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「嵐に特別栄誉賞」レコード大賞がジャニーズ忖度? 振り返ると見えてくる「関係正常化」の可能性

   アイドルグループ「嵐」が「第62回 日本レコード大賞」(日本作曲家協会などが主催)の「特別栄誉賞」を受賞したことが、2020年12月17日に発表された。

   「特別栄誉賞」は長年にわたる活躍で広く大衆の支持を得て、音楽文化の発展に多大な貢献をもたらした人物に贈られる賞として2020年に新設。嵐は同賞を受賞するだけでなく、30日に行われる授賞式(TBS系で放送)に出席する。

   嵐がレコード大賞の賞を受賞、及び、授賞式に登場するのはいずれも今回が初のことであり、このことに対し、大きな注目が集まっているが、その一方で、一部の視聴者から「忖度して新しい賞まで用意してジャニーズ事務所をもてなす」といった声が上がっているのだ。

  • 視聴者の間で渦巻く疑念は、考えすぎ!?(写真はジャニーズ事務所社屋)
    視聴者の間で渦巻く疑念は、考えすぎ!?(写真はジャニーズ事務所社屋)
  • 視聴者の間で渦巻く疑念は、考えすぎ!?(写真はジャニーズ事務所社屋)

前年にはジャニー喜多川氏に「特別音楽文化賞」

   上記のような声が出てしまうのは、昨年にも、やはり、その年に新設された賞がジャニーズ事務所関係者に贈られているからだろう。その受賞者は、長年にわたって事務所の代表者を務めていた故・ジャニー喜多川氏だ。同年7月9日に死去した喜多川氏に対して贈られたのは「特別音楽文化賞」なる賞で、この年に新設された。受賞者本人が受賞時点で死去しているため、授賞式にはジャニーズ事務所所属の近藤真彦さんが代理で出席したことは記憶に新しい。

   「特別音楽文化賞」は2020年に関しては12月17日時点で発表されておらず、このことから、同賞は喜多川氏のために設立された可能性がある。そのレコード大賞において2020年も賞が新設され、それがやはりジャニーズ事務所関係者に贈られるとなれば、疑り深い視聴者であれば、前述のような「ジャニーズへの忖度だ!」という思いを抱いてしまうかもしれない。

「沈黙の20年」を破ったマッチ

   ただ、ジャニーズ事務所とレコード大賞の「因縁」を紐解いていくと、上記のような思いを抱いてしまうのも、ある程度は仕方がないとも言える歴史があることに気付く。近藤真彦さんが「愚か者」で大賞に選ばれた1987年から3年後となる1990年以降、ジャニーズ所属の芸能人は事務所の方針により続々と賞レースから撤退。その中には当然レコード大賞も含まれており、この年以降、ジャニーズ所属の芸能人がレコード大賞の賞を受賞することはなくなってしまったのだ。

   この「撤退劇」により、芸能界の中からはレコード大賞の権威が下がったと指摘する声が上がったほか、視聴者からは「受賞するべき人が受賞していない」とする批判の声が上がるようになってしまったとも言われている。中でもネット上でいまだに指摘が上がるのが2003年で、視聴者の間では同年にダブルミリオンを達成した、SMAPの「世界に一つだけの花」を推す声が多かった中、ジャニーズのレコード大賞不参加を嘆く視聴者が続出したとされているのだ(実際に大賞を受賞したのは浜崎あゆみさんの「No way to say」)。

   ただ、そのような「慣例」は、2010年に破られることとなる。この年、レコード大賞は「最優秀歌唱賞」に近藤真彦さんを選出。このため、近藤さんは授賞式に出席し、「心 ざんばら」「愚か者」「ギンギラギンにさりげなく」を歌い上げたのだった。近藤さんがレコード大賞の授賞式に出席するのは1988年以来22年ぶりのことであり、その話題は年末の日本を席巻したのだった。

   それから9年後となる2019年には、前述の通り、喜多川氏の「特別音楽文化賞」受賞により近藤さんが再び授賞式に出席したわけだが、その翌年である2020年にも、やはり、ジャニーズ所属の「嵐」が「特別栄誉賞」を受賞。かつては不参加が当たり前だったレコード大賞に2年連続でジャニーズ関係者が選出されるという「異例」の事態を目の当たりにした視聴者からは、前述のような忖度を疑う声が上がっているのは事実だが、その実態は、「忖度」というよりは「関係正常化」と考えたほうが良いのではないだろうか。

(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)