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コロナワクチン「特需」で株高期待 投資家が冷凍・冷蔵企業に熱視線

   新型コロナウイルスのワクチン接種が、英国で2020年12月8日(現地時間)にはじまった。

   ワクチンは米ファイザーとドイツのビオンテックの共同開発によるもの。8日の接種で英国民保健サービス(NHS)の従業員2人にアレルギー反応がみられたものの、英医薬品・医療製品規制庁(MHRA)が注意を呼びかけながら、高齢者などから接種を進めている。

   コロナ禍の終息に期待が高まる株式市場では、米ニューヨーク株式市場をはじめ、日本でも日経平均株価が急騰する事態となり、2万7000円台を目前にしている。そうしたなか、株式市場では医薬品メーカーに加えて、投資家がワクチンを輸送するために必要な冷却技術に着目。冷凍・冷蔵メーカーに熱い視線を注いでいる。

  • コロナワクチン接種で超低温冷却技術に注目(国立感染症研究所提供)
    コロナワクチン接種で超低温冷却技術に注目(国立感染症研究所提供)
  • コロナワクチン接種で超低温冷却技術に注目(国立感染症研究所提供)

ワクチン、マイナス70度の超低温で輸送

   米ファイザーと独ビオンテックが共同開発した新型コロナウイルスのワクチンは、「メッセンジャーRNA」と呼ばれる遺伝子技術を用いたもので、マイナス70度程度の超低温で保管する必要があるとされる。さらに、解凍してからは5日以内に投与しなければ、ワクチンの効果が消失してしまうという。

   英BBCなどの報道によると、ワクチン接種がはじまった英国では、このワクチンを4000万回分、確保(初回分は80万回分)。ベルギーにあるファイザーの工場で生産されたワクチンは、1000~5000回分を専用の冷凍ボックスに入れて飛行機とトラックで運んだ。マイナス70度で10日間まで保管でき、英国内の配送センターで2~8度の冷蔵庫に移してからは5日以内に使用するという。

   全世界にワクチンを届けるためには、こうした超低温で保管して輸送する体制、「コールドチェーン(低温物流)」を急ぎ構築する必要がある。投資家の目は、おのずと高い冷却技術を有する企業や医療物流を得意とする企業、航空貨物などに向かっているようだ。

   こうした銘柄(企業)を物色する動きは、ファイザーが米大統領選後に治験でワクチンの有効性を公表したのをきっかけに、すでにはじまっている。

   食品・業務用冷凍冷蔵庫の日本国内大手で薬用保冷庫を手がける、東証1部に上場するフクシマガリレイは、2020年11月11日に年初来高値の4830円を記録。3月17日の年初来安値(2,802円)から約7割上昇した。12月11日終値では4590円を付けていた。また、業務用厨房機器大手で、製氷機で約3割の世界シェアを有するホシザキの株価も、11月27日に1万870円の年初来高値を達成。4月6日の年初来安値(7130円)の1.5倍伸びた。12月の終値は9910円だった。

東証2部上場のツインバード株、3月から6倍

   もともと調理家電や照明、掃除機などを企画、販売する、東証2部に上場するツインバード工業。超低温の保冷庫を手がけており、10月8日に発表した2021年2月期の業績予想では「国内外のネットワークを通じてグローバル規模での最新技術に基づく『コールドチェーン』の構築や医療サービスの拡充に参画。当社のスターリング冷凍技術が医療分野でスタンダードの⼀つとなるよう取り組んでいく」ことを表明。10月23日には、米国の取引先から前期から2倍にあたる1000台の保冷庫の新規受注があったことを明かしていた。

   それもあってか、早期のワクチン接種が現実味を帯びてくると株価が急騰。11月10日に1000円台に乗せると、翌11日終値はストップ高(300円高)となる1318円。買いが相次ぎ右肩上がりを続けると、12月11日の終値は前日比ストップ高(400円高)の2053円で、3月13日に付けた335円の約6倍に伸びている。

   薬用冷蔵やフリーズ超低温ケースなどを扱う大和冷機工業は12月11日終値で1144円(年初来安値746円、3月23日)、中野冷機は6310円(同5680円、4月16日)なども上昇基調にある。

   ワクチン接種を進めるために必要なのは、超低温輸送にかかる技術だけではない。病院や薬局、診療所などの施設でも、そのほとんどは「マイナス70度」を保つことができる特殊な冷凍庫を持っていない。ワクチン専用の冷凍庫の開発が求められている。