面的に協力をしていくということだ」などと説明した。

   ニュースサイトのコメント欄やツイッター上などでは、特捜部の動きについて、告発を受けてのパフォーマンスに過ぎないのか、それとも疑惑が固まって本気で立件しようとしているのか関心が高まっている。

   この点について、元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は24日、J-CASTニュースの取材に次のような見方を示した。

「森友学園問題では、国税トップに何のお咎めもなく、特捜部は政権政党に忖度していたと言われても仕方がないほどでした。そのスタンスが変わらないなら、今回も秘書らが不起訴になる可能性があると思います。検察の体制が変わって、罰すべきものはするとのスタンスになったのなら、立件するでしょう。今回は、政権政党と距離を置くのかを計る試金石の位置づけになると思います」

   ホテルに領収書の控えや明細書があったのではないかとし、秘書や会計責任者が寄付行為などの罪で略式起訴され、50万円ぐらいの罰金になる可能性があるとした。

   ツイッター上では、安倍氏の刑事責任を求めるハッシュタグの投稿が広がっているが、若狭氏は、「安倍さんまでの立件はないと思います」との見方を示した。捜査が長期に及ぶと解散・総選挙の時期に重なって立件しにくくなるとして、年内に刑事処分に踏み切るのではないかとみている。

   安倍氏の国会答弁が事実と異なった場合については、こう話した。

「政治責任の問題にはなると思いますが、証人として国会で答弁していませんので、偽証罪には問えません。また、証人喚問ではなく、参考人招致では偽証罪は成り立たないです。いずれにせよ、刑事処分については、ある程度の消化不良感は残ると思います」

(J-CASTニュース編集部 野口博之)